橋田壽賀子脚本の人気長寿ドラマシリーズ『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)で10歳から12年間、“加津ちゃん”こと野々下加津役を演じていた宇野なおみさん(37歳)。かつて“天才子役”と呼ばれた宇野さんは現在、フリーライター、エッセイストとして活動中です。
そんな宇野さんが30代女性として等身大の思い、ちょっとズッコケな日常をお届けするエッセイ連載。今回は自身の“ある一面”についてつづります(以下、宇野さんによる寄稿)。
実は人のアラ探しが大得意
「親の顔が見てみたいよ」。『渡鬼』のキミさんのセリフじゃないですが。
アラ探しばかりしていたら、自分のメンタルが荒くれになってしまっていました。
皆様、ご機嫌よう。こうも雨続きだとじっとりしてしまいますね。布団が干したい、宇野なおみです。
こちらの連載ではわたくしのいろんな面を書いてきておりますが、今回はかなりダークな部分。実は、人のアラ探しが大得意、というお話です。
脳内が自己・他者への「アラ探し」でいっぱいに!?
もちろん、表立って口にすることはありませんが、人様のアラに、結構気づいてしまうタイプです。悪口を言おうとすればいくらでも言えてしまう、と言い換えてしまってもいいかもしれません。
例えば電車で、音漏れしているとか。満員なのにロングヘアをばっさりかき上げるとか。食事のときにワイングラスを盛大にぶつけ合っているとか、そういうことに気づいてしまうのです。渡る世間はアラ探しばかり!!
シンプルに最悪ですし、さらに悪いことに、自分のアラもめちゃくちゃわかってしまうんですね……。
自分へのアラ探しは際限なくやってしまう
「あのときは、こうすべきだったんじゃないの?」
「どうしてできないの?」
「大人らしいふるまいができないなんて、その年齢で常識知らずだと思われたんじゃない?」
「この服装はTPOにふさわしくなかったんじゃない? 太って見えたんじゃない?」
etcetc……。
何しろ脳内で繰り広げられることなので、歯止めが効きません。最近だとインタビューを受けたときに、調子こいて喋りすぎたんじゃないか、とか、人の相談に乗ったとき上から目線ではなかったか? タオルハンカチではなく、アイロンのかかったハンカチを持つべきだったのではないか、など……。
そうそう、引き出しの中でごま油を倒して、中身「すべて」をごまの香りにしてしまったときは、もうごま油がたっぷたぷの引き出しに頭を突っ込んで、アーユルヴェーダしてやろうかと思いましたね(※アーユルヴェーダでは油を使った施術がある)。
なぜ蓋をきちんと閉めたか確認してからしまわないのか。1年半前にしょうゆで同じことをしているというのに。だいぶ泣きそうでした。
自分のことですから、思う存分に責めてしまうし、できないことにイライラしてしまうし、何よりつらい。ごま油がびんに戻ってくれるわけじゃないですしね。最近は、自分を脳内で責め続けてしまう場合は、ノートに書き殴るようにしています。
しかもまた記憶力が良いのがアダになり、いくらでも反芻できてしまうんですよ。
アラ探しの能力を逆転させたらよいのでは?という、深夜の気づき
ある日、深夜に今までのいろいろな「己のアラ」が思い浮かび、寝つけなくなりました。お気に入りのキャンドルを灯し、揺れる炎を見ながらぼんやりと、
もうやめよう。こんなアラアラしててもしょうがない、魚屋さんじゃあるまいし……。
と、決意しました。
アラ汁を作ったり、アラの煮付けを作ったりするために魚屋さんや鮮魚コーナーでする「アラ探し」なら良いでしょうが、人様のアラはもちろん、己のアラばかりほじくったって自己否定が加速するだけです。
能力を逆に活かしてみよう
ただ、細かいことまで目に入ってしまうのは、私の物事の見方が「映像記憶」である以上、ある程度致し方ない。
伝わるかどうかわかりませんが、「映像記憶」はスクリーンショットを撮るように記憶するやり方でして、子どもはみなこの覚え方だそうです。ただし、成人してもこの記憶法なのはまれなケースだとか。
過去のことを説明するときは、脳内に映像を浮かべて説明します。だから、視覚の印象がより強烈になりがちなんですね。リスニングよりリーディングが得意なタイプ。
とりあえず、私には「人が気づきにくいことに気づく」性質があるらしい。ふむ……なら、アラじゃなくて美点に気づけばいいじゃん! ビジュいいじゃん! と思い立ちました。すぐM!LKさんをねじ込む人。
それからは、アラを見かけたら、それ以上に美点を見つけるように心がけています。テレビ番組や漫画で、ぐいぐい迫る背景を出演者やキャラクターが押し戻す、みたいな表現がありますでしょう? 伝わるかな。あんなイメージで、欠点<美点になるように自分の思考をコントロールしていくんです。
徐々に、お会いした方や取材相手の細かいこだわりや、気遣いにも気づけるようになりました。そして、その気づいたことをお伝えすると、嬉しそうな顔が見られるなんておまけもついてくるように!
飲食の接客バイトではお客様の一挙手一投足を見て判断しなければならないことが多いので、そのあたりをくみ取る力は割と鍛えられていたのかもしれません。通訳なんかもそうかな。
アラはおいしく料理して
といってもまだまだ試行錯誤中で、毎日頑張っております! 一方、「アラ」に気づくというのも、ある局面ではとても重要です。
例えば、演劇のワークショップ、文章の校正など、「直し」を担当するときには、この「アラを見つける」ほうの能力も役立っています。言い方は気をつける必要がありますけれども。
「アラ」からはいい出汁が出る。
料理次第で、おいしく食べられるものです。
時には自己嫌悪に陥るような欠点も、「うまく料理する」ことが大切なのかもしれませんね。
<文/宇野なおみ>
【宇野なおみ】
ライター・エッセイスト。TOEIC930点を活かして通訳・翻訳も手掛ける。元子役で、『渡る世間は鬼ばかり』『ホーホケキョ となりの山田くん』などに出演。趣味は漫画含む読書、茶道と歌舞伎鑑賞。よく書き、よく喋る。ブログ「エッセイスト宇野なおみのかずかずしかじか」/YouTube「なおみのーと」/Instagram(naomi_1826)/X(@Naomi_Uno)をゆるゆる運営中
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