世界中の競馬ファンが関心を寄せるGⅠ凱旋門賞(パリロンシャン・芝2400m)が10月4日に行なわれる。
欧州競馬の最高峰の舞台であると同時に、日本調教馬による悲願達成が期待される一戦。日本からは今年も、メイショウタバル(牡5歳)、アドマイヤテラ(牡5歳)の2頭が参戦する。
2頭とも9月8日に日本を出発。現地到着後は前哨戦を使うことなく、入念に調整されてきた。そうしてシャンティイのレゼルボア調教場で、アドマイヤテラは9月29日に、メイショウタバルは9月30日に最終追い切りを消化。万全の態勢を整えて、レース本番へ向かう。
とはいえ、これまでもそうであったように、迎え撃つ欧州勢は今年も非常に強力だ。
凱旋門賞連覇を狙うダリズ
なかでもその筆頭となるのは、昨年の覇者
ダリズ
(牡4歳/フランス)。3歳で挑んだ昨年はGⅠ未勝利の身で10番人気(JRA発売のもの)と伏兵の1頭にすぎなかったが、凱旋門賞の勝利で一躍トップホースの仲間入りを果たした実力馬だ。
同馬への評価が高いのは、凱旋門賞を制して以降も圧巻の強さを見せているからだ。古馬になった今年、GⅠガネー賞(4月26日/パリロンシャン・芝2100m)を勝つと、続くGⅠアガカーン4世賞(5月21日/パリロンシャン・芝1850m)も制覇。その後、GⅠプリンスオブウェールズS(6月17日/アスコット・芝1990m)では3着に敗れたものの、前走のGⅡフォワ賞(9月6日/パリロンシャン・芝2400m)では軽く仕掛けただけで快勝した。
凱旋門賞以降のこうした活躍ぶりについて、同馬を管理するフランシスアンリ・グラファール調教師が振り返る。
「実は4歳になって、(ダリズは)少し我の強さを出すようになっていました。加えて、身体的にもパワーアップ。このままだとちょっと手がつけられない状況になってしまうと思って、そうならないうちに調教担当を代えてみたのです。そうしたら、新たな担当者がしっかりとダリズを制御してくれて、ダリズ自身、無駄な消耗をせずにしっかりと成長してくれました」
連覇へ向けての調整も順調だ。9月29日朝、レースでも騎乗するミカエル・バルザローナ騎手を背にして、僚馬3頭との併せ馬で最終追い切りを実施。上々の動きを披露し、「前走のフォワ賞はラクな勝ち方で、その疲れも残っていません。(追い切りの)動きもよくて、文句なしのコンディションでレースに臨めそうです」と、バルザローナ騎手は笑みを浮かべた。
また、グラファール調教師も自信に満ちた表情で連覇への手応えを口にした。
「(追い切りでは)騎手の手応えもよく、最後まで持ったままの余裕ある走りで終えました。調教後も息の乱れはそれほどありませんでしたし、何よりよかったのは、彼がとても鋭い動きを見せたことです。フォワ賞の前よりも鋭さが増していました。馬の状態は万全で、まさに凱旋門賞に向けて理想としていたとおりの調教ができました」
ただ、凱旋門賞における牡馬の連覇は、1977年、78年のアレッジドまで遡らなければならない。牡馬の場合、前年覇者が出走すること自体がレアケースということもあるが、連覇が決して簡単ではないのは確かだ。
「それでも、この馬はやってのける馬だと思いますよ」とバルザローナ騎手。そして、こう続けた。
「今年は雨が少なく、パリロンシャン競馬場としてはかなり硬い部類の馬場になるので、日本調教馬にとってはプラスになると思いますよ。だけど......ボクの馬にとっては(その馬場が)それ以上に有利になります」
続いて有力視されるのは、
カルパナ
(牝5歳/イギリス)だ。
先のバルザローナ騎手がライバルとして真っ先に名前を挙げた馬でもある。今夏のGⅠキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(7月25日/アスコット・芝2390m)、バルザローナ騎手は昨年のGⅠジャパンC(東京・芝2400m)の覇者カランダガンとのコンビで挑んだが、カルパナに次ぐ2着に敗れているのだ。
さらに、カルパナは続く前走のGⅠヨークシャーオークス(8月20日/ヨーク・芝2370m)も勝利。現在GⅠ2連勝中で、管理するアンドリュー・ボールディング調教師は凱旋門賞へ向けても自信をのぞかせる。
「昨年の凱旋門賞は7着でしたが、枠順も展開も向かず、噛み合わないままレースが終わってしまった感があります。それに、昨年までは調教で負荷をかけたら息が上がってしまうこともあって、体調の管理も難しい面がありました。ですが、今年に入ってそういった面がまったくなくなり、身も引き締まって逞しくなりました。
早い時期から今年の最大目標をこの舞台に定めており、前走も8月でしたから、いい間隔でレースに臨めます。昨年とは違って、すべてがかみ合っていい結果になることを願っています」
最後にもう1頭、ダリズ、カルパナに比べると人気も実績も劣るが、有力馬として紹介しておきたい馬がいる。ダリズと同厩舎の
ヴァランディール
(牡3歳/フランス)だ。
グラファール調教師が言う。
「当初は心身ともに未熟で、すぐ汗をかいてしまう面もあって、去年のダリズと同じ未勝利戦からキャリアをスタートさせました。それが、夏を越して彼には明らかな変化が見られ、肉体的にも精神的にもしなやかさが増したように思えます。
その結果、前走のGⅡニエル賞(9月6日/パリロンシャン・芝2400m)ではすばらしい走りを見せてくれました。この馬が昨年のダリズのようになっても驚きはありません」
前走までは、バルザローナ騎手が騎乗。厩舎期待の1頭であることは間違いない。今回、新たに手綱を取るクレマン・ルクーヴル騎手は大一番へ向けて胸を躍らせる。
「ほんの数日前に(ヴァランディールの)騎乗依頼を受けました。調教にはずっと乗っていて、この馬の成長を肌で感じています。この馬のことを一番よく知っている自負もあります。ダリズをはじめ、他にも強い馬はいますが、自分のキャリアのなかで間違いなく最大の機会。一番の勲章を手にする気持ちはありますよ」
28歳のルクーヴル騎手。日本ではまだまだ無名だが、陣営が信頼を寄せる気鋭の騎手は最後に「見ててよ」と笑顔を見せた。
土屋真光●取材・文text&photo by Masamitsu Tsuchiya
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