高市首相は「二枚舌」恐れ動けず…「売国」と叩かれても“火中の栗”拾い訪中した岩屋前外相がつなぐ日中の“細い線”

中国指導部との会談に臨んだ岩屋氏(写真:共同通信)

高市首相は「二枚舌」恐れ動けず…「売国」と叩かれても“火中の栗”拾い訪中した岩屋前外相がつなぐ日中の“細い線”

10月1日(木) 11:00

「高市首相にとっても、中国との経済関係は誰かにつないでおいてもらわなければ困るんです」

そう語るのは、政治評論家の有馬晴海さん(68)だ。

昨年11月、高市早苗首相(65)が台湾有事をめぐり「存立危機事態になり得る」と国会で答弁して以降、日中関係は冷え込んでいる。

そんななか9月27日、日本国際貿易促進協会(国貿促)の会長を務める岩屋毅前外相(69)が、日本企業の役員ら約50人を率いて北京を訪問。28日には王毅外相と会談した。

「中国外務省によると、王氏は来年の日中国交正常化55周年を前に『日中関係は再び厳しい局面に直面している』と指摘。高市首相に対し、台湾問題をめぐる『誤った言動の是正』と、歴史問題での『正しい態度』を求めました」(政治部記者)

その背景にあるのが、日中国交正常化の原点となった1972年の日中共同声明だ。有馬さんは、こう解説する。

「同声明で日本は、中華人民共和国政府を『中国の唯一の合法政府』と承認。中国側が台湾を『領土の不可分の一部』とする立場を表明したのに対し、日本は『十分理解し、尊重する』としました。一方、中国は日本への戦争賠償請求を放棄しています」

岩屋氏は王氏に「日中関係の現状は懸念される」としたうえで、「両国関係が原点に立ち返るようにしたい」と述べたという。

さらに29日には、経済政策を担当する何立峰副首相も人民大会堂で岩屋氏と会談。高市首相の台湾有事発言以降、中国指導部が日本の国会議員と会談するのは初めてとなった。

■「媚中」「売国」と叩かれても…“火中の栗”を拾った岩屋氏

今回の訪中は、もともと今年6月、国貿促会長だった故・河野洋平元衆院議長(享年89)が団長を務める予定だった。しかし直前に河野氏が亡くなり延期。7月に後任会長となった岩屋氏が引き継いだという。有馬さんはこう解説する。

「河野さんも亡くなり、中国と太いパイプを持っていた二階俊博元幹事長(87)も第一線を退き、中国とつながりのある政治家が少なくなった。誰かが中国との関係をつながなければいけない」と話す。

しかし、それは“火中の栗”を拾うことでもある。岩屋氏は対中姿勢をめぐり激しい批判を受け、今年2月の衆院選ではSNS上で《媚中》《売国》などの言葉が飛び交った。

岩屋氏自身、「今まで経験したことがないような異質な選挙戦だった」と振り返っている。

「それでも岩屋さんが訪中したのは、中国側からも『話のできる相手』と見られているからでしょう」

■日本は米中“二つの肺”で呼吸している

なぜ、そうまでして中国とのパイプを残す必要があるのか――。有馬さんは、日本にとって米国と中国との関係は“二つの肺”のようなものだと表現する。

「日本は安全保障では米国と同盟関係にある。一方で、中国は隣国であり、経済的にも深く結びついています。いわば二つの肺で呼吸しているようなもの。片方だけでやっていくわけにはいかないんです」

理由の一つが、レアアースなど重要鉱物をはじめとする経済面での深い結びつきだ。有馬さんはスマートフォンを例にこう話す。

「100個の部品が必要なら、99個そろっていても、1個なければ完成しません。レアアースなどもそう。中国からの供給が止まれば、日本企業は製品をつくれなくなる。中国から見ても、日本の市場は大きい。政治で対立しても、『経済ではつながっていましょう』という関係を残す必要があるんです」

では、高市首相自身は水面下で中国との対話を模索してきたのか。

「していないと思います。むしろ動いていたら、党内から『二枚舌じゃないか』と信頼を失う可能性があります」

今後、関係改善へ舵を切ることも容易ではないという。

「いま方向転換したら、対中強硬路線の岩盤支持層が離れてしまう。高市さんは支持率を気にして、自分のスタンスにこだわった言動に徹しているように見えます」

一方、中国との経済関係がさらに悪化すれば、そのツケは国民生活に跳ね返ってくる

■中国は副首相まで出したのに…官邸は「コメント差し控える」

中国側が王毅外相、何副首相を岩屋氏との会談に送り出した一方、29日、木原稔官房長官(57)は岩屋氏の訪中を「民間経済団体の動向」とし、コメントを差し控えた。

有馬さんは、そこに高市首相のジレンマを見る。

「高市さんにとっても、中国との経済関係は誰かにつないでおいてもらわなければ困る。でも自分から岩屋さんに『中国とうまくやってきてください』とは言えない。弱腰だと思われたくないから」

そして岩屋氏の役割をこう表現する。

「中国との関係がゼロになれば、日本も中国も困る。政治的には対立していても、経済のパイプは残さなければならない。その『細い線』を岩屋さんたちがつないでいるんです」

高市首相自身は動きにくい。だが、中国との経済関係も壊せない――。“火中の栗”を拾った岩屋氏がつなぐ“細い線”は、冷え切った日中関係を動かす糸口となるのだろうか。

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