かき氷愛好家として活動する園田美穂さん(itoshinokakigori)が、これまで試食したかき氷は500種類を超え、1日の食事がかき氷のみで完結する日もある。
飽きることはないのか、糖分の過剰摂取や身体の冷えによる体調への影響はないのか。本人を直撃した。
怒りから始まった“かき氷沼”
園田さんが本格的にかき氷を食べ始めたのは2012年である。
その後、愛好家としての活動を深め、2021年には著書『広島の愛しのかき氷』(ザメディアジョン)を刊行した。現在は道の駅で提供されるかき氷の監修等も手掛けている。
熱量が高じて愛好家へ至る事例は多いが、園田さんの第一歩は「かき氷への怒り」からであった。
プールや縁日にあるような屋台で購入したかき氷がきっかけだったという。
「スプーンが入らないほどカチカチの氷で、一度は交換をお願いして作り直してもらいました。でも満足できるクオリティではなくて納得がいかなかったので、SNSで『質の高いかき氷が食べたい!』と投稿したんです(笑)」
すると、コメント欄には全国の優良店の情報が集まった。
「せっかくコメントをいただいたので、教えていただいた店舗を巡り始めました。ひとくちに『かき氷』と言っても、氷の削り方やシロップの味、果汁の活かし方から器に至るまで、お店ごとに独自の工夫があって、そこから一気にハマっていきました」
1日5~6杯、10日間で46杯
園田さんが夢中になり始めた2012年当時は、いわゆる「グルメかき氷」を提供する店舗は数少なかったが、2015年頃を境に全国各地で開店が相次いだ。
それに伴い、園田さんのかき氷行脚も勢いを増していく。
「2015年頃は1日に5杯から6杯食べていました。色々な味を楽しみたいので、1店舗で2種類注文することもありましたね」
この頻度であれば、すべての食事がかき氷に置き換わる日があるのも頷ける。
また、広島県在住の園田さん曰く、「東京には美味しいかき氷店が多い」のだという。
「今は2015年当時と比べれば食べる杯数はかなり落ち着きましたが、それでも東京は魅力的です。一昨年に行ったときは、10日間で46杯食べましたね」
日平均4.6杯という計算だ。10日間にわたりこのペースを維持する姿勢からは、並外れた情熱が窺える。
懸念されるのは健康面である。甘味類である以上、糖質過多が懸念されるが、実情はどうなのだろうか。
「70歳を過ぎてもかき氷を食べていたいので、健康診断の数値管理などは常に意識しています。今のところ全項目において正常値を維持していますね」
ただし、手放しで数値を保っているわけではない。
「運動することは心がけていて、店舗巡りをする際はあらかじめ歩行ルートを決めておくのですが、基本的に徒歩で回れるように設定します。1日の歩行数が2万歩に達することも珍しくありません」
2万歩は距離にしておよそ12キロから14キロに相当し、十分な有酸素運動となる。「しっかり歩いた方が、その後に摂取するかき氷も美味しく感じられます」と、別のメリットもあるようだ。
なお、これは園田さん個人の生活習慣についての話であって、大量のかき氷摂取が健康に及ぼす影響を一般化するものではない点を付け加えておく。
韓国旅行では「4日で15杯」
現在、洗練された「グルメかき氷」は日本国内にとどまらず、アジア圏へ普及している。韓国や台湾にも、日本流の技法に影響を受けた店舗が多数存在する。
かき氷を目的に海外へ赴く園田さん。その行程では予期せぬトラブルも生じた。韓国訪問時のエピソードを語る。
「地図アプリを見ながら目的地へ向かっていたのですが、誤って無関係のマンションに入ってしまって。管理人に連れて行かれた事務室で事情を説明したところ、係員の方々が正しい場所を調べて、タクシーの手配まで対応してくれたこともありました」
海外訪問時は限られた日程で巡回するため、摂取杯数が増加しやすい。「冷えは万病のもと」とされるが、連続摂取により一時的な体調不良を引き起こした経験もあるという。
「韓国で4日間に15杯食べたときは、ほぼかき氷しか食べませんでした。例外的に摂った食事も生レバーのみで(笑)。食べ過ぎか食べ合わせのせいかはわかりませんが、お腹にグッと不調を感じて大変でしたね。現地で正露丸を購入してなんとか乗り切りました」
「食事系かき氷」がすごい
グルメかき氷の定着から久しいが、近年は冷やし中華やラタトゥイユを模したかき氷「惣菜系(食事系)」と称されるジャンルが台頭している。従来の「かき氷=甘味」という概念を覆し続けている。
全国の店舗を食べ歩いてきた園田さんに、東京都内における注目の食事系店舗を尋ねた。
「銀座の『氷茶室つきそめ』さんでは、バターチキンカレーを応用したメニューなど、食事としての完成度が高い品を提供されています。あとは新高円寺の『フウリン堂』さんが提供する、玉ねぎソースを使ったかき氷も美味しいですね」
両店の口コミ評価を参照すると、「ワインとの相性が良い」といった投稿も散見される。非甘党の層に対しても、門戸が開きつつあるのだ。
最後に生涯ナンバーワンの店を問うと、「一番を決めることはできません」と置きつつも、東京訪問時に必ず足を運ぶ店として「浅草浪花家」を挙げた。
園田さんがかき氷に惹きつけられる背景には、店ごとに異なる味や見た目を楽しめる奥深さがあるからだろう。スイーツの枠組みを超え、かき氷の進化は今後も加速していくと考えられる。
<取材・文/Mr.tsubaking>
【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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