江戸川乱歩賞作家・曽根圭介の小説を、城定秀夫監督、鈴鹿央士主演で映画化する「藁にもすがる獣たち」が、9月25日から全国で封切られる。今作に主演し、チャンネル登録者数わずか2ケタの大学生YouTuberの佐藤寛治に扮した鈴鹿と、裏社会と繋がる不良警官の江波戸良介に息吹を注いだ成宮寛貴に話を聞いた。(取材・文/映画.com編集長 大塚史貴、写真/間庭裕基)
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【動画インタビュー】鈴鹿央士VS成宮寛貴撮影現場で“ちいかわ”付けていたのは誰?
韓国でも2020年に映画化された今作は、バイト先のネットカフェで1億円の入ったボストンバッグを見つけた、祖母と二人暮らしの大学生・佐藤寛治(鈴鹿央士)が、なんでもありの1億争奪戦に巻き込まれるループ型痛快ノンストップ・サスペンス。1億円を抱えた寛治を追うのは、裏社会と繋がる不良警官の江波戸良介(成宮寛貴)、破天荒で怪し気な悪女し~な(森七菜)の2人。寛治を加えたこの3人がそれぞれの事情と思惑から人の道を外れて突き進んでいく。
――オープニングから、往年の東映プログラムピクチャーを思い起こさせる立ち上がりとなりましたが、おふたりが現場で目の当たりにした東映らしいエッセンスって何かありましたか?
鈴鹿「やはり成宮さんがやられた映画館のシーンは、まさに……じゃないでしょうか」
成宮「うんうん、まあそうだね」
鈴鹿「僕の役でいうと『血の量が多いねえ』というシチュエーションはあまりなかったように思います。ただ、東映らしさは映画を観て改めて感じました。成宮さんはいかがでした?」
成宮「鈴鹿くんが言ってくれた通りで、終盤に青木マッチョさんと格闘するシーンがあるのですが、歴史ある映画館の丸の内TOEIを閉館後に使わせてもらって、建て壊しのタイミングだったそうで、豪快に映画館をぶっ壊して……。しかも『仁義なき戦い』をスクリーンに流しながらでしたから。
鈴鹿「あれ、実際に流していたんですか?」
成宮「そうなんだよ。もう東映らしさでしかないというか(笑)。光栄でした。あの『仁義なき戦い』とこういう形でコラボレーションできたわけですから。なんか、いけないことをしているような感覚にすらなりました」
――おふたりは決して共演シーンが多いわけではありませんが、現場を共にしてみて、また完成した本編を改めて観て、自分が持ち得ない要素をどのようなところから感じ取りましたか?
鈴鹿「(演じた)寛治にしても、鈴鹿央士本人にしても、色気とか男らしさってあまり感じないんです。自分で言うのもなんですが、自然と滲み出てくるフェロモンみたいなものがないんですよね。成宮さんは色気、めちゃめちゃあるじゃないですか?」
成宮「なにそれ(笑)」
鈴鹿「クランクイン前、お祓いの時に初めてお会いしたんですが、『格好いいなあ』と思って緊張してしまいました。映画本編でも、デメキン(二ノ宮隆太郎)がついて行きたくなるような危険な匂い、フェロモンをスクリーンから感じて羨ましかったですから」
成宮「(笑)。僕は共演シーンがあまりないなかでも、同じ現場でシーンは別々ということはよくあったんですね。鈴鹿くんが先に撮影をしていて、僕が後から現場の日があったのですが、衣装に着替える小さな部屋に入ったらすごく良い匂いがするんです。どこからきているんだろうと思ったら、鈴鹿くんの私服でした(笑)」
鈴鹿「えー!恥ずかしい(笑)。でも、成宮さんこそ凄くセクシーな匂いしますよ?」
――鈴鹿さんは風吹ジュンさんとの芝居場も多かったかと思います。硬軟自在に演じ分ける大ベテランと対峙してみて得た学びはどのようなことですか?
鈴鹿「風吹さんはオン・オフを感じさせない方なのかなと思うんです。ずっと地続きというか……。現場で風吹さんとしていらっしゃる時間もあるし、カメラが回っていないときでも役の祖母としていらっしゃるようにも感じて、そのまま『よーい、スタート!』で本番に入っていくイメージ。それはオン・オフではなく、切り替えが凄すぎてそう見えているのかもしれません。その地続き感というのは変に区切るのではなく、役も自分の内にあって完璧に切り分ける必要がないんだなと、風吹さんの姿を見て、学んだことです」
――成宮さんが城定監督とお仕事をされるのは「死ぬほど愛して」に続いてのことですね。城定監督の演出、もしくは言動で何か驚きを禁じ得ないことはありましたか?
成宮「僕は2作連続でお仕事をさせていただいているんですが、監督、実は可愛らしい方で、見ていてホッとしちゃうんですよ。あと、『ちいかわ』が好きみたいなんですよ」
鈴鹿「つけていましたね、『ちいかわ』!」
成宮「つけていたでしょう?だから、『今回はどこに“ちいかわ”つけているのかな?』って探すのも楽しみにしていました。お仕事に関して言うと、本質を見抜く力がすごくある方で、僕があれこれ試しながらやってみたりするなかで『それがいいんじゃないですか?』とアドバイスをくださる。監督の中では早い段階で答えを出してくれるので、非常にやりやすかったです。
今回はやんちゃな不良警官ということで、台本に書かれていないこともトライしながらやっていたんです。そうすると『それいいですね』『それはない方がいいです』みたいに、はっきり言ってくださるので、僕はとってもやりやすかったです」
――冒頭で鈴鹿さんもおっしゃっていましたが、丸の内TOEIに車で突っ込んだうえでの格闘シーンは最高でした。成宮さんもあの劇場では何度も舞台挨拶に立たれていると思います。
成宮「僕が最後に舞台挨拶に立たせてもらったのは『相棒劇場版III 巨大密室!特命係絶海の孤島へ』のとき。あんなにグチャグチャにして良かったのかな……、ということに尽きます。本当に最後に丸の内TOEIを使わせてもらって、ひと芝居もふた芝居もあるわけですが、スクリーンに血が飛び散ったりしましたし。東映らしく、血のりの量も半端じゃないんです。撮影が終わったとき、僕も青木マッチョさんも顔面真っ赤で誰か認識できないくらいでしたから。『この映画館、本当に最後なんだな』と感じながら撮影していましたので思いもひとしおというか、最後のあの舞台を使えるなんて俳優として感動していました」
――森七菜さんの存在も、今作に大きな彩りをもたらしていると思います。役者として相対してみて体感した、彼女にしかない強みをどう感じ取られましたか?
鈴鹿「ものすごく自由だな、と思いました。良い意味で色々なものを手放してお芝居をされている方ですね。『こうしなきゃ、ああしなきゃ』とか『脚本がこうだから』ってセリフを追うこともせず、その場にいる。以前、取材日が一緒でお会いしたときに『この作品では、自分が映っていないところの台本は読まずに現場へ行きました』とおっしゃっていて、『そんな怖いこと、自分にはできないな』と思ったんです。
でもそれが、彼女がお金を追いかけていくさまと、自分の周囲で何が起こっているのか分からないまま、目の前で見聞きしたことで動いていく役に繋がるのかなと思ったんです。それでも、『自分が出ていないところは読まない』ってすごいチャレンジですよね」
成宮「真夏に撮影だったんですが、冷房のない倉庫の中に家のセットを立てて、そこを燃やすシーンがあったんです。室内の温度は50度を超えていたと思うんです」
鈴鹿「とにかく暑かったし、熱かったです」
成宮「すごかったよね。本番のとき100%の力を出している姿が『ああ、女優魂だな』って感じさせられました。彼女の演じたキャラクターの中で、最も感情が動いたシーンでとっても大変だったと思うんです。アクションもありましたし。そういう中で、100%の森さんを僕は見ました。いつもはフワッと、どこか飄々としているんですが、あの時は100%の森七菜を見て『あ、こういう感じの顔をするんだな』って、ひとりで感動していました」
――今作を観ていると、「泣きっ面に蜂」と形容するほかない状況って実は誰にでもあるよな……と自分事として捉えていました。俳優として生きてきて、「泣きっ面に蜂」と表現するに適したご自身の体験ってどのようなことがありましたか?
鈴鹿「だいたい映画やドラマの『雨降らし』のシーンって、ホースとか色々なアイテムを使って人工的に降らせるんですが、リアルに雨が降っているうえに、プラスして雨降らしも……という日に、僕はパンツ一丁にならなきゃいけなくて(笑)。撮影が3月上旬くらいで、それまで2月末から『春の兆しが見えてきましたね』みたいな日が続いていたのに、その日だけめちゃくちゃ寒くなって『凍え死ぬ』と思いました。そもそもシーン自体がしんどそうだとは思っていたんですが、リアルな雨とその日の寒さが重なるとは……」
成宮「寒い日に濡れるの、本当にしんどいよね。体の底から冷えるもんね。しかも、すぐに暖が取れればいいんだけど、撮影だとずっとその状態で待つんだよね」
鈴鹿「そうなんですよ。もう声が出ない(苦笑)。セッティングもあるのでカメラの前でぶるぶる震えながら『よーい、スタート!』って。もう無の状態です。生きることにしか集中できない(笑)」
成宮「めっちゃ分かる!僕は今回、実はぎっくり腰になって撮影を1日飛ばしちゃったことがあったんです。お風呂で『グキッ』ってなって、動けなくなっちゃって……。よりによって、その日の撮影が『1億円を抱えて群馬の街をダッシュで走らなきゃいけない』というシーンで(笑)。鍼灸整骨院へ治療をしに行ったら、プロデューサーさんたちが様子を見に来てくれたりして、本当にご迷惑をおかけしてしまったんです。翌日、腰がまだかなり痛い状態で、1億円を持って走っていました」
鈴鹿「めちゃくちゃ重い。成宮さん、ちゃんと重たいボストンバッグを持たれていましたよね」
成宮「バッグの中身って普段はタオルとかでごまかしたりするんですが、バッグを開けたりするシーンもありましたからね。まさに『泣きっ面に蜂』な撮影でした。さらに、ぎっくり腰の状態がまだギリギリ危ういタイミングで、映画館でのラストシーンの撮影もしていて……」
鈴鹿「ええっ?」
成宮「スクリーンがあって1列目、2列目、3列目って客席があるでしょう?青木マッチョさんに3列目から1列目まで、横向きに吹っ飛ばされるの。3列分、座席を飛び越えて前に落ちるっていうシーンを自分で(笑)。体中がアザだらけだった」
鈴鹿「ワイヤーとかじゃなかったんですね!」
成宮「あれね、人の背中をうまく使って飛ばしているの。スタントマンがやってくれるんだろうなって思っていたら、監督が『ワンカットでいきます!』って言うんで『じゃあ俺だわ!終わった』って(笑)」
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藁にもすがる獣たち
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