F1第16戦バーレーンGPレビュー(前編)
セパンの空はどんよりと曇り、今にも泣き出しそうだった。
この週末に懸念された雨は、まだ一度も降っていない。しかし、午後の決勝を前に雷雨が予報され、一度も事前走行のないまま、今シーズン初めて本格的なウェットコンディションでのレースを迎えることになりそうだった。
中東情勢の悪化によってマレーシアで代替開催されたバーレーンGP。予選で今季最上位の12位・14位につけたアストンマーティン・ホンダにとって、ウェットレースが歓迎すべき状況なのか否かは微妙だった。
今シーズン初めてのウェットレースとなったphoto by BOOZY
「我々にはまだ、十分な速さはない。それを認識したうえで、いい結果を手に入れるためにやれる限りのことをやろう」
レース前のブリーフィングで、チーフトラックサイドオフィサー(CTO)のマイク・クラックはチームメンバーたちに伝えた。
予選で2台揃ってQ2に進出を果たし、フェルナンド・アロンソがトップから1.524秒差で12位、ランス・ストロールが14位を手にした。とはいえ、アルピーヌとレーシングブルズの1台ずつがグリッド降格ペナルティのためアタックしていなかった。チームとしてはアルピーヌ、アウディ、レーシングブルズには敵わず、8番目の実力であることに違いはなかった。
予選を終えたアロンソも、「今シーズンベストの予選のひとつ」と言いながらも、決勝に向けては悲観的だった。
「入賞は無理だろうね、明日のレースでポイント圏内に行けるとは思えない。競争力が足りないし、うしろからはペナルティで後方グリッドになった速いマシンが追いかけてくるし。
ストレートスピードが足りないから、スタート直後の数周で、ストレートで何台にも抜かれて抜き返せなくなる。そうすると、タイヤもダメージを負ってしまう。自分たちよりも速いマシンと争えるなんてミラクルは起きないと思う」
しかし、雨が降れば状況は一変する。
パワー差はほとんど意味をなさなくなり、滑りやすい路面が波乱を呼ぶ。ドライバーの腕と、チームのレース遂行能力が問われることになる。
【ドライタイヤでは25〜30秒も遅いタイム】豪雨のため40分遅れで、セーフティカー先導のフォーメーションラップが始まった。だが、2026年規定のマシンで初めてのウェットセッションということもあり、何台ものマシンに問題が発生した。スロットルペダルが反応しなくなり、コース上で再起動を強いられる状況になった。
ウェットコンディションでは、安全のためにMGU-K(運動エネルギー回生システム)の出力が最大250kWに制限されるなど、通常とは異なるマップが適用される。しかし、実戦では一度も使われていなかったため、こうした不測の事態が起きたのだ。
FIA(国際自動車連盟)は、まだスタートを切っていなかったレースを止め、規定とソフトウェアに応急修正を加えたのち、50分後にようやく決勝のスタートに辿り着いた。
この中断の間に、路面は急速に乾いているように見えた。アストンマーティン勢はミディアムタイヤを履いて、セーフティカー先導のスタートに臨んだ。
約半数の9台はインターミディエイト(浅溝)を履いており、判断は大きく分かれた。そして走り出してみれば、路面はまだ水量が多く、ドライタイヤでは25〜30秒も遅いタイムでしか走ることができない状況だった。
最初からインターミディエイトを履いていれば、ウイリアムズ勢と同じ6〜7位付近まで浮上できた計算になる。
つまり、アストンマーティンはタイヤ選択に失敗してしまったのだ。
◆つづく>>
米家峰起●取材・文text by Mineoki Yoneya
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