現有戦力から読み解く「2026ドラフトで獲るべき選手」〜広島編
今年もドラフト会議の季節がやってきた。各球団ともシーズンを振り返りながら、来季に向けた補強ポイントを洗い出し、アマチュア選手の最終的な絞り込みに入っていることだろう。10月22日に迫る「運命の日」を前に、本当に獲得すべき選手は誰なのか──。『ゾンビたばこ』をめぐる一連の問題で名前が挙がった小園海斗、矢野雅哉、田村俊介、前川誠太の4選手と来季の契約を結ばないと発表し、主力のFA流出も取り沙汰されるなど、問題山積みの広島。チーム改革は急務だ。
【3年続く大学生重視の補強】10月6日終了時点(以下同)、61勝77敗4分でリーグ4位の広島。チーム打率.224、430
得点はいずれも12球団ワーストと、今季も得点力不足に苦しんだ。さらに、打率.251、15本塁打、74打点の主軸・坂倉将吾が国内FA権を取得。今オフの動向に注目が集まる。
こういうチームは本当に難しい。ハタから見ているだけでも、これだけ先の展望が見えにくいのだから、当事者たちはさぞ頭を抱えていることだろう。大改革が必要なのは、ファンが一番よくわかっている。
今回の一連の問題があったから、大改革が必要なのではない。チームが世代交代の時期を迎えたからこその、当然の成り行きとしての改革であり、じつは3年ほど前から音もなく進行しているのだ。
近年のドラフトを振り返ると、広島は明らかに大学生を中心に据え、チーム改革を進めてきた。
ここ3年間で支配下指名した大学生は14人(2023年4人、2024年4人、2025年6人)。そのうち投手では?太一(2023年2位)、岡本駿(2024年3位)、齊藤汰直(2025年2位)、工藤泰己(同4位)、赤木晴哉(同5位)、野手では佐々木泰(2024年1位)、勝田成(2025年3位)が一軍戦力に加わった。故障から復帰した2025年1位の平川蓮も一軍で経験を積み、外野の一角を虎視眈々と狙っている。
今年も、その流れは基本的に変わらないのではないか。育成に時間を要する高校生よりも、比較的早い段階で一軍戦力となる可能性の高い大学生、社会人を重視する。近年の指名傾向からは、そんな球団の狙いが透けて見える。
アマチュアNo. 1捕手の呼び声高い青山学院大・渡部海photo by Kyodo News
【捕手と主軸候補を同時補強】では、続投が決まった新井貴浩監督5年目の来季に向け、誰を1位指名するのか。報道を見ると、「捕手一択」とも受け取れるニュアンスが漂う。ただ、渡部海(智弁和歌山→青山学院大/捕手/180センチ・92キロ/右投右打)を獲得すればすべてが解決するほど、広島の「捕手問題」は単純ではない。
広島のチームカラーに合うか否かで考えると、スター街道を歩んできた選手より、泥くさい叩き上げタイプなのではないか、と考えてしまう。
ならば、笹原愛斗(まなと/真颯館→九州共立大→日本新薬/捕手/181センチ・88キロ/右投右打)が適役なのではないか。福岡・真颯館高時代から屈強な体躯と強肩、強打は認められながら、華やかな舞台とは無縁だった。それでも地道に実戦力を磨き、社会人2年目の今夏は都市対抗の大舞台で安定した攻守を披露。少々のことではへこたれない、「頑張れる捕手」だ。九州共立大の大先輩にあたる大瀬良大地や島内颯太郎が、頼もしい兄貴分として「水先案内人」になってくれるだろう。
ただでさえ手薄なクリーンアップにあって、国内FA権を取得した坂倉の流出にも備えなくてはならない。主軸の一角をすぐに肩代わりできる打者を探すなら、今年は柴崎聖人(まさと/岐阜第一→大阪経済大→王子/外野手/173センチ・85キロ/右投左打)を推したい。
昨夏の都市対抗優勝に大きく貢献するなど、社会人2年間で実戦力と長打力に磨きをかけた。今夏の都市対抗では、開幕戦となったJR北海道クラブ戦で3打席連続三振を喫したものの、2回戦の三菱自動車岡崎戦ではバックスクリーン右へライナーで一発。打球速度は時速181キロを計測したという。強肩に加え、盗塁できる足も兼ね備えている。
柴崎が吉田正尚(レッドソックス)タイプなら、中津大和(小松大谷→法政大→日本生命/外野手/180センチ・77キロ/右投左打)は秋山翔吾(広島)タイプか。
ボールを呼び込むタイミングがよく、芯で捉えるバットコントロールも巧み。変化球に崩されても拾ってライナーで弾き返し、甘く入れば柵越えにできる怖さもある。俊足強肩を兼備したリードオフマン候補だ。来季2年目を迎える平川を含め、この3人で外野陣を一新するぐらいの覚悟があってもいい。
【広島再建へ必要な次の一手】国内FAといえば、今季8勝6敗、防御率2.76の床田寛樹もすでに権利を取得している。左腕の補強も行ないたいところだ。
常深颯大(つねみ・そうた/明石商→大阪経済大/投手/179センチ・80キロ/左投左打)は、インステップ気味のフォームから、打者にとって見づらいリリースで140キロ台前半の速球とスライダー、チェンジアップを投げ込む。気迫あふれる「熱投派」でありながら、四球で崩れることが少ないのが大きな魅力だ。柴崎とともに指名できれば、大学の先輩と揃ってプロ入りすることになる。
試合をつくれる確かな投球術とメンタルの強さなら、飯田泰成(春日→関西学院大/投手/180センチ・82キロ/左投左打)だろう。広島が得意としてきた、関西学生球界からの隠れた逸材発掘という意味でも面白い。今年はこの両サウスポーを狙ってみてはいかがだろうか。
内野にも補強ポイントはある。
小園海斗の代役としてルーキーの勝田が奮闘するなど、今季は若手の台頭も見られた。ただ、競争してレギュラーを奪ったわけではない。一軍はもちろん、ファームを含めても、しっかり守れる遊撃手を押さえておきたいところだ。
右打ちなら相羽寛太(静岡→ヤマハ/遊撃手/178センチ・78キロ/右投右打)、山里宝(たから/神戸国際大付→亜細亜大/遊撃手/174センチ・78キロ/右投右打)。
高いフィールディング能力で毎年のようにドラフト候補に挙がる相羽は、社会人6年目。年齢的にも今年のドラフトが大きな勝負になる。侍ジャパン大学日本代表の山里は、遊撃だけでなく二塁でもハイレベルな守備ワークを展開し、走力も魅力だ。
左打ちなら、今津慶介(旭川東→慶應義塾大/二塁手/180センチ・80キロ/右投左打)だ。本職は二塁手だが、スイッチが入った時に見せる走攻守の爆発力には凄みがある。いい意味で「意外性の塊」のような選手で、外向きのエネルギーを存分に発散できるタイプ。沈滞したムードを吹き飛ばす存在にもなれるだろう。
そうそう、忘れるところだった。坂倉にFA移籍の可能性があるのなら、その高校の後輩にも後釜候補がいる。日大三高の田中諒(日大三/捕手/180センチ・95キロ/右投右打)だ。
バックスクリーンを越える驚弾を飛ばしたかと思えば、次の打席では痛烈なピッチャー返し。智辯学園時代の岡本和真(ブルージェイズ)を思わせるようなパフォーマンスを、さらりとやってのける超高校級スラッガーだ。強肩の持ち主でもあり、捕手としてはもちろん、将来的には三塁手として大成する可能性も秘めている。
近年続けてきた「大学生中心」の即戦力路線を貫くのか。それとも、将来の主軸候補となる高校生に大きく舵を切るのか。得点力不足、坂倉や床田のFA、そして世代交代──。いくつもの課題が重なる今だからこそ、今年のドラフトは単なる戦力補充では終わらせたくない。
安倍昌彦●文text by Masahiko Abe
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