サッカー日本代表の新戦力が機能しないのはなぜか ベネズエラ戦で露呈した「メカニズムの欠如」

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サッカー日本代表の新戦力が機能しないのはなぜか ベネズエラ戦で露呈した「メカニズムの欠如」

9月29日(火) 16:00

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1-1で迎えた終了間際、ベネズエラにPKが与えられるか否かでVARになった。ところがオーストラリアの主審、ティモシー・ダナスコスさんは一転、日本にPKを与えた。その前のシーンで久保建英がベネズエラのペナルティエリア内で倒されたプレーを優先。こちらにPKを与えたのだ。滅多に起きない、わかりにくい事象である。にもかかわらず、場内への説明はなかった。電光板には映像はもちろん、文字情報としても紹介されなかった。上田綺世がどさくさに紛れるようにPKを決め、試合は日本の逆転勝利となった。

後半のアディショナルタイムはわずか2分。ベネズエラ側がアウェーのハンデに怒り心頭になるのも無理はなかった。オスワルド・ビスカロンド監督は、試合後の会見で当然のように異を唱えた。冷静さを保ちながら論理的に反論する姿には好感さえ抱かせた。

その後、会見場に現れた森保一監督は、不満を抱える相手側を気遣うこともなく、勝利を喜んだ。「勝ち癖をつけておくことは大事だ」と、勝利にこだわる強い姿勢を隠そうともしなかった。このベネズエラ戦の逆転勝ちを、これ以上、喜べない勝利も珍しいと断じたくなった筆者との間には、大いなる見解の相違があった。

代表デビューとなる小久保玲央ブライアン、中野就斗、熊坂光希、齋藤俊輔が先発したベネズエラ戦 photo by Daisuke Nakashima

代表デビューとなる小久保玲央ブライアン、中野就斗、熊坂光希、齋藤俊輔が先発したベネズエラ戦 photo by Daisuke Nakashima



なかでも問題視したいのは、上田綺世、久保建英、伊東純也、田中碧、鈴木彩艶といった主力組を、後半の冒頭から早々に投入したことだ。ハーフタイムに引っ込めたのは、鎌田大地、後藤啓介、佐藤龍之介、齋藤俊輔、小久保玲央ブライアン。鎌田を除けば代表経験の浅い若手たちだった。森保監督は、彼らを早々に引っ込めた理由を問われると、逆に、試合の後半ではなく先発で使ったことを「そのほうが彼らのためになる」と自画自賛した。

だが、このベネズエラ戦は4連戦の中の2戦目で、強度のレベルで言えば3番目か4番目だろう。メインとなる試合は、初戦のウルグアイ戦であり3戦目のエクアドル戦である。ベネズエラ戦は本来、少し落としたメンバーで戦うべき試合なのである。それは森保監督もわかっていたはずだ。若手を多く先発させた理由はそこにあったはずなのである。後半途中から交代で出場させるだけでは、ローテーションはうまく回らないのだ。また、そうでないと4連戦は乗りきれない。騙されてはいけない。

【選手が代わっても再現できる戦術がない】確かに前半の内容は悪かった。前線の3人(後藤、齋藤、佐藤)が機能していなかったことと、それは深い関係があった。特に前半の終了間際はピンチの連続だった。GKに関しても、小久保からより信頼の置ける鈴木に代えたくなった理由は推察できる。

そこには、どんな試合にも勝ちたい勝利至上主義者、結果至上主義者がハマりやすい罠が広がっていた。目の前で起きている状況に森保監督が耐えきれなくなったことは、その早すぎる交代で露呈した。

だが、そのベストメンバー主義は、特定の選手に負荷を掛ける行為でもある。サッカー選手にケガはつきものとはいえ、メンバーのほとんどは、招集されるたびに欧州と日本の長期移動を余儀なくされる。日本代表監督は、欧州から見れば日本がオーストラリアに次いで遠い国であることを忘れてはならない。

日本代表界隈でケガ人が続出していることと、それは深い関係があると筆者は見る。欧州組の出場時間に制限を設けるべき、出場時間を厳格に管理すべきとは、筆者が前から述べていることだが、森保監督に伝わっている様子はない。少しでも苦境に陥ると、彼らをピッチに送りたがる。

この日の会見でも、森保監督は「FIFAランクを上げること」を勝ちにこだわりたい理由に挙げているが、ベネズエラ相手にホームの親善試合に勝ったところで、ポイントは大して上昇しない。ランクを頑張って維持したところで、ワールドカップの抽選会で運に恵まれなければ厳しい組に入ることは、前回大会で学んだばかりだ。これも率直に言って方便である。その結果至上主義には、うんざりするばかりだ。

むしろ負けたほうが薬になると考える筆者にとって、主審の判定は恨めしいものとなった。

話を試合に戻せば、若手と言っても後藤はワールドカップ出場組で、佐藤も代表キャップ5を数える。まったくの新人は攻撃陣の3人のなかでは齋藤のみだ。機能しない理由を「選手が若いから」で終わらせてはいけない。

森保サッカーには確固たる枠組みがない。選手が代わっても再現できる普遍的な戦術がない。8年以上も同じ監督が指揮を執っているのにメカニズムが見えない。

オートマチックさの欠如。これが大きな原因だと筆者は見る。選手個々のフィーリングに頼った、出たとこ勝負のサッカー。それこそが、森保サッカーの攻撃面の正体であると、筆者がこれまで述べてきたが、その思いはこのベネズエラ戦でさらに強まることになった。

後半、日本は、時間が経つにつれてベストメンバー度を上げると、パス回しに独自性が増した。悪く言えば、無意味なショートパス、非建設的なパスワークだ。それを喜ぶファンがいることも確かだが、よくも悪くも日本式だ。ここまで濃くて、厚かましくて、ちょこざいなパスを交換し合うサッカーは珍しい。スペインでさえ見かけない。

なぜかといえば、サイドならともかく、真ん中で行なうのはリスキーだからだ。発展性がないのに危なっかしいプレー。一見、うまそうに見えるが非生産的である。

対照的なのは三角形を意識した展開力に富むパスワークだが、それはベネズエラのほうができていた。基本に忠実なパスワークだった。三角形を形成することは選手たちにとって約束事でもあるので、誰が入っても実践しやすいのだ。ベネズエラ(前戦のウルグアイもそうだった)が、指導者の存在が見えるパスワークであるのに対し、日本のパスワークは選手の自己流だ。新人や若手にはとりわけ難易度の高い設定になっている。

つまり、攻撃に定石がない。ベネズエラ戦は森保サッカーの弱みが、あらためて露呈した一戦でもあった。

それにしても、だ。この試合内容で勝利して喜ぶとは......感覚の違い、ここに極まれりと言いたくなる試合だった。





杉山茂樹●文 text by Shigeki Sugiyama

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