通勤や通学だけでなく、旅行やレジャーなど、日々多くの人が利用する電車。長時間の移動や混雑した車内では、ちょっとした行動が周囲の迷惑になってしまうこともある。
今回は、電車内で迷惑な乗客に遭遇しながらも、思わぬ展開に少しだけスカッとしたという2人のエピソードを紹介する。
何度起こしても肩にもたれかかってくる男性
旅行へ出かけた際、在来線を利用した松本彩佳さん(仮名・20代)。目的地までは2時間近くかかるため、車窓を眺めたりスマートフォンを見たりしながら過ごすつもりだった。
ところが、隣に座った見知らぬ男性が、発車して間もなく“ウトウト”し始めたという。
「こっくりこっくりしているなと思っていたら、そのうち頭が私のほうへ倒れてきたんです」
最初は仕方がないと思い、松本さんは「大丈夫ですか」と声をかけるような気持ちで、男性の肩をそっと押して起こした。男性も一度は目を覚まし、姿勢を正したという。しかし、しばらくすると再び眠り始め、また松本さんのほうへ頭が傾いてきたそうだ。
「何度か起こすと、そのたびに一度は“シャキッ”とするんです。でも、また寝てしまって……。しかも、だんだん倒れ方が深くなっていきました」
いつ隣の男性の頭が倒れてくるのかばかり気になって…
さらに困ったのが、スマートフォンを見ているときだった。
「ちょうど私とスマホの間に頭が入ってくるんですよ。どうやったらそこで安定できるの?って、逆に感心するくらい絶妙な位置でした(笑)」
せっかくの旅行にもかかわらず、車窓の景色よりも、“隣の男性の頭がいつ倒れてくるのか”ばかりに気が向いてしまっていた。
「何度目かにまた倒れてきそうになったときは、さすがにため息が出ましたね……」
降りるために立ち上がった瞬間「うわっ!」
何度も男性を起こしているうちに、松本さんが降りる駅が近づいてきた。
「いつもだったら、また肩を叩いて起こしていたと思います。でも、降りる準備もしないといけないし、もうそこまで余裕がありませんでした」
松本さんは荷物をもつと、席から立ち上がった。その際、松本さん側へ倒れ込んでいた男性の頭に体がぶつかったという。
「立つとき、『すみません、降ります』という感じだったんですけど、それまで何度もやさしく起こしていたので、最後はあまり遠慮しなかったですね」
男性は「うわっ!」と小さく声をあげると、驚いたように飛び起きた。寝ぼけた表情のままで、慌てて松本さんのほうを見ていたそうだ。
「最後は一瞬で目が覚めていました。ずっと我慢していたので、正直スカッとしました」
満員電車で突然背中を叩かれて…
夕方の帰宅時間帯、満員電車に乗っていた小川奈緒さん(仮名・20代)。車内は多くの客で混み合っており、小川さんは出入り口付近に立っていた。
「次の駅が近づいてきたとき、後ろに降りる人がいるのはなんとなくわかっていました。でも、私の前には、杖をついた高齢の男性が立っていたんです」
横へよけられるスペースもなく、小川さんはドアが開いたら前の男性が降りるのを待ってから、ホームへ出ようと考えていた。ところが、駅が近づくにつれて、後ろにいた女性が落ち着かない様子を見せ始めたという。
「体を揺らしながら、どんどん前へ迫ってくるんです。背中に圧をかけられているような感じで、『早く、どいて』と言われている気がしました」
そして、電車が駅に到着してドアが開いた。前にいた男性が杖をつきながらゆっくり降り始めたため、小川さんも順番を待っていたそうだ。すると突然、背中に強い衝撃を感じた。
「いきなり後ろから『早く! 降りるってば!』という声が聞こえ、さらに背中を叩かれたんです」
女性は小川さんを押しのけ、そのまま電車を降りていったという。
強引に降りた女性を待っていた、まさかの展開
小川さんを押しのけた女性は、前を歩いていた男性の横をすり抜けようとした。
しかし、男性が持っていた杖をうまくよけられず、バランスを崩しながらホームに出て行ったという。それでも、女性は立ち止まらず、人混みの中を急ぎ足で進んでいった。
「私は、背中を叩かれたことにも腹が立っていましたし、あんなに無理やり降りなくてもいいのにと思いながら見ていました。そうしたらその直後、その女性が点字ブロックにつまずいて、派手に転んだんです」
突然の出来事に周囲の人たちも驚き、女性のほうを振り返った。女性は注目を集めるなか、恥ずかしそうに立ち上がり、その場を去っていったという。
「『人を叩いてまで急いでいたのに……』と思ったら、少しニヤッとしてしまいました。もちろん、転んだことを喜ぶのはよくないとは思いますが、あまりにもタイミングが絶妙で(笑)」
電車では一人ひとりのマナーが大いに問われる。だが、不快に感じても声をあげにくい空気があるのは事実だ。自分の何気ない行動が周囲の迷惑になっていないか、あらためて意識する必要があるだろう。
<取材・文/chimi86>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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