西川美和監督「わたしの知らない子どもたち」、トロント国際映画祭オープニング上映で温かい拍手喝采を浴びる

西川美和監督「わたしの知らない子どもたち」、トロント国際映画祭オープニング上映で温かい拍手喝采を浴びる

9月11日(金) 18:30

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西川美和監督が原案・脚本・監督を務めるオリジナル映画「わたしの知らない子どもたち」が9月10日(現地時間)、カナダで開催中の第51回トロント国際映画祭コンペティション部門に出品され、日本映画として初めてオープニング上映を飾った。西川監督と主演の小八重葵美がレッドカーペットと舞台挨拶に登壇した。

・ 西川美和監督最新作「わたしの知らない子どもたち」キャラクターポスター

本作は、戦後の日本で家族を失い社会からこぼれ落ちた子どもたちを題材に描くドラマ。1945年、終戦。音楽家の父(竹野内豊)のもとで育ち、ごく普通の暮らしを送っていた12歳の少女・茅野琴子(小八重葵美)は、戦争によって家も家族も失い、たった一人で生きることになった。過酷な戦後で自らの身を守るため、少女という性を隠し「少年」として生きることを決意。やがて同じ境遇の子どもたちと闇市で生きる居場所を見つけていく。

一方、琴子の担任教師だった曽根文美子(二階堂ふみ)もまた、敗戦によって婚約者を失い、教師という立場も生きる意味を見失っていた。しかし琴子の父親の友人から「琴子を探している」という知らせを受け、曽根は琴子を探すと決意し自らも取り戻していく。

オープニング上映は、本作のワールドプレミアを兼ねて行われた。映画祭プログラマーの「オープニング作品としてこの作品を上映できることを大変嬉しく思います。今回初主演を務めたアミの初めての映画祭となります」という呼び込みで西川監督と小八重が登壇した。

西川監督が現地を訪れるのは、「永い言い訳」のスペシャル・プレゼンテーションに招待されて以来10年ぶり。前作「すばらしき世界」も2020年にスペシャル・プレゼンテーション部門へ招待されたが、コロナ禍のため参加はオンラインだった思い出を振り返り、当時、東京から画面越しに見た客席はまばらだったものの、観客から寄せられた熱心で優れた質問が記憶に残っていると回顧。「それから6年が経ち、ようやく新作を携えて、こうしてトロントに戻ってくることができました。本当にうれしく思っています。この作品を選んでくださった映画祭の皆さんに、心から感謝申し上げます」と挨拶した。

続いて、今回が自身にとって初めての海外となり、初めて参加する国際映画祭となった小八重は、初の英語で「Hello, I’m Ami. I played Kotoko in this film. Thank you!(こんにちは、葵美です。この映画で琴子を演じました。ありがとうございます!)」と照れながらも笑顔いっぱいに挨拶をして観客の心を掴んだ。

西川監督が本作の企画を考え始めたのは、世界がコロナ禍からの回復という課題に向き合っていた2020年春。その後、2022年にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、世界各地で武力衝突が続く状況に、西川監督は「まるで世界が逆行しているように感じた」と話し、「今、世界中で、この映画に登場する子どもたちと同じような境遇に置かれる子どもが増えています。これ以上、どこであっても、子どもたちをこのような状況に置いてはならない。その思いを、この映画からのメッセージとして、皆さんの心に持ち帰っていただければと思います」と作品に込めた思いを語った。

最後は、小八重が「素晴らしいシーンがたくさんあり、きっとさまざまな感情が湧き上がる作品です。ぜひ、たくさん泣いてください!」と力いっぱいにアピールし、会場が大きな拍手に包まれる中、上映がスタートした。

上映終了後は、西川監督が再び登壇しQ&Aを実施した。脚本に先駆けて小説を書いた理由を問われると、西川監督は、自身もこの時代の歴史について知らないことが多く、さまざまな資料を調べるところから制作を始めたと明かし、「映画の脚本にする前に、登場人物それぞれの背景や、当時どのような出来事が起きていたのかを、自分の中できちんと整理する必要がありました。そのため、最初に小説を書き始めました」と語った。

そして、小説の強みは「映画の中では多くを語らない人物にも、たくさんのことを語らせられる点にあると思います」と回答し、「本作の登場人物の多くは子どもたちであり、映画の中で一人ひとりに長い台詞があるわけではない。自らの内面を多くの言葉で語らない彼らについて、小説では胸の内を語る形を取り、それぞれの心情や物語を余すところなく描くことができた」と語った。

司会者から、戦後の貧困や困難の中を生きる子どもたちの描写について、ビットリオ・デ・シーカ監督の「靴みがき」をはじめとするイタリアン・ネオリアリズムからの影響を問われると「『靴みがき』は、まさに戦後のイタリアを舞台にした作品です。そこでも、子どもたちが同じような道具を使い、進駐軍の兵士たちの靴を磨いています。日本とイタリアという遠く離れた国でありながら、戦災孤児たちが置かれていた状況は本当によく似ていると思います」と回答し、本作のテーマを思いついた際に同作を久しぶりに見直し、二つの国の共通点の多さに改めて驚いたという。

また、日本映画では小津安二郎監督の「長屋紳士録」を挙げ、「終戦直後に作られた古い映画には、戦災孤児が登場する作品がいくつかあります。しかし近年では、このテーマを扱った作品は、あまり見当たらなくなっているように思います」とこのテーマを扱う難しさにも言及した。

小八重を抜擢した決め手については、琴子が内に秘める強い意志を、芝居から感じさせる存在がなかなか見つからなかったことを明かしつつ、「葵美ちゃんのきらきらと輝く瞳と、何か強い意志を胸の奥に秘めているような存在感が、その場にいたスタッフ全員の心をつかみました。それで、葵美ちゃんを選びました」と理由を答えた。また、オーディションでは歌唱審査があり、そこで小八重が披露した歌声も決め手の一つになったそうで、西川監督は「本当に抜群に素晴らしく、とても素敵な声でした。完璧な子守唄を聴かせてくれました」と称賛した。

Q&A終盤には、西川監督、小八重のほか、会場に駆けつけたプロデューサー・小出大樹、伊藤太一、照明の宗賢次郎の紹介もされ改めて大きな拍手が送られ温かなイベントとなった。海外でのイベントに初めて参加した小八重は、「自分でも意外なところで笑っている人たちがいてびっくりしました」と海外での観客の新鮮な反応を楽しんだ。

その後も西川監督や小八重の周りにはサインや写真を求める観客が殺到し、会場は大いに盛り上がった。オープニング上映に出席した観客からも「本当に心に響く映画です。過去を描いた作品でありながら、物語全体が今の時代にも非常に通じるものだと思います」「子どもたちの存在は強く心に響きます。表情や感情がカメラを突き抜けてくるような力があります」といった感動の声が寄せられた。

なお、現地時間11日、19日にも本作の上映が行われる。「わたしの知らない子どもたち」は、10月16日から公開。

【作品情報】
・ わたしの知らない子どもたち

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