「こんなおばさんがセクハラ被害なんて…」47歳・派遣女性の絶望。加害者は26歳、“卑劣なセリフ”にゾッとする|ドラマ『リーガルビート』

画像:白石美帆 公式Instagramより

「こんなおばさんがセクハラ被害なんて…」47歳・派遣女性の絶望。加害者は26歳、“卑劣なセリフ”にゾッとする|ドラマ『リーガルビート』

9月4日(金) 8:45

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今クールのドラマ『VIVANT』(TBS系)や『Tシャツが乾くまで』(同)が注目されているが、『リーガルビート -逆転の法廷-』(テレビ東京系、金曜よる9時~)も注目したくなる。若手弁護士の泰地空(鈴鹿央士)と、所属する「雪村法律事務所」所長の雪村明日実(小雪)が、身近な不条理やトラブルに挑むリーガルドラマである本作。特に8月28日に放送された6話は、多くの人に見てほしい圧巻の内容だった。

セクハラ被害を訴える、47歳の派遣女性



冒頭、雪村の幼なじみで、派遣社員として働く47歳の倉野美穂(白石美帆)が、雪村法律事務所を訪れる。彼女は26歳の正社員の同僚男性・大塚亜門(岐洲匠)から、セクハラと年齢差別に加え、正社員と派遣社員という立場を利用した業務の丸投げなどの“パシリ扱い”を日常的に受けていたという。

ある日、大塚から難癖をつけられ、その際に腕を掴まれた倉野が振りほどこうとすると、結果的に大塚を階段から突き飛ばしてしまう。その後、大塚から慰謝料などを請求され、雪村を頼って事務所を訪れたと話す。

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泰地たちは倉野の話を聞く中で、「職場や上司に相談しようとは?」と質問するが、倉野は「こんなおばさんが騒ぎ立てるのも、なんだかみっともない気がして」と返答。一応、倉野も大塚と距離をとるなど対応したものの、それからも大塚に難癖をつけられ、理不尽な要求を突きつけられる日々が続き、突き飛ばし事件が発生したと振り返った。

「26歳が47歳にセクハラ」は“非常識”?



裁判が始まると、大塚の弁護士・氏家史郎(河内大和)から「26歳の男性が常識的に考えて47歳のおばさんにセクハラをするのか?」「大塚に好意を抱いていたから頼まれごとにも応じ続けていたのでは?」など、“憶測”を超越した“妄想”のような尋問を受ける。ご都合主義のような言い分ではあるが、これが世間の“風潮”なのか、倉野サイドは劣勢に。

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しかし、倉野が大塚から雇用状況をチラつかせた脅しをバーで受けている様子を見ていた一般客・川原めい(鈴木萌花)、倉野同様に大塚からセクハラ被害を受け、さらには倉野のセクハラ被害を見て見ぬふりをしてきた仲村綾子(遊井亮子)をはじめとした同僚たちの証言により、形勢は逆転。見事に勝利を収めた。

気色悪いセクハラの数々と、とんでもないセリフ



同エピソードではインパクトのある瞬間が多かった。まず何と言っても、大塚のセクハラが“絶妙”に気色悪い。話しかける際に倉野の肩にポンと手を乗せたり、「似合いますね。そもそも倉野さんの手、きれいだもんな」と言いながらネイルを褒めたり、手を握りながら頼みごとが書かれた紙を渡したりなど、ゾッとした。

大塚は見た目がシュッとしており、清潔感もある。それでも、「若い男性から“対象”として見られるの嬉しいっしょ?」みたいな自意識も垣間見え、不快感しかない。同時に、セクハラには、見た目や年齢が関係ないことを感じずにはいられない。

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中でも、倉野を勝たせるため、後輩の前野奏太(日野友輔)が居酒屋で大塚の問題発言を収集している時、大塚が「ちょっかい出すなら、派遣くらいがちょうどいいんだよ」「社内で若い子にいったら色々面倒くさいし、おばさんも若い男にチヤホヤされたら嬉しいだろう」というセリフを発した際には、汗ばんだシャツが肌に張り付くような、ねっとりとした不快感を覚えた。

雇用の関係上、仕方なく笑顔で接していることなどつゆ知らず、それを“好意”と勘違いする鈍感力高めの人は珍しくない。ただ、そのことを知っていて、自身の欲求を満たすために利用する人間も一定数いる。「こういう人いるよな」という既視感を覚え、現実世界にも“大塚”が決して少なくないことにゲンナリした。

いくつになっても性の対象になる絶望感



さらには、倉野が抱える歯がゆさも目を引く。倉野は雪村に助けを求めたものの、終始「おばさんがセクハラ被害を訴えること」に後ろめたさを感じており、「もっとうまくやれていれば、こんなことにはならなかった」と自分自身を責めるシーンもあった。

また、バーのトイレで川原から心配された際、倉野は「ホント、おばさんになっても、こんなのが続くなんてね」と自虐的に笑う。その様子にも胸をえぐられた。セクハラ被害は“若い人が受けるもの”と思われがちだが、決してそれだけではない。

女性が年を重ねると、「おばさん」と自虐したり馬鹿にされたりすることもあるが、性の対象から外れることもない。40代後半になった今もなお、好意を抱かれないように、それでいて関係がこじれないように異性と接しなければいけないことへの絶望感は計り知れない。倉野の心境を思うと、しんどさしかない。

被害者が声を上げるのは「ずるい?」



倉野以外の登場人物が抱える葛藤も目を引いた。倉野が声を上げたことに、自身も被害者である仲村は当初「仕方ないことだって耐えてきたんですよ、こっちは」「これまでの我慢はどうなるんですか?」と口にしており、むしろ同じ被害者である倉野を責めるような言動を見せていた。

被害に遭ったから声を上げる。何も間違ったことはしていない。にもかかわらず、「自分は我慢してきたのに」「事を荒立てずに穏便に過ごしたい」など、理由は様々ではあるが、怒りの矛先が加害者ではなく被害者に向けられるケースは現実世界でも度々目にする。

こうしたケースは特に、加害者が権力者だった場合に顕著に見られる。こうした人間の嫌な部分も正面から描いていたからこそ、倉野だけではなく仲村にも感情移入できたのかもしれない。

エンタメとしての幸福感も



これがドラマでなく現実世界なら、倉野のように声を上げても、必ずしも報われるとは限らない。倉野は解雇され、声を上げても誰も手を差し伸べず、大塚は今日もセクハラ三昧を決め込んでいた可能性もある。ただ、本作はエンタメだ。理不尽に対して一緒に怒ってくれた仲村たちの勇気ある行動のおかげで、倉野が報われたことには救いがあり、カタルシスがあった。

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とはいえ、ただの絵空事とは思わない。困っている人のために一緒に声を上げ、怒ることが、誰かを、ひいては自分自身を救うことを示すラストになっており、何とも言えない幸福感があった。

それと同時に、声を上げることはコスパ・タイパともに悪く、むしろ声を上げる人を冷笑しているほうが手軽に気分が良くなれるが、それでも声を上げる人をカッコ良く描いており、勇気をもらえるエピソードだった。

最終回まで残りわずかではあるが、エンタメとして楽しめつつも、自分事として何かを考えたくなるエピソードに期待したい。

<文/望月悠木>

【望月悠木】
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):@mochizukiyuuki

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