現役医学生の女性が「人生に希望が持てなかった」ワケ。「東大理Ⅰと同等かそれ以上じゃないと…」父の呪縛に苦しんだ過去

自殺ミス医さん

現役医学生の女性が「人生に希望が持てなかった」ワケ。「東大理Ⅰと同等かそれ以上じゃないと…」父の呪縛に苦しんだ過去

9月22日(火) 8:53

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不謹慎ながら、「これほど短い文字数で自らの半生を言い表すことができるなんて」と驚いた。自殺ミス医さん(@notes524)、現役の医学生だ。希死念慮にかられた過去から一転、患者の生命を救う人間になりたいと思った経緯について、本人を直撃した。

どこか変わっていた両親

――単刀直入に、人生に希望が持てなくなったきっかけを教えてください。

ミス医: 私は父が医師、母が専業主婦という家庭で育ちました。両親ともにどこか変わっていて、普段は和気あいあいとしているのに、スイッチが入ると極端な行動に出ることがある人たちでした。

父は必ずしも学習環境のよくないところから、かなり遠回りをして旧帝大医学部に合格した苦労人です。母はヒステリックなところがあり、小学生時代に「習い事に行きたくない」と言った私を駅のホームから首を掴んで突き落とす素振りを見せたりするような人でした。

人生に希望が持てなくなったきっかけは、直接的には学業を頑張っても見通しがたたないことに絶望したからだと思います。しかし、そうした家庭環境がまったく影響しなかったかといえば、していたと思います。

部活には入らず、毎日4〜5時間勉強

――お母様は常識からやや外れた人だった。

ミス医: 私が高3のとき、未遂を起こします。救急車で運ばれる騒動を起こして、バレてしまったんですよね。それ以降、母の態度は軟化したように思いますが、それでもおかしな言動はあります。たとえば、私が小学校低学年くらいから「父に別の女がいるのではないか」という趣旨のことを言い始めました。しかしそんな事実はありません。

あるとき、親戚の法事に参加した父から現地の写真が送られてきたのですが、母は「ひとりでこんな場所に行くはずがないから、きっと女のところに行ったんだ」「たぶんその女はマフィアの手下に違いない」などと言い始めました。

――お父様についてはどうですか。

ミス医: 非常に厳格な人だと思います。神経質であり、自身の経験から「子どもに遠回りをさせないように」と教育に力を注いでくれました。入学した学校は、クラスに5人くらいは医学部へ進学するような、そこそこの進学校です。ただ合理主義者でもあるため、「そんな時間はあるの?」と部活動に参加することには理解を示してもらえませんでした。だから中高の6年間、帰宅部で過ごしました。

――かなり勉強時間を多く取った。

ミス医: 学校がある日でも、4〜5時間は勉強していたと思います。試験前は8〜9時間くらいでしょうか。

なぜ医学部に進学したのか

――ご自身の進路を考えるうえで、お父様の価値観から影響を受けていると感じますか。

ミス医: 多少はあると思います。たとえば父は、「東大理Ⅰと同等かそれ以上じゃないと、『高学歴』とは呼べないと思う」と事あるごとに言っていました。私は進路を決めるにあたって、医学のほかに哲学にも関心がありました。しかし哲学科でそこまで高い偏差値の学部はありません。医学部に進学することは、ごく自然な成り行きだったと思います。

――具体的に未遂事件を起こすのは高2ですが、その兆候はそれより前からあった。

ミス医: ありました。中2から摂食障害になり、心療内科にも通院していました。ひどいときは1日に600キロカロリーくらいしか摂取できず、どんどん痩せていきました。また自傷行為もあって、それは学校にも家庭にもバレています。

――ストレートで医学部に行かず、浪人も経験しています。

ミス医: はい。浪人時代の私は、学業がうまくいかないことによる精神的な落ち込みがひどく、周囲から見ても「仮に医学部に受かっても医師を続けていけないだろう」という部類だったと思います。

進学を契機に人生が明るくなった

――現在は、非常に溌剌としていますよね。どうしてだと思いますか。

ミス医: 大きく2つあります。1つは、医学部に合格するという、自分のなかでの基準をクリアしたことです。これまで学業不振が悩みの種ではありましたが、それがなくなりました。

もう1つは、進学にともなって両親と離れたことだと思います。これまでは部活動もせず、ずっと両親とともに暮らしてきましたが、医学部入学とともに人とのつながりも増えました。人生が明るい方向へいったのかもしれません。

――もともとのお顔立ちも華やかですよね。

ミス医: ありがたいことに、20歳を過ぎてから、あるコンテストでグランプリをいただく経験をしました。ただ、思い返すと、中学時代から現在まで、友人に対して家庭の話をしたことはほとんどないと思います。

現在、大学ではどちらかといえば目立つグループに所属しています。だから誰も私が育ってきた環境が先ほどお話したようなものだと想像していないと思います。そしてこれからも、それを公にはしないでしょう。

結婚に対する「怖さ」はないが…

――将来はどんな医師になりたいですか。

ミス医: 候補のひとつとして、精神科も検討しています。ただ、自身の経験から、「それでいいのだろうか」と思うことはあります。あくまで私の場合ですが、私は医療に助けられたというよりも、環境が変わったことによって気持ちが楽になっていきました。もしも将来的に心療内科に勤務したとして、患者さんの人生を私に背負い切れるのか、今はまだ自信がありません。

――ご自身の家庭環境におけるトラウマから、さらにその先の将来で結婚を描けないという人もいます。

ミス医: 確かに、帰省するたびに父は「あの人(母親)と結婚したことが、人生で最大の失敗」と言っています。ただ、私の場合は今のところ、結婚に対する怖さはありません。むしろ、現在交際している人と、研修になるタイミングで結ばれたらいいなと思っています。もちろん、将来的に子どもを授かることができたとして、母のような過干渉でヒステリックな人間にならないとも限りません。親子といえど人間関係ですから、関係性に甘えが出れば、私もそっちに行ってしまうと自戒する日々です。

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一般に社会的ステータスが高いとされる人々の苦悩は見えづらい。“ケアする側の悲しみ”は人知れず深まり、誰にも認識されずに本人の心のなかにとどまり続ける。

<取材・文/黒島暁生>

【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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