第83回ベネチア国際映画祭が、現地時間の9月2日に開幕した。
ダニー・ボイル監督の「INK」で幕を開けた今年のコンペティションは計21本。ルーニー&ケイト・マーラ姉妹が主演するベルナー・ヘルツォーク監督「Bucking Fastard」、ケイシー・アフレック監督「Company」、A24製作、ロバート・パティンソン主演の「Primetime」、ペネロペ・クルスとハビエル・バルデム共演の「Bunker」、マーティン・マクドナー監督「Wild Horse Nine」、日本から是枝裕和監督の「ルックバック」と塚本晋也監督の「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」、後から追加になったイスラエルによるガザへの軍事侵攻を追ったドキュメンタリー「Naza」など。
ガザ・ドキュメンタリーの他にも、女性監督作がメイ・エル=トーキー監督のみ(共同監督作を入れると2作)であることや、ロシア人監督イリヤ・フルジャノフスキーの「Dau」が入っていることに対して、ウクライナ政府がロシアの文化的影響力に懸念を表明したことなど(ただし製作はロシアではない)、さまざまな点で話題になった。
コンペティション部門の審査員長を務めるマギー・ギレンホールは記者会見で、「女性監督作が少ないのは業界全体の問題で、いかに彼女たちにとって資金を集めるのが大変かという問題の表れだと思います」とコメント。また映画にポリティクスは必要かという質問には、「わたしが考えるに基本は<共感>にあります。映画は人々への共感をもたらす機会を与えてくれる。どんな監督でもどんな物語でも、ないがしろにされるべきではない。映画というものが人々の経験に対して誠実な視点を持つものならば、それは基本的にポリティカルであるのを避けられないのではないでしょうか」と持論を語った。
もっとも、ベネチア初日の主役はむしろ、オープニング・セレモニーで栄誉金獅子賞を授与されたジョージ・クルーニーだった。もともとイタリアで人気の高い彼は、昨年も「ジェイ・ケリー」でベネチアに参加した。
授賞式前に記者会見に応じた彼は、「65歳のいまはすべてがメランコリーだよ。歯を磨くときも、以前はもっと丈夫な歯だったのになあなどと考える。すべてが老いていくものだ(笑)。でも自分はとても恵まれている。最愛の、そして自分のことをとても愛してくれる素晴らしい妻と出会えたし、子供にも恵まれた。人生は素敵だと実感している」と語り会場を沸かす一方で、シリアスな話題にも積極的に返答。
さらに、AIの脅威や、メジャースタジオが小さな制作会社を買収していく最近のハリウッドの傾向を憂えた。またパレスチナ支持を表明し、パラマウント・スカイダンスのCEOであるデビッド・エリソンのことを「パレスチナの人々の虐殺の共犯者」と称して批判されているマーク・ラファロについて尋ねられると、「自由にものを言うことができる彼のことを支持するよ。言論の自由を制するなんてばかげている。たとえ僕が彼とまったく同じ意見ではないとしても、自由に議論できることが大切だ。それこそ民主主義が機能するための一部なのだから」と表明した。
初日から政治的な話題に見舞われた映画祭は、9月12日に閉幕式を迎え、各受賞作が発表される。(佐藤久理子)
【作品情報】
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ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?
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