【第83回ベネチア国際映画祭】塚本晋也監督、戦争加害者視点から描く「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか」に熱狂的な拍手

【第83回ベネチア国際映画祭】塚本晋也監督、戦争加害者視点から描く「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか」に熱狂的な拍手

9月5日(土) 13:00

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ベネチア国際映画祭の開催3日目、コンペティションに選ばれた塚本晋也監督の「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか」がワールドプレミア上映され、熱狂的な拍手で迎えられた。本作は、実際のベトナム帰還兵であるアレン・ネルソンが実体験を綴った同名の著書をもとにした作品。主演にはブロードウェイの舞台俳優ロドニー・ヒックスを迎え、共演はアカデミー賞受賞俳優ジェフリー・ラッシュ、リリー・フランキーら。塚本監督にとって構想10年、4カ国でロケをした、これまでで最大規模の作品となった。

ベトナムから帰還後、長いことPTSDに悩まされ、ホームレスの生活を送っていたネルソンは、あるきっかけから自身の体験を学生たちの前で語るようになる一方、辛抱強く彼のカウンセルを担当するドクターとの出会いにより、徐々に自身の内面を見つめることができるようになっていく。

音響や視覚効果を駆使してPTSDの症状を描く塚本スタイルを踏襲しつつ、戦争を加害者の視点から描いた意欲的な作品だ。ドクターが繰り返し尋ねる、「あなたはなぜ人を殺したのか」という問いかけと、それに対するネルソンの反応は、観る者にも大きな問いかけをもたらす。

公式上映に先立つ記者会見で塚本監督は、「観た人が戦争の恐ろしさを肌で感じられるような、ちょっとしたトラウマを持つような作品にしたいと思いました。自分自身も祖父母から戦争体験を聞かされたことはないですが、子どものときに観た『はだしのゲン』のような創作物に大きな影響を与えられたからです」と語った。

ロドニー・ヒックスも、「脚本を読んだとき、我々が見慣れたヒロイックなものとは正反対で、(加害者の視点から描く)このような映画はこれまで観たことがないと思いました。これは絶対に撮るべきだと思いました」とコメント。さらに塚本監督について「彼は禅の師匠のよう。穏やかで寛大です。わたしたちは通訳を挟んでコミュニケーションをしていましたが、完璧に信頼することができました。カットとなかなか言わないので初日は戸惑いましたが、すぐに慣れました。役に決まってから3年間準備する期間がありましたが、一旦現場に入ったらすべてを置いて、いまこの瞬間を生きようと思いながら演じていました」と振り返った。

ジェフリー・ラッシュは、「シンヤさんからは最初に、このドクターが有能な人なのかどうかわからないように演じて欲しいと言われました。ドクターがネルソンのカウンセリングをするシーンでは、わたしの後ろで彼がカメラをぐりぐりと動かして、欲しいものを探求しているのがわかりました。脚本を読んで、題名にある強烈な問いかけに心を奪われました。今日のような紛争が絶えない時代に、この作品は多くの議論をもたらすと思います」と語った。

さらに「映画は戦争が起こるのを止める力があると思いますか」という問いかけに塚本監督は、「自分はつねにそれを信じて映画を作っています。どこの国かということは関係なく、誰もがひとたび戦争に行けばこのような(心の)状態になってしまうということをこの映画で訴えたいと思いました。若い人がこれを観て、こんな風になりたくはないと感じたら、戦争に批判的になるかもしれない。だからなるべく多くの方に観て頂きたいと思っています」と答えた。

公式上映の反響を目にした監督は、「加害者の視点で描く映画に観客がどんなリアクションをするかというのは正直未知数でしたが、今日はお客さんにものすごく伝わったという感触が得られたので、本当によかったなと思っています。とくにヒックスさんとラッシュさんとともにベネチアに来ることができたのは、とても光栄に感じています」と、喜びを噛み締めていた。(佐藤久理子)

【作品情報】
・ ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?

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(C)Kazuko WAKAYAMA
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