【アジア大会】金近廉が日本代表として描いた「恋する放物線」男子バスケ64年ぶりの銀メダル獲得に見せた悔しさの真意とは

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【アジア大会】金近廉が日本代表として描いた「恋する放物線」男子バスケ64年ぶりの銀メダル獲得に見せた悔しさの真意とは

9月22日(火) 16:30

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アジア大会男子バスケットで64年ぶりの銀メダル獲得に貢献した金近廉photo by Yoshio Kato

アジア大会男子バスケットで64年ぶりの銀メダル獲得に貢献した金近廉photo by Yoshio Kato





【悔しさの向こう側にある高い目標】「本当に優勝を目指していたので、悔しいっていう気持ちが一番最初に出てきました」

試合終了から約1時間後に行なわれたメダルセレモニー。多くの選手が終了直後の悔しさを胸にしまい込み、穏やかな達成感に浸りながら仲間と健闘を称え合うなか、金近廉の表情からは、悔しさが消えることはなかった。

9月20日、愛知・名古屋アジア競技大会の男子バスケットボール決勝。日本は57-67で韓国に敗れ、1962年ジャカルタ大会以来、64年ぶりとなる銀メダルを獲得した。歴史的な結果であることに変わりはない。それでも、金近が最初に口にしたのは、大会史上初の金メダル獲得を逃した「悔しさ」だった。

「この負けを忘れないようにしたい」

それだけ、この大会に懸けていた。

ワールドカップ本戦(来年夏・カタール開催)出場をかけたアジア地区予選を戦っている日本代表には、国内外でプレーするトップレベルの選手が集まる。この夏にはNBAで先発クラスの力を持つ八村塁、NBA挑戦3年目を迎える河村勇輝も合流。8月末に行なわれた同予選Window4では、サウジアラビア、カタールを相手に世界基準の強さを見せ、圧倒した。

その代表に名を連ね、世界のコートで戦う。

平均年齢25.1歳、若手中心の編成となった今回のアジア大会代表には、そんな思いを持つ選手が少なくなかった。実力的にはトップチームに続く位置にいる選手たちだけに、ここで結果を残し、上の舞台に食い込みたい。その思いは、金近も同じだった。

もっとも、金近は今年になって突然、その競争に加わったわけではない。

19歳だった2023年2月、ワールドカップ・アジア予選のイラン戦で代表デビューを果たすと、6本の3ポイントを含む20得点を記録。鮮烈な第一歩だった。

1試合のインパクトだけで代表での居場所を確立できるわけではない。その後、さらなる成長を求めて、高さを備えたウイングプレーヤーになるべく東海大を辞め、20歳で千葉ジェッツに加入。Bリーグで経験を積みながら、代表合宿でも競争を続けてきた。197cmの長身から放つアウトサイドシュートはきれいな弧を描く。そのシュートは、千葉ジェッツでプレーするなかで「恋する放物線」と称されるようになった。

周囲の期待が大きかったからこそ、厳しい目を向けられることもあった。一方で、本人の中には「少しずつ成長している」という実感もあった。

そうしたなかで迎えた2026年。2月末からのワールドカップ・アジア予選Window2では、ホームでの中国戦と韓国戦に出場した。ただ、2試合合わせて8分43秒のプレータイムで3得点。7月のWindow3では中国、韓国とのアウェー2連戦に帯同したものの、出場は韓国戦の1分24秒にとどまった。

代表に呼ばれていないわけではない。だが、戦力として十分にコートに立てているわけでもない。

金近はその状況を打開し、代表での立場を変えようとしていた。

7月にはアジア大会代表に選出された。8月に佐賀で行なわれたアジア大会代表チームが初めて臨んだ国際試合、モンゴル戦を腰のケガで欠場したが、コンディションを整えて本番に間に合わせた。

【求められたスコアラーとしての役割を果たす】 金近廉の挑戦は来るBプレミア、その先にある日本代表へと続いていくphoto by Yoshio Kato

金近廉の挑戦は来るBプレミア、その先にある日本代表へと続いていくphoto by Yoshio Kato



そこで待っていたのは、これまでの代表とは違う立ち位置だった。

吉本泰輔ヘッドコーチから求められたのは、「よりアグレッシブに点を取ってきてほしい」という役割。その期待と信頼は、各ハーフでのオープニングオフェンスで金近のシュートを起点とするセットが、繰り返し用意されたことにも表れている。

「毎試合、コーチが僕のところでプレーを始めてくれるので、そこがすごく自信にもつながりました」

ただ、最初からその期待に応え続けられたわけではない。

初戦のインドネシア戦では、フィールドゴール10本中5本成功、3ポイント4本を含む15得点をマークした。だが、続くサウジアラビア戦は3得点、グループステージの韓国戦は9得点、準々決勝のチャイニーズ・タイペイ戦は8得点。3試合のフィールドゴール成功率は25%にとどまり、なかなか本来のシュートタッチをつかめなかった。

そのぶん、ディフェンスでは複数ポジションをカバーする強みを見せていたが、このチームで求められていたのは、オフェンスで違いを生み出すことだった。

それを結果で示したのが、準決勝の中国戦だった。

立ち上がりからシュートタッチが冴え、4本の3ポイントを含む19得点。チームとして体を張ったディフェンスやフィジカルコンタクトでも相手を上回り、日本は一時30点以上リードを奪うなど主導権を握り続け、97-77で勝利して決勝進出を決めた。

もっとも、金近はこの19得点を自分一人の力でつかんだとは考えていない。

「今日は最初の1本目を決められたのが大きかったですけど、それ以外のシュートも含めて、チームとして打たせてもらっているシュートが多いんです。ガード陣がペイントタッチして(守備が収縮したり)、いい流れを作ってくれているので、ワイドオープンのシュートが打てた。なので、僕だけのパフォーマンスではないというか」

今大会で得た手応えを、金近はこう表現した。

「役割が全く違うなかで、自分でそれを整理して、中国相手に表現できた。また違うステップアップというか、今までと違った道なのかなと思います」

代表に呼ばれるだけではなく、チームのなかで自分に与えられた役割を理解し、自分なりの形にして表現する。中国戦の19得点は、その変化を示すものでもあった。

そして決勝では、スコアラーとして結果を残すだけではない課題も見えた。

3ポイント3本を含む13得点をマークしたが、韓国の激しいプレッシャーを前に、金近自身も受け身になる時間があった。プレッシャーを逆手に取り、味方を生かす判断も求められた。

27得点、18リバウンド、3アシストをマークした韓国のイ・ヒョンジュンが、さまざまな形でチームに貢献する姿も、金近の目に焼きついた。シュートを武器としながら、それだけにとどまらない。

「シュートだけじゃなくて、リバウンドだったり、アシストだったり、そういうところでもチームに貢献できる選手になりたい」

韓国には、アジア大会で優勝すれば兵役免除となる選手が半数以上いた。そうした背景もあるなかで、金近が感じたのは、勝敗を分けた「気持ち」の部分だった。

「気持ちの勝負に関しては、今日は本当に韓国に負けた」

「これを止めずに、ステップアップしていかないといけない」

吉本HCがこのチームに求めてきたのは、一日一日成長することだった。最初から完成されたチームを作るのではなく、試合を重ねながら一人ひとりが役割を理解し、全体として成長していく。その過程で、金近も自分の現在地を確かめた。

シュートという武器を生かしながら、リバウンドやアシスト、ディフェンスでもチームに貢献する。スコアラーとして与えられた役割を果たすだけでなく、さらに何をチームにもたらせるか。今大会で見えた課題を、これからの成長につなげていく。

次に待つのは、千葉ジェッツで迎えるBプレミアのシーズン。渡邊雄太、富樫勇樹、外国籍選手らがそろうチームのなかで、どれだけ自らの存在感を高めていけるか。その戦いの先には、ワールドカップ、ロサンゼルス五輪へつながる日本代表の競争がある。

19歳の代表デビューから3年半。1試合のインパクトではなく、自分に求められる役割を理解し、それを継続してチームに貢献できる選手になれるか。

アジア大会でつかんだものを、次の舞台でどう積み重ねていくのか。

金近廉の挑戦は、続いていく。

牧野 豊●取材・文text by Yutaka Makino

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