鞘師里保×小西桜子、“GLコミックスの金字塔”で気づいた「自分の恥ずかしい部分」の正体

『付き合ってあげてもいいかな』W主演の(写真左から)冴子役の鞘師里保とみわ役の小西桜子

鞘師里保×小西桜子、“GLコミックスの金字塔”で気づいた「自分の恥ずかしい部分」の正体

9月25日(金) 8:47

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国内累計閲覧数1億view超え、海外含め累計100万部突破、「GLコミックスの金字塔」との呼び声も高い『付き合ってあげてもいいかな』(小学館)が実写ドラマ化。9月10日よりMBSドラマ特区枠にて放送がスタートした。

W主演・鞘師里保と小西桜子、“付き合ったその後”の関係を描いた物語として難しい役柄を演じ切ったばかりの二人に、本作の見どころをはじめ、どのように役作りに向き合ったのかを聞いた。

恋愛の先にある、むきだしの人間ドラマ

――まず、今回のドラマの見どころを教えてください。

鞘師: 冴子とみわが付き合った後の関係を描いている作品です。人間関係が深まっていく段階での衝突や、お互いに「あげられるもの」と「あげられないもの」があるなかで、自分のエゴに気づく瞬間があります。それをどれだけ自分自身で認めてあげられるかという、二人の人間的な成長を見ていただきたいです。

小西: 恋愛作品ではあるのですが、それ以上にこの作品は「人間ドラマ」だと思っています。キラキラした楽しい部分だけではなく、自分の愚かさや、相手に求めてしまう「自分よがり」な様子まで、それを否定するわけでもなく、誠実に描いている物語だと思います。見てくださる方にはご自分の経験と重ねたり、心が動いたりと、ドラマを通していろいろな気持ちになっていただけたらと思います。

――脚本を最初にご覧になったときの第一印象はいかがでしたか。

鞘師: よく8話に集約できたなというのが率直な驚きでした(笑)。原作は二人の関係性の変化がすごく丁寧に描かれているので、私だったら絶対にここまで上手くエピソードを選んで再構築することはできません。原作の持つ生々しい感情の動きや、人間くさい部分が脚本にもギュッと凝縮されていて、一気に引き込まれました。

小西: 脚本の松ケ迫さんが、すごく愛のあるドラマ版として作ってくださいました。ギュッとまとめるということではなく、ドラマ版にさせていただける意義があると思いました。

激しい音楽、朝ごはん、役作りに試行錯誤

――今回、W主演を務められていますが、おたがいが初めて会ったときの印象や、撮影を重ねていく中での印象はいかがでしたか。

鞘師: 小西さんに初めてお会いしたとき、もちろん原作の通り私より身長が高いということは知っていましたが、まとっている柔らかい風のような雰囲気やたたずまいなど、お会いした瞬間に「みわだ!」と思ったのが第一印象です。みわとして一緒に作品を作り上げるイメージがパッと広がりました。

小西: まず、見た目もすごく素敵だなと思いましたが、今回、冴子というキャラクターが実写化できるのは鞘師さんあってなんじゃないかと思うぐらい、唯一無二の存在の方だなと思っています。表現者としてもたくさんの魅力を持っている方なので、今回一緒にお芝居できるのがすごく楽しみだなという気持ちでした。撮影が始まってからも、本当にたくさんコミュニケーションを取ってくれて、最後まで駆け抜けることができたのは、鞘師さんのおかげだと思っています。

――演じた役柄への印象や、役作りで意識したことを教えてください。

鞘師: 冴子はムードメーカーでみんなをキラッと引っ張るタイプですが、私自身はそういう役割に立つことがあまりなかったので、クランクインしてからエネルギーの出し方を模索していました。朝ごはんを食べるようにしたり、激しい音楽を聴いてから現場に向かったりという「物理的な方法」も試しましたね。でも冴子のエネルギーの根底には、弱さを明るさでごまかす面や、心配させないようにという優しさがある。そんないとしいキャラクターを、守ってあげたいという気持ちで全力で演じました。

小西: 冴子がみわに「もうちょっと器用にやれば」と思う様子に私も共感しつつも、それでも守りたくなってしまう、魅力がある子だなと思っていました。ただ、「本人はいたって真面目に頑張っている」という部分をどう演じるかを意識しました。

"溢れさせてはいけない"感情を抱えて

――今回のドラマは原作のある作品になりますが、原作がある作品ならではの違いはありましたか。

鞘師: 髪型やギターといった目印になる部分は冴子の形になるよう意識しつつ、人柄や人間性を咀嚼して「目指す姿」をはっきり決めて演じました。ただ、"真似"ではなく冴子の心に寄り添い、「このキャラクターと一緒に歩んでいくんだ」という気持ちを芯に置いていました。もし原作から外れていれば周りが教えてくれると信じて、自分の心の動きを信じる部分と、守るべき部分をすみ分けしていました。

――小西さんも原作を意識した部分、あえて意識しなかった部分はありますか。

小西: 台本や原作に丁寧に描かれている、みわの「いじらしさ」――恥ずかしさや自信のなさ――を表現することに集中して、見てくれる人にみわの雰囲気や「香り立つもの」を感じてもらえたら良いなと思いながら演じました。

「音楽の人」であるという意味で「同志」

――原作の良さを活かしながら、ドラマだからこそ伝わる「内面的な描写」を意識されているのを感じました。決して簡単ではなかったと思いますが、演じるうえで一番苦労した部分はどのような部分でしたか。

鞘師: 各シーンに入る前に気持ちをしっかり作っておかないと、そのときの気持ちのトーンをキープしつづけるのが難しかったことです。心の中にあるコップの水を、表面張力でずっとプルプルプルプルさせておかなきゃいけないという場面が多かったのですが、その水を「溢れさせなきゃいけない瞬間」をコントロールするのがとても大変で。おたがいに気持ちを送り合いながらやらせていただいたのですが、思わず感情の引き金を引きそうになるのを抑えることにとても苦労しました。

小西: 本人たちが自覚していないのに、性格の裏側みたいなところがどんどんほつれていくようなシーンもあるので、監督や鞘師さんとも相談しながら、一緒に作り上げていました。撮影は順撮りではないので、親密な場面を撮ったかと思えば、そこからケンカしている場面を撮ったりということもあって、感情表現が繊細な作品だからこその難しさがあったなと思います。

――鞘師さんは、演じる冴子について、ご自身との共通点を感じた部分はありましたか。

鞘師: 冴子は人に対して率直に思いを伝えるのが苦手な分、言葉にできない感情を音楽でフラットにしていると思います。実際ドラマの中でも、ライブでここが自分の居場所だと感情をぶつける描写もあって。私自身も、言葉で器用に思いを伝えられるタイプではなくて、気持ちを歌に乗せたりパフォーマンスをしたりすることが一番の救いであり、生きがいになっています。そういう意味で冴子とは私は同志だなと思いました。

言葉のない瞬間に、言葉の"裏側"を宿す

――小西さんは「あまり自分とは似ていない」と仰っていましたが、みわとの共通点を感じる部分もあったのでしょうか。

小西: はじめは似ていないと思っていたのですが、演じていると、みわの中にある「不器用さ」は、私の中にも本当はあったものだと気づかされた部分もありました。私は、自分の弱さや恥ずかしい部分を隠すようになってきたけれども、みわはそれがうまくできないだけなのかもしれないなと思ったんです。

そこで、自分の恥ずかしいと思っていた部分が少し肯定されたというか……。それがすごく自分にとって、いい出会いだったなと思います。

――作品の中では、ふたりの間にある距離感や気持ちのすれ違いが象徴的に描かれています。そのすれ違いに気づいているのが冴子ですが、みわとの間にある「心の距離感」をどう表現しようと意識されたのでしょうか。

鞘師: 原作を読んだとき、冴子は「カラッとしているけど目の奥がすごく寂しそうだな」と感じていました。みわに対して「寂しさを感じる」というか「距離が空いている」のを、冴子は自分の明るいポジティブな言葉で埋めようとしたり、見ないようにしたりすることでなんとか自分の心のバランスを取っているような気がしていて。私が原作を見て感じた冴子の「心の中」を表現するために、言葉がない瞬間であっても言葉の「裏側」を意識するようにして、表情で表現するように意識していましたね。

――一方のみわは、普段は口下手で流されがちな人物として描かれています。しかし意思を通す強さもある。その二面性については、どのように表現されましたか。

小西: きっと、明確に切り分けようとか、「こう見せよう」ということはしていないのに、「揺らぎ」や「不安定さ」のようなものがその時々で露出することで、結果的に、違った側面として出ているのかなと感じています。悪気がないからこそチャーミングで魅力的なんですよね。みわの一生懸命さに寄り添いながら、ただただ私も「一生懸命にやる」ということを根底に置いて表現していました。

「心の体重」を、誰かに預けること

――「付き合った後」の複雑な感情が描かれている今回のドラマ。鞘師さんは先ほど、主人公たちの人間的な成長も見どころとして触れられていましたが、ひと言でいうならばどのような成長があるのでしょうか。

鞘師: 誰かに少しずつ「心の体重」をかけていくところだと思います。冴子に関しては、誰かに甘えていくということを覚えていき、そして甘えた結果、いいことも悪いことも当たり前に起こるということを学んでいきます。それでも、人との絆をもっと強くしたいし、関係性を深めたいからチャレンジしたいと思えるようになる。そんな「甘える」ということを通した心の成長が見られると思っています。

――原作は海外でも人気です。今回のドラマは全世界への配信も決定しているということで、最後にそちらへの意気込みも聞かせてください。

鞘師: 発表した直後からいろいろな言語で反応をいただいていて、すごいスピード感だなと思いましたし、原作への反響の大きさも感じました。インスタでは「これはスペイン語かな?」と思うようなタグ付けをされたりもして、そうやって世界各地にリーチしている現状を見たときに、私たちが全力で向き合った作品が、とにかく皆さんに届いてほしいという気持ちになりました!

小西: 情報解禁時の反響は想像以上でした。国境を越えてたくさんの方に愛されている原作なので、ドラマもたくさんの方に見ていただけたら嬉しいです。

繊細な役柄をおたがいに演じるだけあって、人物像への「解像度」がとても高く、また人気ある原作をただ演じればいいだけではないという気概も感じられた。原作のファンにとっては、ドラマという世界で彼女たちが演じる冴子とみわの運命がどのように重なっていくのか、またどのように異なる運命を辿っていくのか、目が離せないところだ。

もちろん、原作を知らない人にとっても、冴子とみわの姿に共感する場面がたくさんあることだろう。役柄を通して「自分の気持ちと向き合った」と何度も語ってくれた彼女たちだが、きっと私たちも、そんな彼女たちが演じる冴子やみわの姿を通して、「忘れかけていた気持ち」にもう一度気づかせてもらえるのではないか。そんな気がしてならない。

【鞘師里保(さやし・りほ)】
1998年、広島県生まれ。2011年にモーニング娘。9期メンバーとしてデビューし、絶対的エースとして活躍。2015年に卒業後、NYへダンス留学を経て芸能活動を再開。ソロアーティスト・俳優として幅広く活躍し、2025年よりavex traxからメジャーデビュー。Instagram:@riho_sayashi_insta、X:@sayashi_staff

【小西桜子(こにし・さくらこ)】
1998年、埼玉県生まれ。2019年、三池崇史監督作品『初恋』にて約3,000人のオーディションからヒロインに抜擢され、カンヌ国際映画祭にも参加。近年の出演作に、映画「2126年、海の星を探して」(11月13日全国公開)、ドラマ「まどか26歳、研修医やってます!」(25年TBS)、「サレタ側の復讐〜同盟を結んだ妻たち〜」(26年テレ東)など。Instagram:@sakurako_kns、X:@sakurako_kns

<取材・文/綿谷 翔、撮影/荒熊流星、スタイリング(鞘師里保)/藤本大輔(tas)、ヘアメイク(鞘師里保)/本岡明浩、スタイリング(小西桜子)/小笠原ヨシエ、ヘアメイク(小西桜子)/三宅茜、衣装協力(小西桜子)/OpéraSPORT、YOSTER(EMME CO., Ltd☎03-6419-7712)、HORIZON (info@horizon-jewellery-official.com)、MAISON D’PULSE(MAISON D’PULSE カスタマーサービスhello@maisondpulse.com)、YELLO(☎03-6804-8415)>

【綿谷 翔】
東京大学卒業後、出版社にて多数のベストセラーを担当し独立。書籍編集、著者プロデュース業のほか、アイドルを中心としたエンタメ記事などを担当。認定専門公認心理師としても活動し、とくに離婚、DV、虐待、モラハラなどに関連した家族・夫婦のカウンセリングや犯罪被害者の支援を行う。X:@mellowamber

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