愛知・名古屋で開催されている「第20回アジア競技大会」。9月27日に開幕する男子バレーボールでは、前回大会(2023年の中国・杭州大会)で銅メダルを獲得した日本代表が、2010年大会以来の金メダルを狙う。
9月13日まで、ロサンゼルス五輪の出場権をかけたアジア選手権大会が開催されていたため、今大会には次世代を担う若手を中心としたチームで臨む。石川祐希、髙橋藍ら主力が不在とはいえ、ロラン・ティリ監督が指揮を執り、大塚達宣、西本圭吾らアジア選手権で出番の少なかった選手も合流。32年ぶりの自国開催ということもあって、金メダルを本気で狙うチーム編成となっている。
そのなかで注目したいのが、アウトサイドヒッターの後藤陸翔である。東京グレートベアーズで、レギュラーとして活躍する25歳だ。若手中心の日本代表を率いてきた真保綱一郎監督から、「このチームの中心になってほしい」と期待を寄せられている選手だ。
東京グレートベアーズの主力、後藤陸翔が今後の代表定着に向けた正念場を迎える
「昨シーズンのSVリーグで、自分の課題であるストレートコースのスパイクの決定力を上げるのが目標でした。今年度の代表合宿でも、そこに力を入れて練習してきました。ティリ監督からも、ライン際に打つテクニックが重要だと言われています。親善試合などでストレートコースに打つ割合を増やせたことで、手ごたえをつかめました。自分に求められているのは守備力だと思いますが、もっと攻撃でチームに貢献したい」
後藤の日本代表に対する思いは熱い。
内定選手として活動した2023-24シーズンはレギュラーで試合に出場し、存在感を示したものの、日本代表に選出されることはなかった。東京グレートベアーズの主将、古賀太一郎は当時の後藤の姿をこう証言する。
「同じ年齢の髙橋藍が日本代表で活躍していたので、刺激を受けたのでしょう。リーグが終わったあとの夏場などは、間違いなくチームで一番練習していました」
後藤自身も「日本代表に選ばれなかった悔しさが、オフ期間の練習のモチベーションになった」とのちに振り返っている。
【ネーションズリーグで味わった悔しさ】そして2025年、初めて日本代表でプレーした。
バレーボールネーションズリーグでは第二週のブルガリア・ラウンドに帯同し、スロベニア戦で途中交代。代表初出場を果たした。
しかし相手の強いサーブに崩され、2本連続でサービスエースを取られて失点。すぐに交代を告げられてベンチに下がる、ほろ苦い代表デビューとなった。
「絶対に結果を残すぞという強い気持ちでコートに入りましたけど、現実は思い描いていたようにはいきませんでした。あの場面での"結果"が自分の実力。そこから目をそらさないように、と思いました。しっかりと受け止めるには時間がかかりましたけど......」
東京グレートベアーズでは、守備的なアウトサイドヒッターとして活躍。もとよりディフェンスの評価は高かった。そのスロベニア戦を配信で見守った古賀は「僕ら(チームメート)も後藤自身も、もっとできると思っていたはず」と、後藤の心境に思いを馳せたが、それだけに本人が受けたショックは大きかったことだろう。
そんなとき、真っ先に声をかけてくれたのが、同じアウトサイドヒッターの大塚達宣(パワーバレー・ミラノ)だったという。後藤が振り返る。
「僕がデビュー戦でよくないパフォーマンスをしたとき、その日の夜、すぐに声をかけてくれて『俺もデビュー戦はこんな風だったよ』って、フランクに話をしてくれました。普段からたくさん話をしてくれて、遠征先での練習後にカフェへ行ったり、散歩したりして、たくさん会話をしてくれましたね」
大塚には海外でプレーすることの意義や、バレーボールへの取り組み方なども聞いた。自身への悔しさや先輩の優しさを感じるなど、「刺激になることばかりでした」と後藤は当時を回想する。
「時間をかけて現実を受け止めつつ、次へのバネにしていこうと思いました。あのときのプレーが自分の実力だと認めるしかありませんが、それを覆していくためにも、結果を残すしかないと感じています」
【アジア大会での出来が今後を左右する】昨年はSVリーグ開幕までの間、全体練習以外の時間のほとんどサーブレシーブを受ける練習に費やし、守備力を磨いてきた。
今回のアジア競技大会では、昨年、刺激を受けたという大塚と同じ代表チームで戦うこととなる。アジア選手権ではメンバーから外れたものの、やはりオリンピックを目指す甲斐優斗など、同じポジションを争う選手は多いが、そのなかで後藤がどう存在感をアピールするのかも、今大会のひとつの見どころだ。
「常にA代表に入りたい」と後藤は言い切る。
アジア競技大会での活躍が、日本の勝敗の鍵を握ること、そして今後の代表活動につながることは彼自身もわかっている。
まずは27日の開幕戦で幸先のよいスタートを切れるかどうか。注目したい。
取材・文●市川忍text by Shinobu Ichikawa
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