ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
──秋のGⅠシリーズの幕開けを告げるGⅠスプリンターズS(中山・芝1200m)が9月27日に行なわれます。まずは現在の馬場状態について、どう見ていますか。
大西直宏(以下、大西)
3日間開催だった先週、中山競馬場では日曜日、(代替競馬となった)火曜日と、道悪のなかで競馬が行なわれました。開催も重ねてきていますから、芝自体はかなり傷んでいる印象を受けますね。
そうしたなか、先週の競馬を振り返ってみると、外から差し込んでくるのは難しく、前に行った馬がそのまま粘り込むような、やや特殊な前残りの馬場でした。ただ今週は、仮に馬場が乾いたとしても、ボコボコに荒れた内側を通る馬にとってはタフな条件になるのではないかと見ています。
──そうなると、コース取りはひとつのポイントとなりそうですが、レースの流れ、展開についてはどのように想定されていますか。
大西
ピューロマジック(牝5歳)がハナを主張して逃げの手に出れば、自ずと全体のペースは速くなります。そこに、ウインカーネリアン(牡9歳)をはじめ、前目の好位で運びたい馬たちが絡んでいく形になりますから、流れとしては激しいハイペースのラップを刻むことになるでしょう。
──そうした展開を踏まえて、大西さんが上位に評価しているのはどの馬になりますか。
大西
特に注目しているのは、スターアニス(牝3歳)です。
──GⅠ阪神ジュベナイルフィリーズ(12月14日/阪神・芝1600m)、GⅠ桜花賞(4月12日/阪神・芝1600m)と、世代の頂点を争うマイルGⅠを2勝した実績を誇りますが、今回は距離短縮のスプリント戦に挑みます。その点については、どう考えていますか。
大西
そもそもこの馬については、1600mの距離でも少し長いのではないか、というイメージを抱いていました。これまでのレースを見ても、中団で抑えて走らせるのがギリギリという感があって、ジョッキーと喧嘩するまでにはいかないまでも、折り合いにはけっこう苦労していましたからね。
そういう意味では、同馬にとって今回の1200mへの距離短縮はかえって好都合。折り合い面を考慮すると、格段に乗りやすくなるのではないかと思っています。
──折り合い面に不安がなくなれば、持ち前のスピードをいかんなく発揮できそうですね。
大西
そのとおりです。3歳牝馬ゆえ斤量面(54kg。古馬牡馬=58kg、古馬牝馬=56kg)も恵まれていますし、鞍上にクリストフ・ルメール騎手を迎えられたことも大きなプラスです。さらに、今回想定される展開もこの馬に向くと踏んでいます。
レースではボコボコになった内ラチ沿いを避けつつ、前が引っ張るハイペースを中団で追走。直線で外から一気に末脚を伸ばしてくるシーンが思い描けます。
──では一方で、伏兵候補として注目している馬がいましたら教えてください。
大西
非常に面白い存在と見ているのは、
ママコチャ
(牝7歳)です。
3年前のスプリンターズSの覇者ママコチャphoto by Kyodo News
──3年前の優勝馬ですが、ここ最近はややピークを過ぎた印象があります。ママコチャのどんなところに魅力を感じているのでしょうか。
大西
この馬は、前のペースが激しくなって展開がうまくハマれば、一気に突っ込んでくる脚を持っています。
そして何より大きいのは、鞍上を務める武豊騎手の存在。GⅠのスプリント戦ともなると、たとえ前半のペースが速いとわかっていても、騎手側もそのペースにつられて心理的に焦りが出やすく、馬のペースを乱してしまうケースが多々あります。しかし、武豊騎手なら、その心配はいりません。ハイペースに惑わされることなく、この馬自身のペースを保持し、最も理想的な走りのリズムを刻んでレースを運んでくれるはずです。
──名手ならではの冷静な判断と、展開を見極めた手綱さばきが光りそうですね。
大西
まさに、そこです。前の争いが激化する展開にあって、自分のリズムを徹底して守り抜くというのは、並のジョッキーではできない芸当です。ですが、武豊騎手なら、それが可能。ペースと先行勢の消耗度合いを見極めながら、直線の急坂で前が止まる瞬間を狙って、ゴール目前に上位に突っ込んでくるような乗り方をしてくれるでしょう。
ということで、スプリンターズSの「ヒモ穴」にはママコチャを指名。同馬の一発に期待したいと思います。
武藤大作●取材・構成text by Daisaku Mutoh
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