自由になる時間が増えたら、何をしたいか。旅行、と答える人は多いと思います。実際に行けるかどうかは別として、行き先を考えている時間だけでも少し気分が上がります。
内閣府の「国民生活に関する世論調査」(令和7年8月7日から9月14日の調査、有効回収数2938人)によると、自由になる時間が増えたらしたいことの1位は「旅行」で61.5パーセント。2位の趣味・娯楽が41.5パーセントですから、20ポイント差をつけた単独首位です。それだけ多くの人が待ち望んでいる旅行が、思っていたものにならないこともあります。
今回ご紹介するのは、過去に大きな反響を呼んだ人気記事から、20年ぶりに母親を旅行に誘った女性の話。旅先で女性は、母の行動に頭を下げ続けることになりました。
記事の後半では、同じ世論調査の別の項目を調べてみました。「したいこと」と「していること」を並べると、旅行の順位は大きく変わります。
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母親の恥ずかしすぎる“節約癖”
お米に電気代、ガソリン代に日用品と価格上昇が止まらない昨今。生活費を抑えるためや家計の負担を減らすために節約しているという人も多いのではないでしょうか。ただ、やりすぎた節約は周囲の人との関係を悪くしてしまうかもしれません。
大西唯香さん(仮名・30代)はいつの頃からか、他人が不用品の話をしていたら「ちょうだい!」とせっつき、街中やショッピングセンターなどでティッシュを配っていると何度も往復してもらいに行くような母のことを恥ずかしく思っていたという。
「特売日に売り出し商品が1人何個などと制限があるときは、いくら私が嫌がっても無理やり同行させられまして……。スーパーでバッタリと同級生に会い、半額の商品しか買っていないことなどをからかわれたこともありました」
思春期になるとそんな母に嫌気が差し、高校卒業後は逃げるように1人暮らしをはじめた唯香さん。けれど社会人になり、お金を稼ぐことの大切さや1人暮らしの大変さなどを経験したことで、お金や節約に執着する母のことを少しは理解できるようになったとか。
「母はひとりで私を育ててくれたので余計に大変だっただろうなと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。そこでこれまでの反省の気持ちも込めて旅行に誘ったのです。旅行は私が小学生のとき以来で20年ぶり。母も喜んでいました」
旅行先で“まさかの迷惑行動”
楽しい旅行にしたいと考えていた唯香さんは、自家用車でゆったりとまわる旅を計画した。朝早くに出発して、事前にみつけておいた人気の和食店で食事。そのあと神社仏閣を巡って、ホテルへ到着するまでは楽しく過ごしていた。
「でもホテルに到着すると母は、ドリンクバーのドリンクを『ウエルカムドリンクだから』と、自分の水筒へ注ぎはじめたのです。注意しましたが聞き入れず、翌日は朝食ビュッフェのパンもビニール袋に入れて持ち帰ろうとして注意されました」
母がこっそりと部屋に持ち帰っていたビュッフェ会場の紙コップやフタ、紙ナプキンに砂糖も複数個ずつみつけて没収し、ホテルのスタッフに謝罪。「ビュッフェの料理は自分が食べれる分だけをその場で取って食べ切るもの。持ち帰っちゃダメ」と強く注意した。
お土産コーナーでもトラブルが…
それでも母親の暴走は止まらない。
「お土産店では気に入った商品の試食を食べ尽くし、『もうちょっと食べたいから、もう少し入れていただけませんか?』とおかわりを要求しまして……。その様子をチラリと見て、試食品を片付けてしまうスタッフまで出現する事態となりました」
唯香さんは申し訳ない気持ちでいっぱいになって頭を下げ、母が気に入った商品をいくつもレジへ持参。購入しようとしたところで「こんなにいっぱい買うんだから、割引してくれるわよね?」と質問し、スタッフに冷たい目で見られて再び謝罪するハメになってしまう。
「昔のように配布しているティッシュを何度ももらいに行くぐらいなら許せましたが、旅行での母は明らかに周囲の人を不快にしている感じだったため、縁を切りたいと思ったほど。どうやら母の節約は、私がいない間にパワーアップしていたようです」
母親の“節約グッズ”を一掃することに
注意しても諭しても聞き入れる素振りのない様子に困り果てた唯香さんはある日、スーパーでもらった空のダンボール箱を持って母の家へと向かった。そして母が押し入れに溜めこんでいたティッシュやビニール袋をダンボールの中へ次々と投げ入れる。
「驚いた母が『何やってるの?』と聞いたので、『前にティッシュやビニールをくれるって言ってたでしょ?』と言い返したんです。すると母が『あげるとは言ったけど、そんなにあげるとは言ってない。限度があるでしょ?』と怒りはじめたので、チャンスだと思いました」
母親へ怒りをぶつけた結果…
そして「ホテルやお土産店のスタッフさんも、いまのお母さんみたいな気持ちだと思うよ。気持ちよく提供しているものを余分に持ち帰ろうとしたり、それ以上のサービスを求めたりするのは節約じゃなく、相手を不快にさせる迷惑客だよ」とハッキリ伝えた唯香さん。
「母は周囲を不快にしている自覚はなかったようで、私に言われて驚いていました。旅行中、私がどうして謝ったり怒ったりしているのかもハッキリとはわかっていなかったようです。同じようなことをされて、はじめて相手の気持ちに気づいた母は、今となってはすっかり反省しているようです」
自分の言動を判断するのは自身になってしまうため、良し悪しのボーダーラインが曖昧になってしまうことも少なくない。節約に限らず、たまには自分の言動を振り返ってみたり、身近な人に気になる部分がないかを尋ねてみたりすることも必要かもしれない。
<取材・文/夏川夏実>
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■したいことは1位、していることは8位
リードで紹介した「自由になる時間が増えたらしたいこと」の旅行61.5パーセントには、続きがあります。同じ調査で「現在、自由になる時間をどう過ごしているか」を聞いた項目があり、こちらで旅行を挙げた人は19.7パーセントでした。最も多いのは睡眠・休養の53.7パーセント、次いでテレビやDVDなどの視聴が46.8パーセント、趣味・娯楽が43.7パーセントと続き、旅行は8番目です。
したいことでは1位だった旅行が、いま実際にしていることでは8位。行きたい気持ちがあっても、なかなか行けないという人は少なくないのかもしれません。
充実感を感じる時を聞いた項目では、「ゆったりと休養している時」が57.9パーセントで最も多く、次いで「趣味やスポーツに熱中している時」が49.3パーセント、「家族団らんの時」が48.1パーセントとなっています。旅行に行きたい気持ちと、家族といる時間に充実を感じる気持ち。20年ぶりの親子旅行は、その両方が重なるはずの時間でした。
■ホテルには、あらかじめ決められたルールがある
旅先でのふるまいは、その場の空気や個人の判断に委ねられているように見えます。けれど、観光庁が示している「モデル宿泊約款」には、宿泊客はホテルが定めて館内に掲示した利用規則に従う、という一文があります。
もっとも、約款を読み込んでから旅行に出る人は、ほとんどいないのではないでしょうか。食べきれない、持って帰りたい、もったいない。その気持ち自体は、多くの人が持っているものです。ただ、スタッフが試食を片付けてしまった時点で、答えらしきものは出ていたのだろう、とは思います。
この旅行で唯香さんは、母の行動にそうとう消耗してしまったのではないでしょうか。20年ぶりに母を誘い、旅先で何度も頭を下げ、それでも縁を切らずに、あとから言葉にして伝えています。誰かと出かけて、連れの行動が気になった経験がある人も、少なくないはずです。その場で言うのか、黙ってやり過ごすのか。旅行から帰ってしばらく経ってから、あのとき言えばよかったと思い出すこともありそうです。
<再構成/日刊SPA!編集部>
【夏川夏実】
ワクワクを求めて全国徘徊中。幽霊と宇宙人の存在に怯えながらも、都市伝説には興味津々。さまざまな分野を取材したいと考え、常にネタを探し続けるフリーライター。Xアカウント:@natukawanatumi5
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