令和のいま観てもお洒落が大渋滞――約40年前の「高橋幸宏ジャパンツアー」で味わう、YMO散開直後の洗練された色気と美学

「高橋幸宏ジャパンツアー1985」/(C)PONY CANYON INC.

令和のいま観てもお洒落が大渋滞――約40年前の「高橋幸宏ジャパンツアー」で味わう、YMO散開直後の洗練された色気と美学

9月24日(木) 18:00

「高橋幸宏ジャパンツアー1985」
【動画】高橋幸宏の貴重なライブ映像2作品…「高橋幸宏セレクション」PV

細野晴臣、高橋幸宏、坂本龍一からなる伝説のバンド・YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)のドラマーとして音楽ファンを激震させ、名曲「ライディーン」を手掛けた音楽家・高橋幸宏。彼のソロアーティストとしての圧倒的な美学とライブパフォーマンスが詰まった貴重なライブアーカイブ映像「高橋幸宏セレクション」が、9月27日(日)夜8時30分より、CSホームドラマチャンネルにて2番組連続でテレビ初放送される。

これを記念して、今回放送される、YMO“散開”後にソロ活動を本格化させた1985年&1986年の「ジャパンツアー」の映像を基に改めて音楽家・高橋幸宏の魅力を紐解きたい。

■約40年の時を経たいま観ても唯一無二の“お洒落”さに酔いしれる

時代やトレンドがどれほど移り変わろうとも、画面に映し出される彼のステージは洗練された“お洒落さ”が漂いまくっている。なぜ彼のステージはこれほどまでに色あせず、約40年の時を経た令和のいま観てもラグジュアリーな心地良さ、そして唯一無二の個性を感じさせるのだろうか。

高橋幸宏という人物は、優れたミュージシャンであると同時に、自身のブランドを手掛ける本物のファッションデザイナーでもあった。当時のロックシーンといえば、長髪にTシャツで汗を流すスタイルが主流だった時代。その中で、YMO時代から仕立ての良いモダンなスーツを身に纏い、都会的なアンニュイさを漂わせながらステージに立つ彼のファッショナブルな佇まいは、まさに異彩を放っていた。

「ジャパンツアー1985」では、柄シャツに光沢があるジャケット、そしてキラキラと輝く大粒のブローチが散りばめられた衣装を身に纏っていた高橋。一方で、「ジャパンツアー1986YT」では、金色に輝くスタッズがあしらわれた柄シャツ、そして衣装チェンジをしてワイシャツにネクタイ、オーバーサイズのスーツジャケットというファッションセンスに溢れる衣装だった。

■視覚も聴覚も魅了する、お洒落が大渋滞したステージ演出

だが、そのお洒落さは決して衣装だけではない。ステージの構成と演出自体もシンプルながら洗練されているのだ。ライティングはもちろん、洋画のような映像との融合、そしてサックス奏者をはじめとした楽器陣の衣装や配置もどこか非現実的で不思議な雰囲気が漂う。

また、そもそも楽曲自体が海外のカフェなどお洒落な空間で流れていそうな心地よく揺蕩うような中毒サウンド。そして、昭和らしいテクノポップ感との融合もたまらない。そこに男性にしては少し高くて優しく柔らかい高橋の歌声が乗るのだから、もはやお洒落が大渋滞した状態だ。

ちなみに1985年のライブ映像では、「詞は坂本龍一の奥さん(※当時)の矢野顕子という人が書いてくれました」という粋な前口上から始まる楽曲「仕事を終えたぼくたちは」が個人的には最も印象に残っている。まさに就業後に恋人と会う、高揚感とロマンチックが詰め込まれたようなサウンド。だが、歌詞はその当時を失恋したいま振り返るという切ないもので、明るいサウンドとのミスマッチさがより心を深く揺らす。そして楽曲にアウトロはなく、ぶつ切りのような感じで終わるのもまた、恋が突然終わるようで哀愁漂う美しさの余韻がある。

音楽とファッションを完璧な高次元で融合させたそのセンスは、いまなおSNSやZ世代の間でも起こっている“昭和レトロ・シティポップブーム”の原点であり、間違いなく最高峰のアイコンと言えるのではないだろうか。

■ソロだからこそ際立つフロントマンとしての色気

YMO時代の高橋といえば、精密機械のように正確で泰然としたドラミングが印象深い。しかし、今回の「ジャパンツアー」で目撃できるのは、ドラムセットを離れ、ギターを抱えてフロントでマイクを握るソロアーティストとしての色気だ。

仕立ての美しい衣装に身を包み、ギターを奏でながら少し甘く物憂げなボーカルを響かせる姿は、どこを切り取っても絵になる。都会的で品のあるメロディと、どこか哀愁を帯びた歌声。ドラマーとして培われた圧倒的なテンポ感としなやかな立ち姿が合わさり、フロントマンとしてのカリスマ性が爆発している。

YMOの「凄腕ドラマー」というパブリックイメージしか持っていない人が観たら、そのギャップと洗練された佇まいに間違いなくノックアウトされるだろう。

■都会的な美学とダンディズム…時代を超えた“タイムレスなライブ体験”

1985〜6年というバブル前夜の日本。熱気と都会的なアバンギャルドさが交錯していた当時の空気感を真空パックしつつも、決して古臭さを感じさせないのは、彼の音楽とみせ方に“一切の無駄がない”からではないだろうか。ある意味、ミニマリストの元祖と言えるのかもしれない。メンバー紹介以外では、ほぼMCもなしというスタイル。聴覚は音楽だけ、それもまた彼のカリスマ性に一役買っているように感じてしまう。

ステージ上のライティング、グルーヴが心地良いバンドサウンド、そして彼の洗練されたポージングとファッション。すべてが徹底された美学のもとに構築されていて、ただの“過去のライブ映像”という枠を超え、まるで美術館に行ったかのような錯覚に陥る。そんな満足感だ。

「本当にこれが約40年前の映像なのか?」という衝撃とともに、日本のエンターテインメント界にこれほどスマートで粋な大人がいたという事実に胸が熱くなる。音楽ファンはもちろん、ファッションやアート、エモいレトロカルチャーが好きなすべての人類に観てほしい、一生モノのライブ映像だ。

構成・文=戸塚安友奈

■「高橋幸宏ジャパンツアー1985」セットリスト

「遥かなる想い」
「冬のシルエット」
「Providence(素晴らしき幻想)」
「仕事を終えたぼくたちは」
「今日の空」
「SAILOR」

■「高橋幸宏ジャパンツアー1986YT」セットリスト

「Episode 87」
「LIFE LIKE A RIVER」
「CAMP」
「夢からさめたら…(天使がそこにいた)」
「MOONLIGHT FEELS RIGHT」
「SOLUTION」
「Providence」
「STAY CLOSE」
「WEEKEND」
「今日の空」



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