心身追い詰められて…“母親の内側”の狂気をスリリングに描くA24話題作「ワンオペレーション」監督インタビュー

メアリー・ブロンスタイン監督

心身追い詰められて…“母親の内側”の狂気をスリリングに描くA24話題作「ワンオペレーション」監督インタビュー

9月15日(火) 14:00

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主演のローズ・バーンが第75回ベルリン国際映画祭銀熊賞(主演俳優賞)を受賞、A24製作の話題作「ワンオペレーション」が9月18日公開される。家事、育児、仕事を一人で抱え、心身ともに限界へと追い詰められていく母親を、スリラー、心理ドラマ、ダークコメディを横断する独創的な映像表現で描き出す。脚本・監督を務め、自身の母親としての体験を出発点に生まれた本作について、メアリー・ブロンスタインが語ったインタビューを映画.comが入手した。

心理学の修士号を持ち、国立病院で子どもを対象としたプレイセラピーに携わった経験もあるブロンスタインが、重病の娘とモーテルで暮らした自身の実体験をもとに脚本を執筆。主人公の視点に徹底的に寄り添う没入型の演出と、生々しい現実感とシュールな不条理が入り混じる独創的な映像表現で、観る者を終わりの見えない"ワンオペ地獄"へと引き込んでいく。

本作企画の出発点となったのは、ブロンスタイン監督自身の複雑に絡み合った母親としての体験だった。家族の病気をめぐる罪悪感や不安、疎外感に苛まれ、「自分は十分によくできていない」「十分に強くない」、あるいは「自分は十分ではない」と思ってしまう恐怖。その言葉にしがたい動揺を、どのように表現するかを模索し始めた。

「私の知る限り、自分がまさに体験している、この特定の不安を探求した映画はないと気づいたの。つまり、病気の子どもと向き合っている母親の、狂熱的な精神状態なんです」

一方で、本作は監督自身の体験をそのまま映画化した自伝映画ではないと断言。「この作品は、事実に基づく自伝映画ではまったくない。けれど、描かれていることはすべて、感情的には真実」と語る。ブロンスタイン監督が描こうとしたのは、いわゆる“理想の母親像”とはかけ離れた、追い詰められ、怒り、混乱し、時に自分自身さえ見失ってしまうひとりの女性だった。「私は、これまで見たこともないような女性を映画の中に生み出したいという、偽りのない情熱がある」

その背景には、これまで映画の中で描かれてきた「神経衰弱に陥る女性」の表現への問題意識もあった。「神経衰弱に陥る女性のさまざまな描写を目にしてきたけれど、それらは通常、男性によって監督されたもので、ほぼすべてが外向きの捉え方だと感じる」だからこそ本作では、リンダの内側で起きていることを、観客自身にも体験させるような描き方がなされている。「私は深く内向きに捉えたかった。リンダが見るのと同じように、世界をとても恐ろしい場所として見てほしかった」と監督は話す。

そして本作では、リンダ自身がセラピストでありながら、自らもまたセラピストを必要としているという構造が描かれる。さらに、彼女の周囲には娘をケアする医療関係者や、患者として彼女の助けを求める人々など、さまざまな「援助する人」「介護する人」が存在する。「自分がセラピストなら、普通は自分にもセラピストがいるものだけど、私はいつも考えてしまうのよね。あのセラピストにもセラピストがいて、そのセラピストにもまたセラピストがいる。じゃあ、セラピストの連鎖の頂点に立つのは誰なの?って」

そんな“ケアする人”が連鎖していく構造について、ブロンスタイン監督はユーモアを交えながら、こう語る。「映画には、援助する人や介護する人が、マトリョーシカみたいにずらずらと登場する。でも、誰ひとりとして、まともに誰かの面倒を見ていないの」

その独特の視点を象徴するのが、物語を通してほとんど姿を見せないリンダの娘と、彼女につながれた栄養管だ。監督はあえて子どもの姿を画面の中心から外し、リンダの気持ちを物語の中心に据えた。「子どもの体験を物語の中心から外して、リンダの気持ちを真ん中に据えたかった。この状況にいる母親を見つめる子どもの顔を見てしまったら、哀れみや共感はすべて子どものほうへ向かうでしょう」

さらに、リンダの目に映る「子ども」の姿そのものについても、監督はこう語る。「それに、リンダはがんじがらめの状態だから、文字どおり子どものことがはっきり見えていない。子どもは陽気かもしれない。歌ったり、慰めを求めたりしているかもしれない。でも、リンダに見えるのは重荷と責任だけ。栄養管に粉ミルクを足さなければいけない、ということしか見えていないの。子どもの世話をするための手順がリンダの頭を占領していて、子どもをひとりの人間として見ていない」

一方で、リンダは観客から「母親としてどうなのか」と問われる存在でもある。「リンダは裁かれる立場にあり、観客もある程度は、絶対に彼女を裁くと思う。でも、この映画は同時に問いかけている。あなたはこの女性に、どれだけ感情移入できますかって。観客がそれを啓発的な問いだと思ってくれることを願っています」

映画は9月18日からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開。

【作品情報】
・ワンオペレーション

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_Photo by Logan White. Courtesy of A24
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