9月19日、「第9回なら国際映画祭2026」が奈良市で開幕した。2026年のテーマは「CROSS」。国や世代、文化を越え、映画人と観客、若い才能と世界が奈良で出会う5日間を掲げる映画祭の幕開けとして、世界遺産・東大寺大仏殿前で6年ぶりの開催となる「祈りのレッドカーペット」が行われ、その後、奈良春日野国際フォーラム 甍~I・RA・KA~能楽ホールでオープニングセレモニーが開催された。
映画祭のエグゼクティブディレクターを務める河瀨直美は開幕宣言で、「この世界には今この瞬間にも、その命が脅かされている人がいます」と切り出し、「なら国際映画祭は今年のテーマ、CROSS。この世界の分断をつながりに変えていきたいと願っています」と語った。
さらに、「1000年前から変わらない奈良と今の暮らしが静かにCROSSする、奈良という交差点で、遠いどこかの誰かの物語が今日の皆様の新しい気づきとなり、国が、歴史が、文化が、世代が、人が、それぞれに出会い、混ざり合う。そんな5日間の始まりです」と、映画祭に込めた思いを説明。「若い世代が本当の自分を開き、輝く未来に一歩を踏み出す場」でありたいとの願いも示した。
続いて、インターナショナルコンペティションの審査員長を務めるオルガ・キュリレンコが登壇。「審査員長として招待されたことを大変光栄に思います」と喜びを語り、日本を訪れるのは5回目だと明かした。日本の文化や映画、音楽、料理が大好きだというキュリレンコは、今回の「祈りのレッドカーペット」についても「世界中で多くのレッドカーペットを歩いてきましたが、このようなものは初めて」と振り返った。「祈り」を背景にした特別な体験だったとし、「平和で満たされた気持ちになりました」と語ったキュリレンコ。翌日から始まる映画祭で「新しい世界を見ること」を楽しみにしていると期待を寄せた。
インターナショナルコンペティションの審査員としては、キュリレンコにと共に、サンダンス映画祭のシニア・プログラマーを務めるハイディ・ツウィッカー、第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門審査員を務めたベルギーの映画監督ローラ・ワンデルも登壇。それぞれ映画祭への参加を喜び、世界各地から集まった作品との出会いに期待を語った。また、NARA-wave学生映画コンペティション審査員挨拶では、クリエイティブディレクター、キュレーター、プロデューサーとして活動するローラン・グナシア、フォトグラファーで映像監督のレスリー・キーも登壇した。
若い才能を支援するプログラムからは、NARAtive Jr.で上映される「袖ふきかへしても」の関係者も登壇。監督の梅本侑伽、脚本・音楽の美見マイア、出演者の森田想、原田開らが、奈良での映画制作を振り返るとともに、「今回こういう場をいただいて、このNARAtive Jr.で得た知識とか経験を次の自分の作品に生かしていけたら」という思いが語られた。
中高生13名が6日間のワークショップでゼロから創り上げた3本の短編映画を特別上映するユース映画制作ワークショップの講師を務めた松永大司は、若い才能たちと映画を作る中で、自身が担ったのは「見守る」ことだったと振り返った。「テーマを決めるところから、シナリオを作るところから、撮影すること、編集すること、人にどう伝えるか、それを彼らなりに一生懸命本当に考えて作った作品」と説明し、彼らとの映画の制作を通して「自分が誰なのか、自分が何なのか、それを見つける時間だった」と語った。
また、特別上映部門でのワールドプレミア上映を迎える「指飛行機の行方」の共同監督を務めた黒木瞳、常間地裕も登壇。黒木は41年前に亡くなった親友と、現在を生きる自分が奈良で「まさにCROSSする」映画を常間地監督とともに作ったと説明。常間地監督は、黒木の思いを出発点に、「自己を知らない世代がどう関わり、どう向き合えるのか」を考えながら映画を制作したと語り、「この映画をきっかけにいろいろ考えたり、一つ知ってもらえる、そんな映画になっていたら」と思いを明かした。
さらに、駐日イタリア大使のマリオ・バッターニも登壇。2024年に発効した日伊映画共同製作協定、そして今年2026年に日伊国交樹立160周年を迎えるなか、映画祭で展開されるイタリア映画特集に触れ、日本とイタリアの文化交流のさらなる発展への期待を語った。
そしてセレモニーの終盤には、今年から映画祭アンバサダーを務める俳優トミー・バストウの就任式が行われた。昨年までアンバサダーを務めたお笑いコンビ「ハイヒール」のリンゴから紹介を受けたバストウは、「このステージに立っていることを本当に光栄に思っています」と挨拶。「映画は僕の人生を形作り、世界の反対側から僕をここまで連れてきてくれました」と語り、映画を通じて人間というものを深く見つめる機会を与えてくれた映画人への感謝を述べた。
日本語で挨拶したバストウに対し、リンゴが「すみません、むちゃくちゃ日本語うまいですね」と声をかけると、バストウは「そう、すごく準備しました」と返して会場を笑わせた。
就任式では、昨年のピンクからブルーへと色を変えたアンバサダー章も贈呈された。河瀨監督が初めてバストウに会った際、「あなたの瞳がすごい綺麗なブルーだった」と感じたことから、今年はブルーにしたことが、バストウの口から語られた。
最後には、登壇者に加えて「EXPO 2025 大阪・関西万博」の公式キャラクター・ミャクミャクと、奈良県のマスコットキャラクター・せんとくんもステージに登場し、記念撮影。国や世代、文化を越えて人々が出会う「CROSS」というテーマを象徴するように、さまざまな立場の映画人が一堂に会し、「なら国際映画祭2026」は華やかに幕を開けた。(小城大知)
▼なら国際映画祭2026」開催概要
◆開催日:9月19日~9月23日
◆開催場所:奈良市ならまちセンター市民ホール/奈良公園バスターミナルレクチャーホール/東大寺総合文化センター金鐘ホール/春日大社 感謝・共生の館ほか
◆実施内容:インターナショナルコンペティション/NARA-wave学生映画コンペティション/カンヌ国際映画祭招待作品上映/ベルリン国際映画祭スポットライトジェネレーション部門優秀作品上映/ショートショートフィルムフェスティバル&アジア優秀作品上映/NARAtive、NARAtiveJr作品上映/ユースシネマプロジェクト等
◆チケット:Peatix(https://niff2026main.peatix.com/)にて随時発売
【作品情報】
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祈り
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