バックミラーを見たら、後ろの車がぴったりくっついている。しかも、なかなか離れない。運転をする人なら、ヒヤッとした経験がある方もいるのではないでしょうか。理不尽なあおり運転に遭遇したとき、多くの人は身を縮めて我慢するしかありません。ただ、時には相手のほうが自らのふるまいの代償を、思わぬ形で払うことになることもあるようです。
実際、警察庁が2019年に行ったアンケートでは、運転者の35%、およそ3人に1人が「過去1年間にあおり運転の被害を受けた」と答えています。しかも被害を受けた場所は、高速道路が約23%に対して、一般道路が約77%。あおり運転といえば高速道路のイメージが強いかもしれませんが、大半は普通の道で起きています(政府広報オンライン)。
今回ご紹介するのは、過去に大きな反響を呼んだ人気記事から、悪質なあおり運転に遭遇したドライバー2人のエピソード。怖い思いをした末に、相手のほうが思わぬ形で“報い”を受けることになったといいます。
記事の後半では、あおり運転として取り締まられる行為や対処法とあわせて、2026年に施行されたばかりの新ルール2つをご紹介します。
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①不自然な走行に「あおられてる」と確信した
広田隆さん(仮名・30代)の趣味はドライブだという。
「夜のドライブは、道路も混まないし好きなんですよね。愛車で思うがまま走るのが最高の時間です」
19時に仕事が終わり、翌日が休みだったため、広田さんは迷わずにドライブに出かけた。田舎の夜道は、他の車とすれ違うことも少なく、この日も何も考えずに走っていたそうだ。
そして、時刻が0時を過ぎた頃、1台の白いワンボックスカーが近づいてきた。
「こんな時間に珍しいと思いながらも、すぐに違和感を覚えました」
広田さんの車の後ろにぴったりとつき、まったく離れないのだ。広田さんは路肩に車を止め、ワンボックスカーに道を譲ったのだが……。
「私が再び車を走らせると、ワンボックスカーは減速して車の前を塞いだんです。その後も、追い越しては後ろに接近してくるという繰り返しでした」
広田さんは「あおられてる」と確信した。
大量の泥水をかぶり“洗車大変だろうな”
「テレビで“あおり運転”の映像を見たことはありますけど、実際に自分が遭遇すると本当に恐怖です。逃げる場所もないので、頭がパニックになっていました」
そこは、田んぼ道だったのだが、前方には大きな水たまりがあったそうだ。
「田舎あるあるですけど、田んぼ近くの水たまりは、泥水混じりで車が汚れると厄介なんですよね。でも、それどころじゃなかったので、私はそのまま突っ走りました」
その時、激しい水しぶきが上がり、“思った通りの泥水”だった。そして、水しぶきに驚いたワンボックスカーはスピードを緩めたという。
バックミラーで確認すると、白いボディには泥水がついていて、目も当てられないような姿になっていたようだ。
「運転手には申し訳ないですが、『洗車大変だろうな』と、かなりスカッとしました」
②軽自動車をあおるハイエース
田中綾子さん(仮名・30代)は、車の通りが少ない道を制限速度の30キロほどで走っていた。すると、後ろの車が突然クラクションを鳴らしてきたという。
「はじめはそれほど気にしていませんでしたが、パッシングもされて驚きました。私の車に近づいてくると、横から幅寄せをしてきたんです」
相手の車は大型のハイエース。運転手は男性で、運転に慣れている様子だった。
「私の運転に対してイライラしていることはわかりました。私の車は軽自動車なので、大型車に車間距離を詰められるのは、命の危機を感じるほど怖かったです」
道を譲るべきかを悩みながら走り続けた田中さんだが、怖くて何もできなかったそうだ。
どんどん細い道へ入り込んで…
周りには他の車はおらず、どんどん細い路地に入り込んでいったのだが……。
「片側一車線、軽自動車であれば問題なく通れる道ですが、ハイエースはその道に入れませんでした」
ハイエースは道をバックすることを余儀なくされた。田中さんは、はるか前方で立ち止まり“その様子”を見ることにした。
「スムーズにバックできるような道ではないんですよ。相手は苦労していましたね」
田中さんに対して怖い思いをさせた相手が、窓から頭を出し“ぶつからないように必死になる様子”に、「ざまあみろ!」と心の中で叫んだという。
「何とも言えない清々しさを感じました」
<取材・文/chimi86>
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■クラクションもパッシングも、実は…
2人のケースは、いずれも相手が自分で痛い目にあう結果となりました。ただ、都合よく水たまりや細い道があるとは限りません。
ちなみに、あおり運転を取り締まる「妨害運転罪」の対象になる違反行為は、警察庁によると11種類が定められています。車間距離を極端に詰める、急ブレーキをかける、急な進路変更をする、といったものは想像がつくと思いますが、実は「執ようなクラクション」「執ようなパッシング」「幅寄せや蛇行運転」も含まれます(政府広報オンライン)。田中さんが受けたクラクション、パッシング、幅寄せは、3つとも並んでいることになります。
なお、この11種類目は2026年4月に追加されたばかりのもので、自動車が自転車の右側を通過するときの通行方法に関する違反です。
もうひとつ、知っておきたい変更があります。警察庁によると、2026年9月1日から、中央線や車両通行帯のない道路、いわゆる生活道路の法定速度が60キロから30キロに引き下げられました。標識がなくても30キロです。細い道をゆっくり走っている車を「遅い」と感じてイライラする人もいるかもしれませんが、そちらが正しいということになります。
■あおられてしまったら…
では、実際にあおられてしまったらどうすればいいのか。警察庁は、サービスエリアやパーキングエリアなど安全な場所に避難し、車外に出ることなく110番通報するよう呼びかけています。相手が挑発してきても、ドアはロックしたまま車内で待つこと。同乗者がいれば、通報はその人に任せます。ドライブレコーダーの映像があれば、相手が立ち去った後でも捜査に役立ちます。
通報して映像を提出すれば、相手は免許を取り消される可能性があります。泥水をかけるよりも、確実な方法かもしれません。
<再構成/日刊SPA!編集部>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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