9回目の開催となった「なら国際映画祭2026」のクロージングセレモニーが9月23日あり、「なら国際映画祭」の最高賞にあたる「インターナショナルコンペティション」の「ゴールデンSHIKA賞」は、ロシア出身のナスティア・コルキア監督の「ショート・サマー」が受賞した。
コンペティション部門には、世界81の国と地域から1,438作品が寄せられた。インターナショナルコンペティションの「ゴールデンSHIKA賞に輝いた「ショート・サマー」のナスティア・コルキア監督は、ロシア出身。本作について、「戦争と恐れがどのように日常へと静かに侵入し、子供の世界を形作っていったのかを示す試み」と語る。現在はドイツとフランスを拠点に活動しておえり、ベネチア国際映画祭でプレミア上映された時には、ロシアに住む家族を案じながらも、「声に出して真実を伝えることが大事だ」と決意を固めたという。
授賞式では、「受賞するとは思ってもいませんでした。まずはこの賞を授けてくださった審査員の皆様、そしてこの映画を選出してくださった選考委員会の皆様に、心より感謝申し上げます。この映画を携えて、世界中の映画祭の舞台に立つたびに、私にとって常に重要なのは、ウクライナでの戦争の日々が今も続いているという事実を心に留めておくことです。ウクライナとロシアの全面戦争が始まった2022年2月24日から、今日(2026年9月23日)で1,673日目です。平和を祈り、平和のために闘い、この戦争を終わらせることが極めて重要です。この映画を理解し、受け止めてくださったことに深く感謝いたします。受賞したことは、私にとって大きな意味を持ちますし、この瞬間はこれからもずっと、心に深く刻まれる大切なものとなるでしょう。本当にありがとうございました」と、感謝の気持ちを述べた。
審査員長のオルガ・キュリレンコも、「私たち一人ひとりがそれぞれに異なる存在であることは、とても美しいことだと思います。互いに争うのではなく、その違いを受け入れ、祝福し合うべきではないでしょうか。とりわけ今は、世界がより深い理解や思いやり、そして愛を必要としている時代なのですから、戦いではなく、その違いを、私たちがみんな受け入れるべきです。みんな共に愛し合い、歩んでいきましょう」と語ると、会場からは賛同の大きな拍手が起こった。
「観客賞」は、ナタリア・ウヴァロワ監督の「マリカ」が受賞した。ロシア出身のウヴァロワ監督は、カザフスタンを拠点に活動していて、本作もカザフスタンで撮影された。イスラム教を信仰するイングーシ人のコミュニティーを取り上げている。授賞式では、「とても驚いています」と受賞の喜びに涙をこらえきれず、「なら国際映画祭、ありがとうございます。審査員の皆さん、ありがとうございます。観客の皆さん、ありがとうございました」と感謝の言葉を重ねた。喜びで言葉を詰まらせる姿に、会場からは温かな拍手が送られた。
「審査員特別賞」は、メルヌーシュ・アリア監督の「1001フレーム」が受賞した。本作は、フィクションにドキュメンタリーを織り交ぜた実験的な作品だ。イランで育ったアリア監督は、女性たちに課せられた制度的な制限や、それがもたらす息苦しい重圧を目の当たりにしてきた。その経験を踏まえ、「本作では、イランのみならずアメリカに至るまで、国境を越えて、こうした虐待がいかに“当たり前”とされてきたかを露わにした」と語っている。授賞式では「イランは西側諸国に対して閉ざされた環境にありましたが、私は日本の映画やテレビドラマに親しんで育ちました。「おしん」や「北の国から」といった作品を見ていたのです。ですから、こうして日本に来られたことは本当に素晴らしい体験ですし、まるで遠い親戚を訪ねてきたような温かい気持ちです。本当にありがとうございました」と感謝の気持ちを語った。
学生が手掛けた映画・映像作品を対象にしたコンペティション「NARA-wave 学生映画コンペティション」の最優秀賞「ゴールデンKOJIKA賞」には、マックス・コラー監督による「ランニング・エランズ」が選ばれた。「観客賞」は、「null」(監督:中村彰太郎)が受賞した。
10代の若者たち自身が映画を鑑賞し、審査する「ユース審査員」プログラムだ。最優秀作品に贈られる「Crystal SHIKA賞 長編部門」には、「ザ・ライツ、ゼイ・フォール」(監督:サシャ・ヴァイダ)が選ばれた。「Crystal SHIKA賞 短編部門」は、「スピーディ!」(監督:ジイン・オ)、「審査員特別賞」は、「アン・ルート:~にいたるまで」(監督:ユ・ジェイン)が受賞した。
最後に、エグゼクティブディレクターを務める河瀨直美監督が「『ゴールデンSHIKA賞』を受賞されたナスティアさんは、ロシア出身。審査員長のオルガさんは、ウクライナ出身。この姿を見ていた時に、彼女たちが言った言葉が、今この世界中に届けばいいのになって願いました。国と国の争い、戦争、そういったものがどれだけその未来を暗くしていくのかということを、私たちは知っているはずです。1945年、第二次世界大戦が終わったその数日前に、原爆が投下されました。日本は唯一の原爆被爆国です。でも、人は忘れてしまう。忘れることはいいことかもしれない。未来を歩いていかなきゃいけないから。忘れていいことと、忘れたらあかんことと、忘れなきゃいけないことがあると思います」と、総括した。
▼総評 全文
<インターナショナルコンペティション 審査員長>
オルガ・キュリレンコ(俳優)
この数日間で様々な国や言語、文化に触れる中で、私は世界を改めて発見したような思いです。深く心を動かされ、誰もが抱くような強い感情を味わいました。今回のなら国際映画祭を後にする今、目にしてきた数々の映画によって、心が豊かに満たされたと感じています。人々が実に多様な方法で物語を語り、人生のありようを見せてくれることは素晴らしいと本当に心から思っています。そして、私たち一人ひとりがそれぞれに異なる存在であることは、とても美しいことだと思います。互いに争うのではなく、その違いを受け入れ、祝福し合うべきではないでしょうか。とりわけ今は、世界がより深い理解や思いやり、そして愛を必要としている時代なのですから、戦いではなく、その違いを、私たちがみんな受け入れるべきです。みんな共に愛し合い、歩んでいきましょう。すべての人に愛を込めて。
<「なら国際映画祭」エグゼクティブディレクター>
河瀨直美(映画作家)
「ゴールデンSHIKA賞」を受賞されたナスティアさんは、ロシア出身。審査員長のオルガさんは、ウクライナ出身。この姿を見ていた時に、彼女たちが言った言葉が、今この世界中に届けばいいのになって願いました。国と国の争い、戦争、そういったものがどれだけその未来を暗くしていくのかということを、私たち日本人は知っているはずです。1945年、第二次世界大戦が終わったその数日前に、原爆が投下されました。日本は唯一の原爆被爆国です。でも、人は忘れてしまう。忘れることはいいことかもしれない。未来を歩いていかなきゃいけないから。忘れていいことと、忘れたらあかんことと、忘れなきゃいけないことがあると思います。この「なら国際映画祭」は、再来年、第10回を迎えます。あー、よくここまでやってきたなと!30代でした、私。でも2年後、還暦になっちゃう。ずっと永遠に私は生きられるわけではなく、そして誰かがそれを継承してもらわなければ、大仏様のように千年に続く映画祭にはなりません。だから、映画祭でも、会社でも、学校でも、国でも、誰か一人のためのものであってはいけないんです。全ての人たちが、この映画祭を自分事として楽しんでいただき、そしてまた帰ってきたいと思う場所でありますように。私たちは、ここにいます。今回の第9回なら国際映画祭、本当に皆さまのおかげで、とても温かく、そして意味のあるクロージングを迎えることができました。また第10回なら国際映画祭でお会いできると幸いです。ありがとう。
【作品情報】
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おしん
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