織田裕二が湾岸署の刑事・青島俊作を演じ、社会現象を巻き起こした人気シリーズ「踊る大捜査線」がスクリーンに帰ってくる。実に、14年ぶりに。タイトルは「踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!」。監督の本広克行、脚本の君塚良一、プロデューサーの亀山千広という最強の布陣が再結集し、サブタイトルの頭文字が意味する「NEXT. EVOLUTION. WORLD.」の通り、青島の新たな物語が令和に始動する。(取材・文/内田涼、写真/間庭裕基)
まさに踊るレジェンドの“進化”を予感させる最新作だが、驚くなかれ、青島は馴染みのコートを身にまとい、いまも走り続けていた。理想と現実とのギャップに困惑しつつ、真摯に事件解決に向き合う姿は、あの頃とまるで変わらないように見えるが、演じる織田本人はどんな心境だったのだろうか?来年は「踊る大捜査線」誕生から30年の節目を迎える。
●「映画の3作目、4作目は消化不良に終わってしまった」
――まず、織田さんの記憶の時計を巻き戻していただき、映画「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」(2012)について教えて下さい。当時、織田さんの中で「FINAL」を迎えることに、どんな思いがあったのでしょうか。
まず、2作目(2003年公開の「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」)が終わった時点で、いかりやさん(和久平八郎を演じたいかりや長介さん)が亡くなって、「いかりやさん抜きの『踊る』は考えられないな」と。湾岸署で和久さんは隣の席。見たら、みんな思い出しちゃいますもんね。もともと「踊る」の映画は5年タームくらいを考えていたし、5年経ってもお声がかからないから、僕の中では終わっちゃったのかなって。
――第3作目「踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!」の公開は2010年でした。
ある日、亀山さんが僕のところに来られて「またやりたい」とおっしゃった。嬉しい気持ちの反面、和久さんのこともあるから、不安もあって。そうしたら、新湾岸署に引っ越すと(笑)。しかも、3作目と4作目は続きの話だから、立て続けに公開したいとおっしゃるんで、僕としても「じゃあ、終わったエンジンをリセットし、もう1度かけ直そう」という新たな気持ちだったんですね。
――「踊る」シリーズが再び動き出すんだと。
えぇ、ところが4作目のタイトルが「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」でしょ。えっ、ファイナル?って(笑)。僕としては、せっかくエンジンをかけ直したわけだし、ファイナルのつもりは微塵もなくて。それに新しいキャストも加わって「踊る」が動き始めるなら、連ドラみたいに、もっと数を打たないといけないとも思っていたんです。映画はどうしても、完成形を求められますけど、連ドラなら登場人物もストーリーも成長できますからね。「踊る」が多くの皆さんに、長い時間愛してもらえているのも、連ドラスタートだからなんですよ。
だから正直に言って、映画の3作目、4作目は消化不良に終わってしまった。終わりたくない気持ちも強くて、苦し紛れに「和久さんくらいの年齢になったら、青島ってどうなるんでしょうね」って言葉だけ残して、いったん解散したわけです。実際、10年以上、動きはなかったし、もう「踊る」はやらないんだなと……。
●“室井さん死去”に衝撃「ちょっと待って。勝手に殺すなよ」
――そんななか、2024年に柳葉敏郎さん主演の「室井慎次敗れざる者」「室井慎次生き続ける者」が公開されました。先日ご出演されたテレビ番組で、この2作品の製作決定をネットニュースで知ったとおっしゃっていましたが……。
ちょうど同じ時期に「踊る」で一緒だったスタッフと、別の現場で偶然会って「ニュース、見た?もう現場に呼ばれているの?」って聞いたら、「いや、呼ばれていない」と。だから、今で言うフェイクニュースですか?それかなって確認してもらったら、本当にやることが分かった。僕としては突然のことでしたが、室井さんの映画は、君塚さん発信だった事情もあるみたいで。
――最終的に、織田さんは「室井慎次生き続ける者」にチラッとですが、ご出演されています。
えぇ、室井さんの映画が作られるなら台本を見せてってお願いしたら、2冊(2作品分)あるし、何より室井さんが亡くなってしまって。僕としては「ちょっと待って。勝手に殺すなよ」「室井さんがいなくなる作品なのに、青島1つも出番ないなんて、それはないんじゃないか」って思ったわけです。ただ、台本は出来上がっているし、青島のために、最初から書き直すわけにもいかないから、ご覧になった通り、最後に登場する形になりました。
――そして、いよいよ「踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!」の製作が正式発表されました。ここまで、お話をうかがっていると、ファンと同じくらい、もしかするとそれ以上に織田さんが待ち望んだ最新作だったのかなと思いますが。
そうですね、期待もあったし、不安もあったので。先ほどもお話しましたが、第3作、第4作は消化不良でした。もっと面白くしたいという気持ちもあったし、前回と違って、終わる前提ではないので。新しい何かが始まる「N.E.W.」でしょ?一体何ができるんだろうというワクワクが強かったですね。
具体的に言えば、14年という歳月が経っているので、青島というキャラクターはいくらでも変わることができるし、あえて「何も変わらないね」もできる。いまとなっては、和久さんの年齢とそんなに変わらないわけだし。
●いまの青島は「各々の正義を大事にしてください」という気持ち
――ところが、青島は映画の冒頭から、めちゃくちゃ走っていますよね。昔、和久さんは「疲れるほど働くな」って言っていましたけど、それどころじゃなくて(笑)。
台本を読んで僕も驚きましたよ。前作に輪をかけて走るんですかって。僕も嫌々走っているんです(笑)。正直、最初は断ろうと思ったんですけど、「やっぱり、これ面白いな」が勝ってしまって。だから、あのシーンは、あえて不格好な青島像を演じてみました。「これ、若手の仕事でしょ?」みたいなセリフもあったと思いますが、あれはアドリブです。
――そういったコミカルな味わいこそが、「踊る」の真骨頂ですよね。
そうなんですよ。試写を見て、トライして良かったなと思います。もちろん、泣けるシーンもあって、絶妙なバランスですよね。完成した作品を見て「やったな、監督」と思いましたよ。肩肘張らずに楽しめるのが「踊る」の魅力ですからね。
――時代の変化にビビッドに対応するのも「踊る」らしさです。本作では、事件捜査にAIが導入されています。
青島がそういうタイプなんですよ。歯向かっても勝てるものではないし、最新技術はいち早く使って、メリットとデメリットを見極めた方がいい。映画の2作目では、監視カメラシステム(「C.A.R.A.S./Criminal Activity Recognition Advanced System」のこと)をめぐって、署内でモメたじゃないですか。横にいる(深津絵里が演じる)すみれさんが「プライバシーの侵害だ」って全否定で、青島も最初は否定的だったけど、知りたい、知ろうという気持ちもあって「ちょっと面白そうだから使ってみようよ」っていうニュアンスで。いまとなっては、監視カメラって当たり前だし、映画は未来を見せてくれるメディアだなと思いますね。
――令和になり、時代や社会の変化がさらに加速するなかで、それでも青島の正義に変わりはないんだなと。最新作「踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!」は青島の矜持を突き詰めた作品だと感じました。
今までは室井さんと二人三脚で、「変だな」「おかしいよ」って思う警察署のシステムに抗う姿が主軸になっていたと思います。和久さんは「正しいことをしたかったら、偉くなれ」と言っていた。けど、いろんな経験を積む中で、派閥争いに巻き込まれた室井さんが、そこまで出世できなかったという現実も目のあたりにするわけです。つまり、警察組織で出世するためには“毒”も飲まされるんだと。
そんな大人の事情は分かるけど、でも、やっぱり毒を飲まされて、正義だなんて恥ずかしくて言えない。矜持という言葉でご質問してくれましたが、いまの青島は「各々の正義を大事にしてください」という気持ちなんです。それがいまの青島の“正義”なんでしょう、きっと。あくまで僕の解釈ですけどね。
【作品情報】
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踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!
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