【プロ野球】阪神・藤川球児は岡田彰布の野球をどう進化させたのか? 江本孟紀が解き明かす球団史上初のリーグ連覇の舞台裏

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【プロ野球】阪神・藤川球児は岡田彰布の野球をどう進化させたのか? 江本孟紀が解き明かす球団史上初のリーグ連覇の舞台裏

10月8日(木) 17:20

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前監督の岡田彰布氏が築いた強固な土台を、藤川球児監督はいかに進化させたのか。就任2年目の今季、阪神は球団史上初のリーグ連覇を達成した。近本光司の長期離脱、救援陣の柱だった石井大智の不在など、決して順風満帆ではなかったシーズン。それでも勝ち切れた理由はどこにあるのか。江本孟紀氏が藤川監督の采配を徹底分析する。

球団初のリーグ連覇を達成し、胴上げされる阪神・藤川球児監督photo by Kyodo News

球団初のリーグ連覇を達成し、胴上げされる阪神・藤川球児監督photo by Kyodo News





【連覇のカギは不動の上位5人】 ──阪神が2年連続でリーグ優勝を果たしました。

江本 昨年は岡田彰布監督の"遺産"がありましたが、2年目の今年は藤川球児監督の真価が問われるシーズンでしたね。そのなかで近本光司が4月26日の広島戦で左手首付近に死球を受けて骨折し、約2カ月半にわたって戦列を離れました。その間、1番にはドラフト1位ルーキーの立石正広らを試しましたが、近本は復帰後にしっかり巻き返した。9月22日には新人から8年連続となるシーズン100安打を達成しました。

──近本選手の離脱はありましたが、上位打線はほぼ固定されていたということですね。

江本 1番・近本、2番・中野拓夢、3番・森下翔太、4番・佐藤輝明、5番・大山悠輔。この5人が基本線でした。藤川監督は6番以下の打順をいろいろ入れ替えています。捕手も坂本誠志郎だけでなく、伏見寅威や梅野隆太郎を起用したりね。

──岡田監督時代は佐藤輝選手が5番に入り、森下選手は6番を打つこともありました。

江本 藤川監督はそれを3番・森下、4番・佐藤輝、5番・大山という並びに再編し、固定した。昨年から今年にかけての阪神打線をたとえるなら、1〜5番は"プレミアム席"、6〜8番は"自由席"と言えるでしょう。

──10月7日終了時点で、佐藤輝選手が打率.308でリーグ1位、森下選手が.292で3位、中野選手が.288で4位。大山選手も.284で5位につけています。近本選手も規定打席には届いていませんが、打率.307です。

江本 そりゃ強いですよ。12球団を見渡しても、これだけ上位打線が揃っているチームはなかなかありません。それが連覇できた最大の要因です。もう本当に簡単明瞭な話でね、野球ってそういうものなんです。逆に言えば、ほかのチームはクリーンアップがなかなか揃わない。だから今季の阪神は、この"自由席"を藤川監督がどれだけ自分の感性でグレードアップさせられるかが注目されました。やりがいがあったんじゃないでしょうか。

──遊撃と左翼のポジションは流動的でしたね。

江本 上位5人に続く安打数を見ると、髙寺望夢が73安打、前川右京が41安打。遊撃を守った選手では元山飛優が37安打、熊谷敬宥が35安打、木浪聖也が32安打です。そういう選手たちをどう組み合わせるかというところでしたね。

【髙橋遥人の覚醒と若手投手の台頭】 ──投手陣はいかがでしたか?

江本 言うまでもなく大きかったのは、プロ9年目の髙橋遥人でしょう。これまで何度も手術を経験し、昨年は8試合で3勝。その苦労人が今季は開幕からローテーションを守り、開幕10連勝を飾った。4月から5月にかけては3試合連続完封を含む4完封です。3試合連続完封なんて、いまどきなかなかできませんよ。阪神では1966年のジーン・バッキー以来、60年ぶりの快挙です。

──今季、髙橋投手は23試合に登板して16勝3敗、防御率1.87、159回を投げて150奪三振。完投は5、完封も4つありました。

江本 大飛躍ですよ。やっぱり、こういう軸になる投手がいたことは大きかったですね。

──一方、リリーフ陣では石井大智投手が2月に左アキレス腱を断裂し、長期離脱しました。

江本 昨年は50試合連続無失点というプロ野球記録をつくり、防御率は0.17。ほとんど点を取られず、走者も出さなかった。昨年の優勝における貢献度は非常に高かった。その石井が開幕からいなかったわけですから、救援陣のやり繰りは難しかったと思います。

──藤川監督は自身もリリーフ投手として活躍しただけに、うまくやり繰りできたのでしょうか。

江本 それはあまり関係ないと思いますけどね(笑)。誰の野球を参考にしているのかはよくわからないけれど、調子のいい投手をうまく見極めていた印象はありますね。

──藤川監督はメジャーから帰国した2015年に高知ファイティングドッグスでプレーしました。石井投手もドリス投手も、江本さんが総監督を務める高知に在籍した経験があります。

江本 ドリスは藤川監督と2013年にカブスでチームメイトでしたし、その後、高知ファイティングドッグスを経て阪神で活躍した。石井も高知から阪神に入りました。3人とも高知に縁があるというのは、不思議なものですよね。

──ドリス投手は2017年に37セーブでセーブ王を獲得。今季、阪神に復帰し、53試合に登板して2勝4敗19セーブ、19ホールド、防御率2.20です。

江本 ドリスがいたことも大きかったですが、石井の穴を埋めるように台頭したのが、ストレートが武器の工藤泰成と木下里都ですよ。こういう素材をドラフトで獲得し、戦力にしたということです。

【岡田野球の継承と藤川流の確立】 ──阪神は8月29日に優勝マジック「23」を点灯させましたが、9月には7連敗を喫するなど、苦しい時期もありました。

江本 巨人も粘りましたね。ただ、直接対決で阪神が大きく勝ち越していたことが最後まで効いた。10月1日の巨人との今季最後の直接対決でも、9回二死から大山が同点タイムリーを打って引き分けに持ち込んだ。ああいう試合を落とさないところが、優勝するチームの強さですよ。

──阪神の連覇は、2リーグ制になってから初です。藤川監督は、ベンチでは泰然自若としているように見えます。

江本 藤川監督がいいのは、本人なりに野球を勉強してきたことと、自信を持っているということ。それから、岡田監督の野球をよく見ていたことです。自分流に変えたいところはあるでしょうけど、「ここは変えたらダメだ」という部分も分かっている。監督になると、自分の色を出そうとして、これまでとは180度違う野球をする人が多いですから。

──藤川監督はコーチ経験なしで監督に就任しました。

江本 ただ、現役引退後は2021年から阪神のスペシャルアシスタントを務め、23年からは球団本部付のスペシャルアシスタントとしてチームを見てきた。その時間がよかったんじゃないですか。外から野球を見て、球団運営にも関わりながら勉強することができた。岡田監督のいいところを踏襲しながら、本塁打が出てもベンチで一喜一憂しないなど、自分のスタイルを貫いている。そこはいいと思います。

──クライマックスシリーズを勝ち抜けば、日本一への期待も高まります。

江本 昨年の日本シリーズはソフトバンクに1勝4敗でした。巨人は日本一22度。阪神はまだ2度です。リーグ優勝だけじゃなく、日本一を積み重ねていくことが大事ですよ。2リーグ制以降、球団史上初のリーグ連覇を果たしたわけですから、次は日本一。ここから本当の阪神黄金時代をつくってほしいですね。



江本孟紀(えもと・たけのり) /1947年7月22日、高知県生まれ。高知商業高校、法政大学、社会人野球の熊谷組を経て、71年にドラフト外で東映フライヤーズに入団。同年オフに南海ホークスへ移籍し、翌72年には16勝をマーク。76年に江夏豊とのトレードで阪神に移籍し、主力投手として活躍した。81年に現役を引退。プロ通算113勝126敗19セーブ、防御率3.52。引退後は野球評論家として活動する一方、92年に参議院議員に初当選し、2期12年務めた。著書『プロ野球を10倍楽しく見る方法』はベストセラーに。現在はテレビ、ラジオ、新聞などで野球解説者として活躍中



水道博●文text by Hiroshi Suido

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