北九州市で開催中のバレーボール男子・アジア選手権は決勝ラウンドに進む8チームが出揃った。世界ランキング6位の日本は予選ラウンド3連勝で堂々の予選全体1位。準々決勝はインドと対戦する。
アジア選手権は優勝=ロサンゼルス五輪出場権獲得とあって、どの国も目の色が変わり、簡単な戦いはない。むしろ実力差があることで噛み合わせがずれ、思わぬミスも出る。インドはイラン、中国にストレート負けしているが、デュースに持ち込むセットがあるなど、決して侮れない相手だ。
山内晶大(32歳)は過去に日本代表として、そうした戦いの舞台に何度も立ってきた。開幕のオマーン戦では先発。ロラン・ティリ監督から、その経験が高く買われていることは間違いない。
初めて日本代表に選出されてから12年になる山内晶大 photo by Yuji Taguchi
「やりづらさは感じましたね」と山内は開幕戦をそう振り返った。
「テンポ感が違うし、普段、VNL(バレーボールネーションズリーグ)で対戦している相手とは明らかに違うリズムで、攻撃パターンも読み取りづらいというか、それに影響されてしまうところがありました。(奪われた第3セットは)サーブが効果的に入っていなかったし、サイドアウトでタッチを取られて、うまくはまらなかったことが逆転につながったのかなと思います」
オマーンには1セットを取られたが、ベテランは一喜一憂していない。
「今日に関して、自分はBad Day(悪い1日)だったんで」
彼はそう言って、気持ちを切り替えていた。
「トスが上がる、上がらないもセッター次第のところはあって、ブロックタッチを取れる、取れないも同じ。相手との関係性で決まるところもあります。ミドルはボールに触る機会が極端に少なく、リズムを取りづらい展開になると、自分もリズムをどう作るか、難しさはありますね。ただ、予選ラウンドはそうやってリズムを作り、決勝ラウンドに行くイメージをしているので」
その後はバーレーン、オーストラリアに、いずれも3セット目こそやや苦しんだが、連続でストレート勝利を挙げた。
【ミドルブロッカーの適性】「アジア選手権って、これがノーマルというか......。2023年にイランでやった時もこんな感じで、予選はフワフワしていて、つかみどころない。ほかの大会と違うんですよ。それを理解していると、決勝トーナメントからが本番で......」
そう語る山内は歴戦の猛者らしく、虎視眈々とこれからを見据える。
山内は、日本バレーボールを象徴するミドルブロッカーと言える。2014年に代表に選ばれて以来、10年以上も日の丸を背負う。高校生になってからバレーを始めたが、ミドルというポジションは天職だった。身長204cmの高さを生かし、爆(は)ぜるようなスパイクを打ち込み、そびえる壁のようなブロックで阻む。何より、性格がミドルに適合した。
山内はポーカーフェイスで捉えどころがなく、むしろ短絡的に捉えられることを嫌う。天邪鬼なところも彼の個性で、頑固さもエッジを効かせる。しかし、神髄は実直さだ。
「ミドルブロッカーは地味な作業が多いポジションで、そういうことができる人間じゃないとできない」
山内はその信条を明かす。つまり、ミドルであるがゆえの実直さであり、実直であるがゆえのミドルだ。
「ミドルは、華やかなポジションではないですね。前衛だけで出場時間も限られます。サーブ含めても4ローテ。そこで、どこまでチームに貢献できるか。クイックはトスが上がらなくてもおとりになって何度も跳んで、献身性が求められます。ブロックは敵セッターやスパイカーとの駆け引きで、観察が必要ですね。データもそうだけど、試合中にもセッターの人間性を見抜いて予測できるか。他のミドルはわからないし、僕がそうしているだけかもしれないですけど」
山内はうまくいかないプレーがあったら、論理的アプローチで解決できない場合は、とにかく数をこなすという。妥協はしない。自分に嘘をつけないのだ。
「性格上、数をこなして納得させることはやってきました。解決策がないまま、というのが落ち着かない。模索しながらできるまでやって、自信に変えてから試合に臨みたい。これで合ってるのかなと、半端に悶々とするのが好きじゃない」
山内は淡々と言うが、己には厳しく接してきた。
開幕のオマーン戦後、取材エリアで山内に問いかけた。
――今年1月のインタビューで、筆者が「もしタイムマシンで天寿を全うしようとしている自分と会えたら、『自分を誇れ』と言ってもらえるんじゃないですか?」という質問を投げた時、「オリンピックでメダルも取っていないし、何も成し遂げていないのでまだ誇れません」と答えていました。その意味で、今回の大会は五輪へのプロセスの一歩です。
「今日(オマーン戦)がプロセスの1日目とすると、まだ自分を誇れるようなことはできていませんね(苦笑)。ただ、あくまで積み重ねで、オリンピックの出場権を獲れればいいので。まずは予選ラウンドを戦いながら、それが終わったところでギアを上げて......」
山内はそう言うが、決勝ラウンドが総力戦になるのは間違いない。ロス五輪出場に向け、ミドルブロッカーは小野寺太志、エバデダン ラリー、西本圭吾と違ったキャラの選手が使い分けられている状況だが、ベテラン選手の経験と勘が求められるはずだ。
オーストラリア戦後、山内は今後の展望を冷静に語っている。
「(自分が起用される)そのときにチームに必要とされるものを出したいですね。クイックの打数とか、ブロックタッチとか、(ロラン・)ティリ監督の思いを汲み取って、必要なことに徹したい。もちろん、好きなクイックはベースで(トスが)ほしいし、求めもするんですけど」
五輪出場をかけた戦いは、これから過熱する。予選ラウンドはあくまで序章だ。ターニングポイントはどこにあるのか?
「やはり準々決勝ですかね......予選と違ってピリッとしているはずで、負けたら終わりの戦いで自分たちがもう一個ギアを上げ、いい意味で緊張感を持ってできるか。イランも中国も、ランキングとは関係ない部分で、アグレッシブだったり、高さやフィジカルがあったりするので、油断できない。そういう相手を負かすことでリズムも上がるし、大会中に仕上げていく必要があるかなと」
山内がコートで自らを誇る姿は、チームの栄光にもつながっているはずだ。
小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya
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