イーロン・マスクの弁護士が、マスクを追ったドキュメンタリー「Musk(原題)」のアレックス・ギブニー監督と製作会社に、名誉毀損で訴えると警告する書簡を送ったと米NPRが報じた。公開を来月に控えた段階での警告になる。
ギブニー監督は、米軍による捕虜への虐待を追った「『闇』へ」でアカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受け、サイエントロジーやエンロン、ロシアのプーチン大統領にも切り込んできた。今回は2022年から4年近くマスクを追い、4時間近い作品に仕上げている。
マスク側が問題にしているのは、元交際相手のアシュリー・セントクレアが映画のなかで明かす携帯メッセージだ。2024年の大統領選の約1カ月前、マスクから「明日、マトリックスの異常を解き放つ」という、映画「マトリックス」をほのめかした一文が届いたという。意味を尋ねると「宇宙からのレーザーだ」「いま1万基以上のレーザーが宇宙にある」と返ってきた。ギブニー監督がスペースXの衛星のことかと水を向けると、セントクレアはほかにレーザーを持っている場所を知らない、と答える。
マスクのスペースXは、高度550キロほどの低い軌道に1万基を超える小型衛星を並べ、地上のアンテナと電波でやり取りして通信を届ける衛星インターネット、スターリンクを運用している。衛星どうしを結んでいるのがレーザーで、「1万基のレーザー」はこれを指す。選挙のあと米国では、このスターリンクを通じて集計機のデータが書き換えられ、激戦州でトランプ大統領に票が積まれたという説が流れた。
ただ、アリゾナやジョージア、ペンシルベニアなど激戦7州の選挙当局は、集計機はスターリンクを使っておらず、そもそもインターネットにつながっていないと説明している。弁護士のアレックス・スパイロは書簡で、映画が否定済みの説を蒸し返していると主張し、公開前に通告した以上、このまま世に出すなら承知のうえでのことになる、と釘を刺した。
スパイロは、監督側がマスク陣営の説明を聞こうとしなかったとも書いている。だが、取材を断ったのはマスクのほうだと、ギブニー監督は説明してきた。監督は、公の場での本人の発言をもとにAIで作った偽のマスクを、代わりに画面へ立たせている。
元交際相手のアシュリー・セントクレアは、マスク側の警告をNPRにこう切り捨てた。
「アレックス・ギブニーに名誉毀損で勝つより、火星に移住するほうがまだありそうです」
なおスパイロもマスクもまだこの作品を見ていない。
【作品情報】
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マトリックス
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