F1第13戦イタリアGPレビュー(後編)
◆レビュー前編>>
モンツァで開催された第13戦F1イタリアGPで、アストンマーティン・ホンダの2台はそろってQ1敗退を喫した。それもキャデラック勢で上位だったバルテリ・ボッタスから0.8秒前後も離されての最下位だ。
Q1の最後にパワーユニットのデータに異常が確認されたため、フェルナンド・アロンソは予防措置として最後のアタックを見送り、本来のパフォーマンスを発揮しきれなかった。とはいえ、このモンツァでいかんともしがたい後れを取っていることに変わりはなかった。
アロンソはキャデラックとバトルを繰り広げたのだが......photo by BOOZY
「自己ベストは中古タイヤで、しかもピットレーンで長く待って冷えたタイヤで記録したタイムだったから、本来なら最後のアタックでもっといいタイムが出せたはずだ。それでもキャデラックと戦う以上のことは望めなかったと思う。厳しい週末だよ。
こういう長いストレートがあるサーキットでは、僕らの抱える弱点が露呈する。ラスベガス(第21戦)も同じような展開になると思うし、バクー(第15戦アゼルバイジャンGP)もそうかもしれない。でも、シンガポール(第17戦)やオースティン(第18戦アメリカGP)は楽しめるはずだ。こういう週末からも学べることを学んで、来年はストレートでも強さを発揮できるようになっていくしかない」(アロンソ)
オランダでスペック2のパワーユニットを投入したとはいえ、パワーはまだトップに追いついたわけではない。ストレートの長いモンツァでは、そのパワー差がストレートでの車速差につながり、タイム差に直結する。
それだけでなく、コーナー脱出時にICE(内燃機関)のパワーを補うためにより多くの電気エネルギーを必要とするため、ストレート後半のディプロイメントが効く時間は短くなる。これが、ストレートの短いサーキットであればさほど気にならないが、モンツァのような長いストレートではラップタイムに及ぼす影響が大きくなってしまう。
パワー不足がディプロイメント不足を呼び、ダブルパンチでタイム差に直結してしまうのだ。
【僕らはとにかく遅すぎた】ホンダの折原伸太郎トラックサイド・ゼネラルマネジャー兼チーフエンジニアはこう語る。
「ICEのパワーが足りないと、その分(コーナーからの脱出で)MGU-K(運動エネルギー回生システム)が仕事をしなければならないので、そこはスペック2になってもまだ残っています。エネルギーマネジメントという観点でも、他社がさまざまな工夫をしている部分で、我々も研究しなければならない」
決勝では、赤旗後に好スタートを決めたアロンソがキャデラックのセルジオ・ペレスとバトルを展開し、23周目まで抜きつ抜かれつのバトルを続けた。もちろん最下位争いに満足するわけではないが、予選の結果が本来のパフォーマンスを反映したものではなかったことは証明できた。
ただし、アロンソは23周目に「縁石に乗ってダメージを負ったみたいだ」と自らピットに飛び込んでリタイア。僚友ランス・ストロールも27周目に突然、油圧制御系に問題が発生し、チームからマシンを止めるよう指示された。
どちらもパワーユニットのトラブルではない。だが、パワー不足がイタリアGPの週末を極めて苦しいものにしたことは間違いなかった。
「僕らはとにかく遅すぎた。ダメージを負った状態でレースを続ける意味もあまりなかったね。このサーキットやラスベガスが僕らにとって、最悪で最も厳しい戦いになるだろうということはわかっていた。ストレートで失うロスがあまりに大きいからね。パワーをもっと改善する必要がある」(アロンソ)
パワーユニットの性能差をまざまざと見せつけられたホンダとしても、これが自分たちの現状だということをしっかりと受け止めている。
「スペック2を投入してパフォーマンスのアップは果たしましたが、まだトップに全然追いつけていないのは認識しています。ここでは厳しい戦いになることも予想していました。今回の結果は、今の我々の実力がそのまま反映されていると思っています」(折原GM)
【次戦はコーナー主体のサーキット】その差をきちんと認識し、次の大型アップデートとなる2027年型では、少しでもその差を埋めるべく努力をするしかない。折原GMは語る。
「今年はもう大きなアップデートはありませんが、2027年の開幕戦にはまた大きなステップを投入することになります。これを来年、次のアップデートでどこまで縮められるか。現在の立ち位置をきちんと認識して、そのギャップを埋めていくことが大事だと考えています」
現状の性能はオープンに共有され、苦しい戦いになることは事前に把握したうえで、両者は力を合わせて戦う姿勢を築いている。共闘態勢という点で、アストンマーティンとホンダはともに前向きだという。
「我々のパワーがどのくらいかというのはチーム(アストンマーティン)も共有しています。他社がどのくらいのパワーなのかもわかっていて、モンツァに来る前からタフな戦いになることもわかっていました。
我々はオープンに会話をしています。マイク(・クラック/アストンマーティン・チーフトラックサイドオフィサー)も『タフになるのはわかっているし、コンプレイン(不平を言うこと)しても仕方がない。我々はワンチームだから、一緒にやれることをやって、ともに乗り越えていこう』という言葉を常にもらっています。とてもいい関係を築けていると思います」
オランダGPで抱えたドライバビリティの問題については、HRC Sakuraのベンチで徹底的にテストを進めた。その結果、投入した対策は功を奏し、改善できたという。
これが来週のマドリング(第14戦スペインGP)では重要なポイントになる。アストンマーティン・ホンダにとって、結果を出さなければならないコーナー主体のサーキットであり、壁に囲まれたなかで、ドライバビリティの一貫性は極めて重要な要素になってくるからだ。
【パワーはどうすることもできない】「HRC Sakuraで2週間、集中的にテストをして対策を持ってきて、ベンチで確認したとおりの効果も実走で見えました。データ上で見ても、走り出しから明らかによくなっていましたし、セッションが終わったあとのドライバーからのコメントでも、ドライバビリティに改善が見られているとのことでした。
次のマドリードは市街地サーキットで、ドライバビリティがすごく重要になってきます。それだけに、どういう方向性にチューニングしていけばいいのかが見つかったのは、すごく大きな収穫だと思います」
ICEのハードウェアを変えることができない以上、パワーはどうすることもできない。電気系についても同様だ。
しかし、ドライバビリティはセッティングによって改善できる。改善を果たしたとはいえ、まだ多くの余地が残されている。
アストンマーティン・ホンダというチームとして、AMR26というマシンパッケージとして、今季残りのレースで少しでも上位を争い、少しでもポイントを獲得し、そして来年の飛躍に結びつけるために、今できる改善をひとつずつ積み重ねるしかない。
オランダGPの入賞で緩みかけた気を引き締め、現実に引き戻すイタリアの風はあまりに厳しかった。
米家峰起●取材・文text by Mineoki Yoneya
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