イーロン・マスクに迫るドキュメンタリー「Musk(原題)」を手がけたアレックス・ギブニー監督が、マスク側から届いた名誉毀損で訴えるという警告に反論した。米ハリウッド・レポーターが報じた。
カナダ・トロント国際映画祭で行われた講演で、ギブに―監督は製作過程でマスク本人に繰り返し取材を申し込んだものの、返答を得られなかったと明かした。「私たちは何度も正式に接触しましたが、Twitter上での発言を除けば、返答は何もありませんでした」と語った。
約4時間に及ぶドキュメンタリー映画は、電気自動車、宇宙開発、ソーシャルメディア、AIなどの分野で巨大な影響力を持つマスクの実像に迫る作品。ベネチア国際映画祭でワールドプレミアを迎え、トロント国際映画祭で北米プレミアが行われる。
ベネチアでの上映後、マスクの代理人を務める弁護士アレックス・スピロは、ギブニー監督と製作チームに書簡を送付。映画がマスクに関する事実を歪曲していると主張した。
米ハリウッド・レポーターが確認した書簡は、マスクが衛星通信サービスStarlinkを利用して2024年米大統領選に影響を与え、ドナルド・トランプを後押ししたかのように映画が示唆している点を問題視している。マスク本人もXで、本作を「退屈な攻撃目的の作品」と批判した。
これに対しギブニー監督は、作品は弁護士による入念な精査と、独立したファクトチェックを経ていると説明。マスクをめぐる描写の正確性には自信を持っていると強調した。
同作は10月に米国で劇場公開され、その後HBO Maxで配信される予定。ただしギブニー監督は、HBO Maxを傘下に持つワーナー・ブラザース・ディスカバリーが、パラマウントによる買収の渦中にあることから、作品が幅広く視聴されない可能性に大きな懸念を抱いているという。
ギブニー監督は、映画にも登場するオラクル共同創業者ラリー・エリソンがマスクの友人で、マスクによるTwitter買収の出資者でもあると指摘。ラリーの息子でパラマウントを率いるデビッド・エリソンにも言及し、「メディアの統合、そしてテック界の大物たちによる積極的な編集権の掌握は、本当に深刻に憂慮すべきことです」とテック界の有力者がメディア企業の編集権を握ることへの危機感を示した。
講演では、マスクが率いた政府効率化省(DOGE)による人員削減や、それが米国際開発庁(USAID)へ及ぼした影響についても批判。さらに、株式市場や政府補助金、エネルギークレジットをめぐるマスクの行動についても、映画で検証していることを明かした。
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Photo by Dia Dipasupil/Getty Images