丸いオブジェや、くねくねしてるオブジェ、トゲトゲしてるオブジェなどなど、インテリアの世界では用途の分からない”謎の置き物”を見かけることがよくあります。「趣味の模型を飾りたい」「小さな照明を使いたい」「観葉植物を育てたい」といった”意図”が見えてこない正体不明のオブジェたち。それらを眺めていると「この良さが分からない私にはインテリアセンスがないのかな……」などと思うかもしれません。
いえいえ、そんなことはありません。インテリアとは「自分が心地よく暮らすため」にあるものです。だから理解できないものを無理して取り入れる必要はありません。
だけど「自分が心地よく暮らすため」にこそ、知らないものを知らないまま終わらせてはもったいないと思います。意味が分からない物は、意味が分かる物の延長線上にあるのです。飾るからには、嬉しいことがあるのです。うまく取り入れれば、自分の暮らしをもっと素敵にできるかもしれません。
インテリアファンたちは、どんな風にオブジェを楽しんでいるのでしょうか。暮らしを楽しむには、まずは不安をなくすことから。自分自身が納得した部屋で暮らせるように、意味不明なオブジェとちゃんと向き合ってみましょう。
■なんでそんなものを飾るの?
意味不明なものを、意味不明だと思いながら飾るのはストレスです。みんなストレスを我慢しながらオブジェを置いているのでしょうか?もちろん、そんなことはありません。
インテリアの世界では「非日常感」をとても大切にします。SNSでおしゃれな部屋を見て、わあステキだなと感銘を受けるのはその光景が非日常だからです。ホテルに泊まってワクワクする時間を過ごせるのは、その空間が非日常だからです。
お部屋のコーディネートはホテルライクにすればいい、なんて指南がまことしやかに囁かれたりします。こまかい言葉の定義はさておき、ようするにインテリアの極意は、自宅でホテルのような非日常感を楽しめるようにすることなんですよね。
非日常とは、日常の逆です。散らかった部屋が日常なら、スッキリと片付いた部屋は非日常です。実用品ばかりの部屋が日常なら、アートを飾った部屋は非日常です。スーパーマーケットで買ってきたものが日常なら、百貨店で買ってきたものは非日常です。
もっと抽象度を上げて考えるなら、普通のものが日常で、普通じゃないものが非日常ということになります。お部屋の中に、普通じゃないものを取り入れると非日常な空間を作ることができるのです。
ならばどんなものを部屋に置きましょうか。そう、普通じゃないものの一例がオブジェなんです。非日常な空間を演出できるから、普通じゃない印象のオブジェをみんな飾っているわけですね。
■非日常はインフレする
この日常・非日常という言葉が厄介でして。どこまでが日常で、どこからが日常じゃないのか、この違いに明確な基準がないのです。誰かにとっての日常は、自分にとっては日常ではないかもしれません。
それどころか、自分にとっての日常・非日常だってずっと同じままではありません。人間は飽きるのです。ホテルだってたまに宿泊するなら非日常だけど、365日同じホテルに泊まっていたらそれはもう日常です。
一人暮らしを始めた当初は、小さな木箱を買うだけで非日常を感じられていたかもしれません。だけどだんだん慣れてくると、もっと部屋を素敵にしたくなります。かわいい椅子を買ってみる。ペンダントランプを取り入れてみる。工夫をすればするほど、自室がどんどん非日常な部屋に生まれ変わっていきます。
だけどそこに365日住んでいると、だんだん慣れてきます。ああ落ち着く部屋で過ごせて幸せだなと満足できれば何の問題もありません。だけど人によっては、さらに新しい刺激が欲しくなることがあります。そうやってインテリアオタクが誕生します。
今よりもっと普通じゃない部屋を。今よりもっと非日常な空間を。求めれば求めるほど、必要な非日常感は増えていきます。最初は「ちょっと非日常」なアイテムで満足できていたとしても、やがては「さらに非日常」な刺激が欲しくなり、ゆくゆくは「めっちゃ非日常」なものを求めてインテリアショップを彷徨い歩くことになります。
そう、非日常感はインフレするんですよね。辛いカレーに慣れると、もっと辛いカレーが食べたくなるのと同じです。派手な服に慣れると、もっと派手な服が着たくなるのと同じです。
インフレしてはいけないという話ではありません。人によって、その人のインテリアオタク度によって、「自分にとってのちょうどいい非日常」の基準が異なるということです。
あなたにとっては素敵な非日常でも、マニアにとっては少々物足りないかもしれません。マニアにとっては素敵な非日常でも、あなたにとっては刺激が強すぎるかもしれません。
意味不明なオブジェというのはつまり、自分が考えるちょうどいい非日常感と「チューニングが合ってない状態」というだけのことなんですよ。飾っている本人にとっては、それくらいの意味不明さが心地よいのです。これが、おしゃれな人ほど意味不明なオブジェを飾っている事情ですね。
■自分基準でコーデしてください
そんなわけですので、意味不明だなあと思うオブジェを無理して飾る必要はありません。自分の部屋は、自分が考えるちょうどいい非日常感にコーディネートすればいいのです。
いつか自分の目が慣れて、もっと大きな刺激が欲しくなることがあるかもしれません。そうなったらあらためて、「そのときの自分」がちょうどよく感じるアイテムを取り入れればいいのです。
オブジェを置いてはいけない、オブジェを置かなければいけない。そんな風に堅苦しく考える必要はありません。大切なのは、そこで暮らす本人である「自分のためのインテリア」。
自分自身がちょうどいい非日常を感じられるようなお部屋を目指して、柔軟にアイテム選びをしてみてください。<文/カジキ>
【カジキ】
暮らし、住まいの世界を長年見てきた経験を元に、インテリアの法則を各コンテンツで言語化して発信中。YouTube「ゆっくりインテリア」、ブログ「様子のおかしいインテリア店」、Xアカウント@kajikissa
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