こんにちは、シューフィッターの佐藤靖青(旧・こまつ)です。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。
9月に入っても、突然の激しい雨には油断できません。
この時期は、秋雨前線による長雨が増える一方、残暑と湿った空気の影響で、ゲリラ豪雨に見舞われることもあります。家を出たときは晴れていたのに、帰宅時間になると道路が冠水するほどの大雨。あるいは朝から雨が降り続き、靴の中までじわじわ濡れてしまう。
かといって、毎日ゴム長靴を履いて通勤するのは現実的ではありません。
そこで便利なのが、晴れた日にも普通に履ける「
防水スニーカー
」です。ただし、防水をうたっていれば何でもいいわけではありません。雨を防げても、重くて歩きづらい、濡れた路面で安定しない、靴底がすぐに減るという商品もあります。
今回は、秋雨やゲリラ豪雨への備えとして使いやすく、普段の通勤やウォーキングにも向いている防水スニーカーを3足紹介します。
最後に、長年売れ続けているものの、個人的にはおすすめしづらいモデルも挙げます。
「防水スニーカー」はゴム長靴とは違う
当たり前の話ですが、混同している方も多いのではじめに釘を刺しておきます。防水スニーカーとゴム長靴は完全に別物。
ゴアテックスなどの防水透湿素材を使った靴は、アッパー部分からの浸水には強い一方、水位が履き口を超えれば、当然、上から水が入ります。道路が冠水している状況で、長靴と同じように使えるわけではありません。
また「4cmの水深で5時間」など、一定の試験条件をクリアした生活防水モデルもありますが、これもまた完全防水ではありません。そのうちにじわっと濡れてきます。
防水スニーカーが得意なのは、急な大雨の中を駅まで歩く、雨の中を通勤する、水を使う職場で働くといった場面です。
この前提で、歩きやすさまで考えて選びたい3足を紹介します。
①サロモン「X ULTRA 5 WIDE GORE-TEX」
1足目は、サロモンの「X ULTRA 5 WIDE GORE-TEX」。価格は2万2000円で、細幅用のノーマルバージョンもあります。
防水スニーカーはアウトドア向けのごついデザインになりがちですが、これは日常使いを意識した比較的シンプルなモデルです。デザインを模倣……もとい、オマージュした廉価製品も出るほどの人気ですが、通勤着にも合わせやすく、晴れた日に履いても違和感がありません。
サロモンの靴としてはクッションが柔らかく、長時間歩いたときの負担が少ないと感じます。
ただ柔らかいだけではなく、足の横ブレを抑える構造でもあります。
クッション性の高い靴は、体重をかけるたびに足元が左右へ揺れることがあります。足元が揺れれば、その上にある膝や腰も安定しません。
このモデルは、クッション性と安定感のバランスがうまく取れています。アウトソールの凹凸も本格的な登山靴ほど激しくないため、アスファルト中心の日常履きにも使いやすいでしょう。
靴紐には、コードを引いて締めるサロモン独自の「クイックレース」を採用しています。雨の中で靴紐がほどけたり、濡れた紐を結び直したりする手間もありません。
サイズ感は比較的ゆったりしています。ただし、幅が2種類あるため、ノーマルかワイドか迷ってる人は、店頭での試着をおすすめします。
②超幅広ならニューバランス「DynaSoft NITREL v6 GORE-TEX」
2足目は、ニューバランスの「DynaSoft NITREL v6 GORE-TEX」。価格は1万5400円です。
ゴアテックスを搭載したスニーカーは2万円を超えるものも珍しくありません。その中で1万円台中盤に収まっているため、かなり手を出しやすいモデルです。
メンズは4E、レディースは2Eの幅広設計。996や574などの定番モデルでは横幅が窮屈に感じる人にも試してほしい一足です。
もともとはトレイルランニング系のモデルなので、晴れた日のウォーキングにも問題なく使えます。ミッドソールには、反発性とクッション性を備えた「DynaSoft」を採用。アウトソールも舗装路と未舗装路の両方を想定しています。
底面積が広く、後ろから見ても安定感があります。満員電車で立っている時間が長い人や、仕事中に歩く距離が長い人にも向いているでしょう。
防水靴は雨の日にしか履かないと、使用回数が少ないまま劣化してしまいます。「高かったのにもったいない」と感じるかもしれません。
その点、NITRELは晴雨兼用のウォーキングシューズとして使えるため、価格に対して無駄がありません。
③コスト優先ならセダークレスト「スパットシューズ」
「防水靴に1万5000円以上は出せない」という人には、セダークレストの「スパットシューズ(エアソールタイプ)」があります。価格は6490円。
セダークレストは東京靴流通センターやシュープラザを展開するチヨダのプライベートブランドで、スパットシューズは手を使わずに立ったまま履ける構造を採用しています。
このモデルは、かかと部分にエアユニットを搭載し、現在はアウトソールに耐摩耗性を高めたラバー素材を使用。メーカー公表では「4cm×5時間」の防水試験をクリアしています。
ゴアテックスモデルと比べれば、さすがに性能は劣りますが、通勤途中の急な雨に備える日常靴としては現実的です。黒を選べば仕事でも使いやすく、脱ぎ履きの多い職場にも向いています。
注意点は、サイズ感がかなり大きめなことです。
私の場合、普段のスニーカーは28cmですが、このシリーズは27cmが合いました。ネットで決め打ちせず、可能なら店舗で試着してください。
④売れているが、リーボック「レインウォーカー」はおすすめしづらい
反対に、個人的におすすめしづらいのが、リーボック「レインウォーカー ウルトラ DMX ワイド4E」です。
現在の価格は1万6500円。長年販売されている定番の防水ウォーキングシューズです。
撥水レザーを使った4E設計で、柔らかいクッションを好む人には根強い人気があります。
しかし、私が靴修理に携わっていた時代、このシリーズは靴底の減りや傷みで持ち込まれることが少なくありませんでした。
DMXのクッション構造は柔らかさを感じやすい反面、底面が丸く、歩いたときの安定感が気になります。体重のかかる部分が偏りやすく、靴底が減った際の修理も簡単ではありません。
防水性と4Eだけで選ぶなら、先ほどのニューバランス「DynaSoft NITREL v6 GORE-TEX」の方が、歩行時の安定感と価格のバランスに優れていると私は考えます。
さらにサイズ感もかなり小さく、通常のスニーカーのサイズでオンラインで買うのは危険です。
もちろん足との相性は人によって異なります。レインウォーカーが合う人もいますが、「昔から売れているから安心」と考えず、必ず歩いて確認してください。
防水性能だけでなく、雨上がりに歩けるかを見るべし
秋雨やゲリラ豪雨に備える靴を選ぶとき、多くの人は「水が入るかどうか」だけを見ます。
しかし、実際に危険なのは雨がやんだ後です。濡れたタイルやマンホール、駅の床などを歩かなければなりません。
防水性能に加えて、靴底が安定しているか、かかとが抜けないか、晴れた日にも無理なく歩けるかを確認してください。
「雨の日だけ我慢して履く靴」ではなく、晴れた日にも履きたくなる一足を選ぶ。
それが、秋雨にも突然のゲリラ豪雨にも備えられる、一番現実的な方法です。
<文/佐藤靖青>
【シューフィッター佐藤靖青】
イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます『シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)@毎日靴ブログ』。著書『予約の取れないシューフィッターが教える正しい靴の選びかた』
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