アジア大会・競泳ニッポン総括の後編は、200mと400ⅿの男子個人メドレーで優勝を争った21歳・松下知之(スウィン宇都宮/東洋大)と17歳・小島夢貴(豊川高)のふたりに注目。ライバルが互いを高め合う姿を紐解いていく。
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【「絶対に見返してやろう」】「この経験を、ただ悔しいだけで終わらせないことが、今の自分にできることだと思うので、『絶対に見返してやろう』という気持ちで頑張りたいと思います」
こう話したのは、松下知之(スウィン宇都宮/東洋大)。現在開催中のアジア大会の競泳競技で200m個人メドレーを制したあと、2冠を目指していた400m個人メドレーで17歳の小島夢貴(豊川高)に敗れての発言だった。
パリ五輪以降、日本の競泳界をリードしている松下知之(左)と急成長中の小島夢貴(右)photo by Kyodo News
松下は、2024年パリ五輪の日本競泳陣で唯一のメダルとなる銀メダルを獲得し、アジア大会直前の9月3日の日本インカレでは、400m個人メドレーで萩野公介の日本記録を0秒22更新する、世界歴代4位の4分05秒83を出した。その400m個人メドレーでは、順位だけでなく記録も狙う意欲を持ってアジア大会に臨んでいた。
しかし、「200mまでは予定どおりだと感じていましたが、平泳ぎの25mを過ぎたあたりから、手とキックのタイミングがズレているのを感じていました。気持ちとしては前に進もうと思っていたのですが、それがリズムのズレに繋がってしまいました」と、ペースを落とす。それを追いかけて接戦を制したのが小島だった。
小島も400mのレース後、松下を意識していたことを明かした。
「200mでは(松下に)競り負けていたので、勝ちきるレースができたのはよかったです」
一方、400m個人メドレーの2日前に行なわれた200m個人メドレーでは、松下が自己新記録で優勝し、小島は2位という結果だった。
「175mで松下さんの前にいた時には、勝ったと思ってうれしかったですが、ラスト5mは少し力んだことで、泳ぎが一気に変わってしまうミスをしました。タイムは本当にうれしかったですが、今回の僅差なら勝ちたかったです」(小島)
松下は200mが終わったあとに、接戦を演じたレースをこう振り返っていた。
「ずっと瀬戸大也さんなど、上の年代の方を追う気楽なチャレンジャーとしてやっていましたが、追われる立場になったことは、今までとはまた違った刺激になるので、すごく楽しかったです」
お互いに調子を上げてアジア大会に臨み、200mと400mともに優勝したい気持ちがあったからこそ、悔しさが生まれ、互いを"ライバル"として認識する大会となった。
【17歳の躍進】東京出身の小島は「世界で戦うために」と決意して愛知県の強豪・豊川高に進んだ。そして、昨年の世界ジュニア200m個人メドレーでは2位ながら、萩野公介が2012年ロンドン五輪で出した高校記録を0秒03更新する1分57秒32をマーク。さらに、今年3月の日本選手権では1分56秒53と記録を更新し、400mでも萩野のロンドン銅メダルの記録を0秒10更新する高校新を樹立して、一気に進化している。
その後、シニア初代表だった8月のパンパシフィック選手権では、200m背泳ぎでは日本歴代3位の1分55秒38で優勝したものの、本命の個人メドレーは200mが4位で、400mはA決勝に進めずBで2位。結果を出せなかった悔しさを晴らすべく臨んだのがアジア大会だった。
そんな小島の台頭について、松下はこう話す。
「非常に力のある選手だし、もっと記録を狙ってくる選手。自分ももちろん小島選手を意識しながらも、常に上の世界を見て、それに小島選手がついてくるという立ち位置でありたいと思います。ただ、トントン拍子では面白くないですし、こういう経験(400mで敗れる)は、いい意味で伸びた鼻を折ってもらえたというか......。もう一度、地に足をつけて地道なトレーニングに向かうことができるので、オリンピックに向けては絶対にこのレースがあったからこそ、と言えるようにしたいです」
かつて、男子個人メドレーでは、萩野公介と瀬戸大也が互いに世界大会で金メダルを獲得し、意識を高め合いながら、ともに他種目にも挑戦して、日本競泳男子のレベルを引きあげてきた。
それと同じように、今後の活躍に期待がかかる21歳の松下と、2種目の世界記録保持者のレオン・マルシャン(フランス)が「驚くべき成長スピード」と認める17歳の小島ライバル関係は、これからの日本競泳に活力を与えてくれるはずだ。
折山淑美●取材・文text by Toshimi Oriyama
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