今回の代表ウィーク4連戦の最後を飾るニュージーランド戦で最大のトピックとなったのは、森保一監督がスタートから4バックを採用したことだった。
サッカー日本代表はニュージーランド戦でひさびさに4バックの布陣を採用したphoto by Masato Fujita
まさかこのタイミングで、というのが率直な感想だが、基本布陣の3-4-2-1に行き詰まりの兆候が見られていたことを考えると、何もしないよりはベターと言える。相手の目先を変える点においても、ポジティブに受け止めたい。
【戦術の幅を増やすための4バック】
試合後の会見で森保監督が明かしたように、今回の活動期間前から4試合目で4バックをテストすることを決めていたという。4試合目の対戦相手がパナマになるのか、ニュージーランドになるのか、事前には決まっていなかった点を考えると、自身が会見で語った通り、「相手ではなく、自分たちの戦術の幅を増やす」ことを目的として、テストに踏みきったのは間違いない。
加えて、今回の招集メンバーが基本布陣の3-4-2-1に沿ったリストだったのを踏まえれば、ニュージーランド戦で採用した4-2-3-1は、現状、プランBの戦術としてとらえるのが妥当だろう。
実際、この試合の4バックの両サイドバック(SB)を務めたのは本職のSBではなく、中野就斗と鈴木淳之介というユーティリティなふたりだった。また、1-1で迎えた64分からは、アタッカーの伊東純也が右SBのポジションで起用されていた。
どのような相手に対して、あるいはどのような戦況で4バックを使うのか。オプションの戦術を採用する場合はそこが極めて重要なポイントになるのだが、まだそこまでは明確に整理されていない、というのが実際のところだろう。
では、2-1で勝利したこの試合で4-2-3-1を採用したことによって、ピッチ上ではどのような現象が起きていたのか。
【引いて守る相手に苦労した】
71.2%対28.8%と日本がボールを一方的に支配したうえ、シュート数も20本対3本と日本が圧倒したものの、実際はそれらのスタッツほどの差は感じられない試合内容だった。71分に堂安律の決勝ゴールが決まるまで、日本は引いて守る相手に苦労し、鋭いカウンターアタックも受けた。
その原因のひとつが、相手の戦術に関係なく、「自分たちの戦術の幅を増やす」ことを目的にテスト採用した4-2-3-1にあった。
ニュージーランドの基本布陣は4バックで、北中米W杯のグループリーグ3試合では4-2-3-1、今回のキリンカップのパナマ戦では4-3-3(試合終盤に5-4-1に変更)。しかし、3-4-2-1の日本を想定し、この試合では5-4-1の守備的布陣を使ってきた。狙いは、引いて守ってからのカウンターアタックだった。
「日本もフォーメーションを変えてきましたが、結果的には自分たちにとってよかったと思います。日本が変えてくれたおかげで、自分たちはコンパクトに守ることができましたし、スペースを潰すこともできました。うまく攻撃につなげることもできました」
試合後、ニュージーランドのダレン・ベイズリー監督はお互いがフォーメーションを変更した効果について、ポジティブに振り返っている。
思い出されるのは、日本が基本布陣を4バック(4-2-3-1または4-3-3)から3バック(両ウイングバック/WBに純粋なアタッカーを配置する3-4-2-1)に変更した約2年半前のことだ。
当時、4-2-3-1を基本としていた日本は、2024年1月のアジアカップのグループリーグでイラクに黒星を喫し(●1-2)、準々決勝ではイランに敗れて8強止まり(●1-2)。ロングボールを多用して中盤を省略する対策をした相手に攻撃が停滞し、カウンターでやられる現象が続き、4-2-3-1は機能不全に陥った。
それは3月のW杯アジア2次予選の北朝鮮戦でも変わらず、その打開策として同年6月6日のミャンマー戦で3バックに変更。続く11日のシリア戦では右WBに堂安、左WBに中村敬斗を配置すると、以降、その布陣が定番化したという経緯がある。
さらに言えば、両WBにアタッカーを配置する3-4-2-1は、引いて守る格下が多いW杯アジア予選で効果てきめん。4-2-3-1時代が嘘のように攻撃が機能するようになった日本はゴールを量産し、余裕を持ってW杯出場を決めた。
【どちらの布陣も問題を残したまま】
その経緯を振り返れば、残念ながら、今回のニュージーランド戦で4-2-3-1を試したことは、タイミングとしてはよくなかったと言わざるを得ない。
ベイズリー監督が振り返ったように、自陣で「5-4」のブロックを敷くチームにとっては、日本の両WBがサイドに張って幅を取り、3-2-5のような陣形で向かって来られるほうが、守備ブロックのコンパクトさを保ちにくいからだ。
「よい時間も長かったが、残念ながら、あと20分というところで力尽きてしまった」
とは、ベイズリー監督の敗戦の弁だが、もともとの実力差や日本のホームゲームであった点を踏まえれば、結果は別として、内容的にはニュージーランドのほうが手応えを感じた試合だったと受け止めることもできる。
いずれにしても、オプション戦術は、機能させることと同様に、どのような場面で、どのように使うかも極めて重要だと、改めて示した試合だったと言える。そういう意味では、アジアカップ前に予定されている残り2試合(11月のブラジル戦、パラグアイ戦)で、4-2-3-1をどう使うかは要注目だ。
アジアカップに向けては、もうひとつ不安材料がある。それは、3バック採用時に相手が対策を打ってきた場合の「対策の対策」の問題が置き去りになったままであることだ。
4日前のエクアドル戦でも、4-2-3-1のエクアドルは両ウイングが幅を取って高い位置をキープ。日本の両WBが後方でピン止めされ、5バックで守る時間が増えてしまう現象が起きた。日本はボール支配率で下回り(49.5%)、シュート数も日本の6本対エクアドルの5本と拮抗。エクアドルが抱える得点力不足に助けられてゴールレスドローに終わり、最後は日本がPK戦で勝利したが、問題は解決されないままの状態だ。
今回ひさしぶりに試した4-2-3-1にしても、約2年半前に問題を残したまま3バックに舵を切った経緯からすれば、11月の2試合でそれを解決できるとも思えない。
二兎を追う者は一兎をも得ず。少なくとも、そのような状態でアジアカップに臨むようなことは避けなければならない。
中山 淳●取材・文text by Atsushi Nakayama
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