「なら国際映画祭2026」が9月19日から5日間、奈良市で開催される。同映画祭は、奈良の平城遷都1300年にあたる2010年に、映画作家・河瀨直美をエグゼクティブディレクターに迎えて始まった、2年に1回開催される映画祭だ。9回目の開催を前に、河瀨ディレクターに話を聞いた。
映画祭では、インターナショナルコンペティションやNARA-wave学生映画コンペティションを軸に、「ユース映画制作ワークショップ」作品、また、なら国際映画祭オフィシャルパートナーであるベルリン国際映画ジェネレーション部門からの推薦作品や、カンヌ国際映画祭の短編作品、ショートショート フィルムフェスティバル&アジア優秀作品など、多彩な映画作品を上映する。
コロナ禍の影響で、長年運営にかかわってきたスタッフの退任や規模の縮小もあったそうだが、今回から河瀨が理事長に復帰した。「今年は早め早めに準備を進めてきました。去年あたりまでは作品数を減らし、字幕作成などの費用がかかるため学生審査の作品も規模を縮小していたのですが、今年はラインナップを充実させ、元の規模に戻した形です。このラインナップを揃えて本当にこれだけのことができるのかという思いもありますが……このプログラムなら(運営資金も人も)集まるはずだ、とプロデュース的な組み立てを行い、スタッフや実行委員会の体制も再編成して、やっとここまで来ることができました」と報告。
そして、「アジアでは釜山国際映画祭が大きな存在なので、奈良は釜山より前の9月に開催することにこだわりました。ベネチアやトロントの映画祭もありますが、規模を大きくするよりも“深く”なるような映画祭を目指したいと思っています」と抱負を語る。
世界81カ国・地域から、両部門合わせて1438作品の応募があり、インターナショナルコンペティションに8作品、学生映画コンペティションに10作品が選出された。今回のメインコンペティションは、ハリウッド映画で活躍するオルガ・キュリレンコを筆頭に、審査員3名の全員が女性だ。
「カンヌ国際映画祭などでも以前から『監督や審査員に女性が少ない』と言われ続けていたので、今年は、全員女性にしよう!と決めました。もちろん、男性を入れたほうがいいのではないか、という意見もありましたが、審査委員長を務めるオルガをはじめ、サンダンス映画祭のプログラマー、ハイディ・ツウィッカーさん、そして今年のカンヌで審査員を務めたベルギー出身のローラ・ワンデル監督など、一人ひとりが自立して強く立てる素晴らしい方ばかりです。自信を持って作品を選んでくれると思っています。一方で、ユース制作部門や学生部門の審査員は男性陣が務めます」と新たな試みを行う。
そして、今年の目玉のイベントは、東大寺大仏殿前での世界の平和を祈る「祈りのレッドカーペット」とオープニングセレモニーだ。クリエイターたちと共にレッドカーペットを歩く、一般からの参加も募っている。
「奈良といえば一番有名なのは大仏様だと思います。地元の私たちにとっては身近な存在ですが、世界遺産であり、あの前庭に立った時の圧倒的な大きさは他に類を見ません。奈良で映画祭をやらせていただく以上、まずは大仏様にご挨拶をしてから始めたいという思いがありました。
東大寺の管長さんの温かいご理解に本当に感謝しています。コロナ禍の際、その前庭にキリスト教などさまざまな宗派の代表の方々が集まり、人類の命を守り・繋ぐための祈りを捧げられていました。芸能も元々は神様に捧げるものでしたから、私たちも同じ思いでご挨拶の場開きとしてレッドカーペットを行います。歩ける枠には限りがありますが、もしかしたら二度とないかもしれない貴重な機会ですので、ぜひ多くの方に参加していただきたいです」と期待を述べる。
カンヌをはじめとした国際映画祭への出品や審査員としての参加以外に、東京2020オリンピック公式記録映画を監督、2025年大阪・関西万博では、対話をテーマとしたシグネチャーパビリオン「Dialogue Theaterいのちのあかし」をプロデュースした。このように数多くの世界的イベントの現場に向き合った経験も映画祭運営に活きているという。
「映画祭を始めた当初から、カンヌやベルリンなどで私の作品を知ってくれている海外の映画人が『河瀨が地元の奈良でやるなら協力するよ』と直接手を差し伸べてくれました。正直、この規模の映画祭を運営するのはほぼボランティアのようなもので、東京で開催したら3~5倍の費用がかかるようなことを地元の方々の手弁当で支えてもらっています。しかし、なぜ続けるのかといえば、やはり、子どもたちが笑っていてほしい、という思いがあるからです。
映画祭では子どもたちに口出し・手出しをせず、彼ら自身に任せることで“自分たちの映画祭だ”という主体性が生まれます。私自身、養父母に育てられた背景があり、『せっかくいただいた命なのだから、何か役割があるはずだ』と考えて生きてきました。奈良の大仏様が1300年存在し続けているように、次の世代、さらにその先の世代へと残るような取り組みをしていきたいと思っています」と、使命感を持って取り組んでいる。
「第1回の際、イスラエルとパレスチナの共同監督作品を上映したことがあります。両監督が来日して上映が終わった後、ロビーで地元の普通のおばちゃんが『あんた、すごいものを見たわ』と友達に話しているのを見かけました。出会うはずのなかった人や文化が映画を通じて出会い、新しい体験や知識が生まれる――これこそが映画祭の醍醐味だと感じています。
今回のコンペティション部門でも、日本では配給されないかもしれないようなリアリティのある作品が揃っています。また、ノミネートされた監督たちには必ず奈良に来日してもらい、上映後にトークショーやロビーでの交流を行ってもらうことを条件にしています。観客と監督が直接コミュニケーションを取れる“生きた映画祭”にすることを大事にしています」
映画と次世代の未来を見据える「なら国際映画祭」のさらなる進化をぜひ、奈良で体感してほしい。映画祭アンバサダーは、NHK連続テレビ小説「ばけばけ」や「SHOGUN 将軍」などに出演する俳優トミー・バストウが務める。
▼なら国際映画祭2026」開催概要
◆開催日:9月19日~9月23日
◆開催場所:奈良市ならまちセンター市民ホール/奈良公園バスターミナルレクチャーホール/東大寺総合文化センター金鐘ホール/春日大社 感謝・共生の館ほか
◆実施内容:インターナショナルコンペティション/NARA-wave学生映画コンペティション/カンヌ国際映画祭招待作品上映/ベルリン国際映画祭スポットライトジェネレーション部門優秀作品上映/ショートショートフィルムフェスティバル&アジア優秀作品上映/NARAtive、NARAtiveJr作品上映/ユースシネマプロジェクト等
◆チケット:Peatix(https://niff2026main.peatix.com/)にて随時発売
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