いよいよ日本公開!「オデュッセイア」クリストファー・ノーラン監督&マット・デイモンインタビュー

日本メディアの取材に応じたクリストファー・ノーラン監督とマット・デイモン

いよいよ日本公開!「オデュッセイア」クリストファー・ノーラン監督&マット・デイモンインタビュー

9月3日(木) 7:00

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“ノーラン史上最高傑作”との呼び声高いクリストファー・ノーラン監督最新作「オデュッセイア」がいよいよ日本公開を迎える。8月に韓国・ソウルにてノーラン監督と主演のマット・デイモンが日本メディアの取材に応じ、ノーラン監督過去作との共通点、IMAXフィルムでの撮影、オデュッセウス役としての肉体改造や、ノーラン作品初のクリーチャー造形についてなど幅広いテーマで語ってくれた。

■「オデュッセイア」と時間

――映画という“時間を扱う芸術”において、文字で語られた壮大な古典のエッセンスを損なうことなく、172分という尺の中で本作をどのように構築されたのでしょうか?過去作でも“時間”を独自の表現で描いていらっしゃいますが、この「オデュッセイア」での時間についての、脚本執筆時からの考えを教えてください。

ノーラン監督:興味深いのは、私自身、過去の作品において、非線形的な時間の描き方をしてきたことです。常に時系列的ではない方法で、時間や物語を伝えることに関心を抱いてきました。そして今回衝撃を受けたのは、この西洋文化の最古の物語においても、過激なほどに非線形的な時間の描き方をしているということでした。だから特に新しいアイデアといものは取り入れていません。既存の構成がすでに素晴らしいのです。

イタケのテレマコスとペネロペの物語から始まり、緊張が高まる中、「オデュッセウスはどこにいるのか?どうやって探せばよいのか?彼は帰ってくるのだろうか?」と問いかけ、そこからストーリーは展開していく。もとの叙事詩の構成にできるだけ忠実に沿うようにしましたが、すべてを盛り込むのは不可能ですから、大切な要素は落とさないように、うまく組み立てていきました。それと同時に、叙事詩を読んだことのない人にも観てもらいたい。だから必要なものとそうでないもののバランスが大切なんです。

編集では、物語を伝える上で必要ないものは、カットしていきました。また脚本を書く際も、それを念頭に置いて、ストーリーを動かす上で必要なものだけを残しました。多少の調整は必要でしたが、叙事詩はすばらしい導きになったし、ストーリーテリングの構成を知ることができました。

――フィルムや技術的な制約がなければ、172分以上の作品にしたい、そういう考えはあったのでしょうか?

ノーラン監督:作らなかったでしょうね。私は長編映画の形式が好きなんです。そこには規律があり、俳句と同じように、物語を伝えるための限られた時間があります。100年以上かけて進化してきた芸術形式であり、その枠内で作ることに喜びを感じています。私がテレビ業界で働いていないのも、それが理由です。

弟はテレビでも活躍していて、より長尺の作品を作るのが好きなのですが、私は、映画が終わる魔法のような瞬間にいつも魅了されるんです。「飛行機を着陸させる」とよく言うのですが、離陸して旅に出て、最後は必ず着陸する。それがうまくいけば、すばらしい体験になるし、理想的な形で物語を伝えることができると考えています。

■“帰還”というテーマについて

――今作も含め、これまでの作品でも旅から帰る――“帰還”というテーマを描きました。

ノーラン監督:帰還というコンセプトを、ギリシャ人たちは”Nostos”(英雄の帰還)と呼んでいました。この物語は登場人物の帰還、そして感情の変化を描いています。その人物にも変化が訪れ、故郷にも変化は見られる。長く故郷を離れることの意味、長旅が人や環境に与える影響を語っているんです。

今回「オデュッセイア」を映画化するにあたり気づいたのは、私が過去作で扱ってきたテーマが描かれていることでした。「インターステラー」だけでなく、「インセプション」「ダークナイト」の三部作も当てはまります。それは、「オデュッセイア」が物語の原点であることを証明しており、西洋文学にも色濃く反映されています。たとえば「ダークナイト」三部作で、ブルースが扮装して帰宅しますが、私がヒントにしたのは「モンテ・クリスト伯」でした。でもその「モンテ・クリスト伯」は、実はもとは「オデュッセイア」だったんです。つまりすべての物語の土台となっている。

だからこそ「オデュッセイア」には親しみを覚えたし、私が過去作に用いているストーリーテリングの本質的な要素があると感じました。だからこそ、この物語を伝えなければならないと、自信を持って思えるようになったんです。

――マット・デイモンさんは、「インターステラー」では地球に帰れない役でしたが、今回は、故郷に帰還するオデュッセウス役です。英雄を演じるにあたり、どのような準備をされましたか?肉体改造からの役作り、本格的な甲冑の衣装についても教えてください。

マット・デイモン:同じテーマが繰り返されるのは、面白い偶然ですよね。でもオデュッセウス役は本当にすばらしい役だから、演じることができてうれしかったです。様々な困難が降りかかってくるし、内面でも様々な葛藤がある。役者としてのキャリアは長いですが、このようなチャンスは滅多にありません。それだけ貴重だったんです。ノーラン監督とは以前にも組んだことがあるので、彼の仕事に対する姿勢を知っていますし、尊敬しています。

私がこれまでに見たことも参加したこともないようなスケールの作品になることは分かっていました。また全編IMAX®で撮影することがいかに大変なことか分かっていましたし、各部門が力を合わせて尽力することが必須なのは、承知の上でした。映画の仕事をしていて、これ以上の環境はありません。

オデュッセウスを演じるにあたっては、やはり大きな肉体改造が必要で、ノーラン監督はたっぷり6カ月という時間をくれました。どのような見た目を求めているかも具体的に教えてくれて、それは非常に助かりました。でも食事、トレーニング、さらに休憩時間の過ごし方など、24時間、気を抜くことができませんでした。

その6カ月の間に何度も衣装合わせがありました。ノーラン監督はとても細かいタイプなので、毎回チェックに来てくれていました。通常監督はそこまでしないものですが、彼は全キャストの衣装合わせに同席して、すべて把握していたのです。

監督とエレン・マイロニックがデザインした甲冑は7~8回、調整をしたと思います。同時に身体も変わりつつあったので、月に一度会って、体形に合わせていました。撮影前のプリプロダクションの時間は貴重でしたね。役者として、役作りのために調べものができるし、考えることもできるからです。また監督とその場で話し合うことで、現場に入って焦ることもなくなります。撮影中、シーンの内容について話し合うことは避けたいですからね。撮影に入ると、“時は金なり”ですから、事前にできる話し合いは済ませておきたいものです。長いプロセスでしたが、監督はコミュニケーション能力に長けているし、不安になるようなサプライズは一切ありませんでした。

■空想上のクリーチャーの創造プロセス

――3つ目の巨人キュクロプスや6つの頭を持つ怪物スキュラなど、今回初めて自作の中で空想上のモンスターが登場します。クリーチャーのデザインや撮影について教えてください。

ノーラン監督: 私は常にこれまで試したことがないことに挑みたいと思っています。西洋文学の原点である「オデュッセイア」が愛されてきた魅力の一つは、ファンタジー要素や登場するクリーチャーです。とりわけキュクロプスが登場するシーンは、その後、あらゆる方面に大きな影響を与えていて、「スターウォーズ」などの映画などにも、その影響は見られます。ある空間に閉じ込められている巨大クリーチャーというアイデアは、実は「オデュッセイア」から来ているのです。

私はテクニカルな挑戦にワクワクしました。スタッフを集めてチームを組み、映画全体のトーンをいかに保つか話し合いました。物語をリアルに描きたかったからです。実際に船に乗って海に出たり、丘を登ったり、キュクロプスの洞窟もギリシャで本物の洞窟で撮影しました。

どのようにしてリアリティを出すか考えた結果、あらゆるトリックを使うことになりました。詳しくは説明しませんが、パペットリーやアニマトロニクス、CGを用いました。そしてすべての原動力となっていたのが、友人ビル・アーウィンのパフォーマンスです。彼は「インターステラー」にも出演していて、「インターステラー」ではロボットのTARを操り、声優も務めました。彼は道化師でもあり、身体的表現に長けており、身体を使って感情を表すのが、非常に上手なんです。ビルは何カ月も作品に関わってくれました。洞窟で撮影も、ポストプロダクションの最中も立ち会ってくれました。

デザインに関しては友人のギレルモ・デル・トロに、「怪物はただの怪物ではない」と学びました。とてもシンプルなことですけどね。クリーチャーに個性、つまり感情や性格を与えることで、さらに恐ろしい存在になる。リアリティが増してくるからです。その結果、登場シーンはより魅力的になり、より恐ろしくなるのです。

■映画史上初、全編IMAX70mmフィルムカメラでの撮影について

――映画史上初の全編IMAX70mmフィルムカメラで撮影する、というノーラン監督の長年の野心が結実しました。その手ごたえと、撮影現場でのエピソードを教えてください。

ノーラン監督:初めてIMAX®作品を観たのは16歳の時でした。シカゴの科学産業博物館で、南太平洋の火山についてのドキュメンタリーを観たんです。その鮮明な画像と包み込まれるような大画面に衝撃を受けました。きっとフィクションの長編映画、ドラマをIMAX®で撮影したら面白いに違いないと、その瞬間に思ったんです。つまりIMAX®は16歳の時からの夢でした。準備が整った頃に、早速IMAX社にアプローチして、彼らのカメラを長編映画に使いたいと伝えました。「ダークナイト」は、IMAX®技術を用いた初の映画です。それ以来、IMAX社とはずっと組んできましたが、今回初めて全編IMAX®で撮影ができ、私の長年の夢が叶ったのです。

マット・デイモン:IMAX®は映像が群を抜いて違いますよね。全編IMAX®に初めて挑戦できたこと、その喜びはいつまでも忘れないでしょう。まるで探検家になったような気分です。現場では、特に静かなシーンの撮影が印象に残っています。私はIMAX®カメラはノーラン監督の「インターステラー」と「オッペンハイマー」でしか経験していませんが、すごく音が大きいんです。それは役者にとっては大きなチャレンジではありました。新しい技術だから楽しむことができましたが、静かな環境で撮る時はドキドキしましたよ。

全編IMAX®で撮ると監督から説明を受けた時、最初に尋ねたのは「目線はどうするのか?」ということでした。カメラに大きな箱(ブリンプ)を被せたら、どこに目線を向けたらいいか分からないですからね。するとカメラに鏡をつけて、目線が分かるようにすると言ったんです。そうやって工夫を凝らして、細かい問題を解決してくれました。

撮影が始まるまで、実際にどうなるか分からず不安はありましたが、楽しみながら臨むことができましたし、すべてうまくいきました。撮影を続けるうちに、中盤くらいで、「これは最後までいけるかもしれない」という確信に変わったんです。映画制作史上初めてのことですから、あの時は興奮しました。その一方で、現場の全員に忍耐力が求められました。通常のフィルムの11分に比べて、IMAX®フィルムは2分半から3分ほどしかもたないので、エモーショナルなシーンの途中でフィルム交換が必要になると、静かに素早く行わなければならないのです。しかも、役者の演技を邪魔しないように。それはチームワークがあったからこそ、成功したとも言えます。フィルム交換は、撮影を中断してしまうし、1シーンを撮るのに25分かかったこともありましたが、史上初という喜びは感じていました。

ノーラン監督:フィルム交換が入ったら、役者は集中力をキープできないのではと心配していたんです。でも、これほどまでに全員が集中している撮影は初めてでした。集中力が鍵だと誰もが分かっていたからです。通常カットをかけると、タバコを吸ったり、おしゃべりを始めたりするのですが、スタッフは全員、役者の動きに意識を向けていました。それぞれが別々に動いている大きな作品だと、大変なことですが、誰もがカメラの前で起きていること、つまり役者の演技にとにかく集中していました。

マット・デイモン:そこが重要なポイントでしたね。本当にスタッフの集中力がないと実現できませんでした。普通の現場なら11分ごとに休憩が入り、みんな動き回って雑音も聞こえてきますが、今回はそのようなことがまったくなかったんです。役者としては、非常にありがたかったですね。

■監督、俳優として携わる映画という仕事について

――おふたりの映画という仕事についての考え、モットーや哲学を教えてください。

ノーラン監督:私は7~8歳の時に映画を撮り始め、当初から映画作りに魅了されていました。ものをカメラで捉えることも、捉えたものをつなげて物語を紡いでいくプロセスも、情熱は今でも変わっていません。だから、映画作りへの思いはずっと同じだし、私にとって何よりも大切なことなんです。映画作りがなかったら、正直どうしていいか分かりません。それ以外にやりたいと感じたものがないからです。人生の目的を見つけられたことは、非常に幸運だと思っています。それもあらゆるレベルにおいて、様々なリソースを用いて、続けられてきたことはさらにラッキーなことです。心から愛していることですからね。光栄なことですし、恵まれていると思いますよ。

哲学やモットーは特にないですね。フィジカルなメディアだから多くの人の協力が必要になります。どの映画でもそうですが、特に「オデュッセイア」のような作品は早朝や深夜に働くこともあるし、疲労を伴うし、私生活が乱れたりする。数々の犠牲のもとに成り立っているんです。緊張したり、苛立ったりすることもありますが、そう感じるたびに、映画に関われていることがいかに幸運なことか、自分に言い聞かせるんです。そうすると自然とスイッチが切り替わり、笑顔になれるんです。

マット・デイモン:私もまったく同じように感じています。役者の仕事しか考えたことがないし、この仕事に就けたこと、さらにこんなに長く続けてこられて、とてもラッキーだと思っています。才能ある人々と働けていますしね。実は、自分の場合、最初は自己中心的とも言えるんですが、演じることしか関心がなかったんです。役者にしか興味がなく、自分に影響を与えてきた俳優にばかり目がいっている時期もありました。

でも実際に役者として働きはじめて、映画制作全体が見えるようになったのです。それぞれの仕事がいかに大切で、彼らにいかに助けられているか、また彼らの仕事内容を知れば知るほど互いを支え合うことができると。協力体制のもとに成り立っている芸術であり、役者は一人では何もできないということです。

ストーリーテリングに参加できるのは、すばらしいスタッフと監督の存在があってからこそなんです。結局は監督の作品であり、物語を伝えているのは彼らなんです。若い頃は一部しか見えていなかったけど、今ではもっと広い視野で物事が見えるようになりました。

■「オデュッセイア」公開後の反響への感想、今後について

――本作で全編IMAX®フィルム撮影という自身に課したある種の使命を終え、賛否両論を含めた大きな反響と記録的な大ヒットを記録し、ノーラン監督が映画界での過酷な冒険に挑んだオデュッセウスそのもののようにも見えます。新たな成功を更新した、現在の心境を教えてください。また、新しい野心は現在芽生えていますか?

ノーラン監督:「オデュッセイア」に対して多くの反響があり、とてもうれしく思っています。私は観客のために映画を作っているので、観客に作品に届くまで落ち着かないのです。観客の感想を聞いて、映画は初めて完成します。9月にも日本の皆さんの感想を聞けますが、世界中からはすでに数々のコメントが届いています。好評を得られているのは、とにかく光栄なことです。

この次に関しては、まったく何も分かりません。まだこの現実を消化している最中なんです。今でもこうして作品について話しているし、もっと多くの人に見てもらえるように努力しています。それももうすぐ終わるので、終わったらしばらく休みを取り、今後について考えたいと思います。

基本的に私は目の前にある作品のことしか考えていないので、このような撮り方ができるのだと思います。次の作品が最後という覚悟でいつも取り組んでいます。そして、それはいつか現実になるはずですから。

――本作を日本の観客にどのように見てほしいですか?

マット・デイモン:ノーラン監督が言っていたように、観客に作品が届いて初めて、映画は完成します。ホメロスの「オデュッセイア」には様々なテーマが描かれているから、私個人が観客を導くようなことはしたくありません。ホメロスの叙事詩は、人生のどのタイミングで読むかによって捉え方が全く違ってくるものの、本作も同じように色濃く描かれていると感じてもらえたらうれしいですね。

登場人物に共感して、あらゆることを感じ取ってほしいです。アメリカでも多くの興味深いコメントを耳にしましたが、日本の皆さんの感想が楽しみです。どう感じるかは人それぞれ。深い人間ドラマですから、皆さんにどう響くかを心待ちにしています。

手に汗握る冒険とアクション、心揺さぶる人間ドラマ…と、普遍的かつ壮大な物語のエッセンスがテンポよく繋がれた本作は、観る者に172分という上映時間の長さを忘れさせるほどの圧巻の映像作品に仕上がっている。ぜひノーラン監督のこだわりが細部まで堪能できる大スクリーンで、「オデュッセイア」の旅を体感してほしい。

「オデュッセイア」は9月4日(金)~10日(木) IMAX先行上映、9月11日(金)全国公開。2D(字幕/吹替)、IMAX®(字幕)、Dolby Cinema®(字幕)、4DX(字幕/吹替)、MX4D® (字幕/吹替)、35mm(字幕)の全6種9バージョンで公開される。

【作品情報】
・ オデュッセイア

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