2022年の九州大学ミスコングランプリに輝き、現在は広告代理店の会社員として働きながら週末は撮影会モデルとして活動する、26歳の古浜あおいさん(@msQu_No1)。アイドルなどの芸能人は「好きだけど、なりたいと思ったことはない」と言う。それでも彼女が被写体を務める理由を聞いた。
「家から通える高校」に進学
――九州大学を卒業されたとのこと、昔から勉強はおできになったのでしょうか。
古浜あおい:
振り返ると、あまり苦労した覚えはないかもしれません。学ぶことも好きでしたしね。私は大分県で生まれたのですが、公立の小中学校を経て地元の高校に通いました。大分県立宇佐高校という、偏差値50くらいのところです。実家から自力で通える高校がそこくらいしかなくて、あとは越境通学になってしまうんですよね。
――勉強ができる子が偏差値50の高校に行くというのは、なかなかミスマッチがありそうですが……。
古浜あおい:
いやそんなことはないですよ、友だちがすごく多いわけではないけど、いい子が多かったと思います。入学のときは首席でしたが、高校生活が進んでいくうちに勉強のできる数人のグループが形成されて、そのなかで学年の上位が決まる感じでした。結局、同じ高校から九州大学をはじめとする旧帝大に受かる子も複数いたので、勉強熱心な子は上位に来ていたと思います。私も、かなり勉強に打ち込みましたね。
「容姿への劣等感」が原動力に
――九大進学後は、4年生のときにミスコングランプリに輝きます。
古浜あおい:
ありがたいことに、運営の方に声をかけていただけて。高校生のときまで、容姿がコンプレックスだった私にとって、大きなきっかけを与えてもらったと思っています。
――古浜さんほど美しくて、容姿にコンプレックスというのは反感を買う気がします(笑)。
古浜あおい:
いや、本当なんです。同じ高校にスレンダーできれいな子が多かったこともあるんですが、当時の私は勉強くらいしかできない子でした。今よりも7キロくらいぽっちゃりしていて、目も一重で……それが嫌でアイプチをしまくっていて。でもあるとき、何度もアイプチをしていたら二重になったんですよね。ちょうど大学生活の怠惰が祟って体重がストンと落ちたのと重なって、鏡を見て「そんな悪くないかな」と自分のビジュアルを許せたのもこの時期でした。それまでは、自分の顔のバランスが悪い気がして、本当につらくて。高3くらいまでは、写真を撮られるのも嫌でした。勉強に打ち込んだ理由も、「ブスは勉強せんと稼げんなぁ」と思ったことも大きいんです。
「好意を持たれている」と思わせてしまった
――古浜さんは九大の共創学部という、文理の隔てがない学部で学ばれましたよね。どのような勉強をしていましたか。
古浜あおい:
簡潔に言うと、発達障害などに悩む子どもたちのためのアプリケーション開発の企画立案に携わっていました。実際に療育施設などにも足を運んで、当事者たちにアプリを試してもらうこともありました。自身が人間関係に悩むこともあったなかで、さまざまな課題に直面しながらも生きている人たちと出会えたのはよい経験だったと思います。
――ミスコンを制して、広告業界にいて、撮影会モデルとして多くのファンを獲得している……それだけを聞くと、とても「人間関係に悩んでいた」とは思えないのですが。
古浜あおい:
九大に入学したとき、わりと挫折を味わいました。それまでの高校生活のように、男女関係なく同じように接してしまう性分で……。それがもとで複数の男子学生が「好意を持たれている」と勘違いしてしまったらしくて。少しだけ、人間関係がこじれてしまったことがありました。
色恋営業に頼らないスタイルを確立
――ある意味では、撮影会モデルも、ファンから好かれなければやっていけないけれど、”ガチ恋”されてもいけないという、「あわいの職業」な気がしますが。
古浜あおい:
本当にそう思います。大学時代の苦い思い出があるので、それ以来、人間関係に敏感になってしまいました。でもそれは悪いことばかりではなくて、撮影会モデルとして人前に出ている現在、ファンと被写体という距離感を維持できている教訓にもなっていると思います。
――具体的にどのような方法で距離感をとっていますか。
古浜あおい:
大前提として、ありがたいことに私のファンは非常に節度のある方ばかりなんです。私は会社員をしながら副業で撮影会モデルをやっていることを公言していますし、ファンには「ガチ恋しちゃダメですよ」と伝えています。仮想恋愛ではなく「趣味の場」を作りたい私のスタイルを、ファンの方々が理解してくれています。だからこそ私も安心して、好きなように話したり、プライベートと比較して圧倒的に近い距離感や本心の会話でファンの方々と過ごせています。それでも勘違いを産まないために、ファン個人個人に対して「好き」というワードは使わないようにしたり、「私だけを推して」「他の子は推さないで」といったニュアンスの発言は避けています。推し先は多いほど、オタ活楽しめる日も多いと思うので。
――それがファンに対する誠実さでもある。
古浜あおい:
そうですね、色恋でファンを獲得することはしません。あくまで私にとって撮影会モデルは副業だし、副業としてのプロ意識を持ってファンに対峙をしますが、「この先」を期待させて足を運ばせるような営業をするつもりは一切ないんです。探りを入れるような駆け引きも必要ありません。それは、私の軸足が本業の会社員にあるからです。私は父もアイドルファンという血統で、自身もかわいい女の子が好きで撮影会にカメラを持って参加するほどのアイドル好きですが、「ワンチャン、芸能界にいけるんじゃないか」なんて甘い考えを持ったことはありません。本物のアイドルがどれほどたいへんか、理解しているつもりです。せっかく九大を卒業してキャリアを手にしたし、この道で行こうと決めています。
副業でモデルを続ける、本当の理由
――ご自身がカメラマンをやることもあるというのは、本気ですね。
古浜あおい:
かわいい女の子をみるとテンションが上がるんですよね。撮影会でいい写真を撮るために、40万円する一眼レフカメラを購入しました。作例を載せるためのアカウントもあるくらいです。
――ところで、何のために撮影会モデルをやっているのでしょうか。非公開ながら、古浜さんの年収は、同世代の上位1%以内に余裕で入りますよね。
古浜あおい:
経済的に苦しくてやっているわけではないです(笑)。ありがたいことに、本業でじゅうぶんな生活を送ることができています。
私には転職歴がありますが、前の職場は副業禁止だったため、こうした活動ができませんでした。そうすると、職場と家の往復生活が続いて人との会話もろくになく、休日は疲れて寝て過ごす。せっかく大学時代に頑張った美容もどんどん失われていく感覚がありました。このまま女性としての魅力を失う人生を続けたくなくて、自分を磨きながら趣味を楽しめる生き方がしたいなと思っていたんです。
私にとって撮影会モデルは、ファンと一緒に趣味の楽しさに浸れる素敵な時間であると同時に、私の活動日に対して「今日の遊びはココを選んで正解だったなあ」と毎回全員に思ってもらえる人でありたいと思っています。
有名になりたいわけではないのですが、楽しいと思ってくれる方が増えた結果として有名になることがあれば、これ以上ない名誉なことだとは思っています。
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二刀流がもてはやされたのはごく最近で、日本ではひとつの仕事だけに専念することを美徳とする風潮が強い。現代でさえ、二刀流は極めて高い才能を持つ者に許された特権とみる向きさえある。古浜さんが「こう生きたい」と考えた理想の人生は、決して突飛ではない。確実なインカムを得ながら、自らと向き合う時間を必ず作ること。それは、誰もが一度は思い浮かべ、鼻で笑ってかき消した空想の世界。実現させた彼女の聡明さと実直さが、ファンから愛される理由を物語っている。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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