(画像/PIXTA)
9月1日(火) 12:00
リクルートが、2026年9月、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県)在住の20歳以上の男女(1次調査25万1356人、2次調査4万8961人)を対象に実施した「SUUMO住み続けたい街ランキング2026 首都圏版」を発表しました。東京都内の数ある人気タウンを抑え、総合1位に輝いたのは、神奈川県藤沢市の「鵠沼」。本記事では、海や山などレジャー、観光のイメージが強い鵠沼が、「住む街」として強く支持される理由を掘り下げます。
「鵠沼」は都心・横浜への好アクセス、豊かな自然がそろう藤沢市南部の街今回1位となった鵠沼駅を擁する藤沢市は、自然環境と利便性のバランスが良く、特に子育て世帯から安定した人気を集めているエリアです。また、都心からもアクセスしやすく、手軽にマリンスポーツが楽しめたり、里山の自然を活かした公園で鳥や虫、ザリガニやカワセミなどさまざまな自然と触れ合うこともできたりするなど、多様な魅力を持っています。
鵠沼エリアを代表する駅は、1位の江ノ島電鉄「鵠沼」と、小田急江ノ島線「本鵠沼」「鵠沼海岸」の3駅。「鵠沼」駅からは横浜まで32分、品川まで51分と東京方面も通勤圏内で、東海道本線や湘南新宿ラインはグリーン車があるのも魅力です。
鵠沼駅からの所要時間
条件:平日8:00~8:30の間に出発するダイヤの中で有料特急を除く最短の分数(「駅探」調べ)
沿線・駅の一部を省略して表記
(出典:「SUUMO住み続けたい街ランキング2026 首都圏版」記者発表資料)
鵠沼エリアは湘南のサーフカルチャーの中心地のひとつであり、一方で、明治時代に分譲された旧別荘地の面影を残す閑静な住宅街という顔も持っています。さらに、大規模商業施設がそろう藤沢駅の南側が生活圏になっており、日常の買い物や医療機関の選択にも困りません。
住居費の相場を見てみると、近隣の湘南に位置する街と比べて手ごろ。藤沢、辻堂、江の島よりカップル&ファミリー向け家賃相場は1~2割安く、中古マンションの相場はエリアによって差があるものの、3000万円台から手が届きます。
住居費の手ごろさもあり、県内外からの移住者も多い藤沢市ですが特に鵠沼地区は2050年に向けてまだ人口増加傾向にあり。鵠沼は今後も安定した人気を集めるエリアである、と推測できます。
注目すべきは藤沢市内の13地区中、子ども+現役世代(0~64歳)の人口総数で鵠沼地区が1位ということです。子育てファミリー、現役世代が多く、活気あるエリアであることを示しています。なお、2位は藤沢地区の3万7170人で、鵠沼とは8000人以上とかなりの開きに。ちなみに、藤沢市人口総数は44万4,301人です(2026年4月1日現在、藤沢市調べ)。
藤沢市には、妊娠期からの継続的な子育て支援も整っています。現役の子育て世帯はもちろん、これから子どもを持ちたいプレファミリーにとっても、住んでみたいと思える魅力ある街といえそうです。
「愛着」や「生きがい」を感じられる“ウェルビーイングな街”子育てファミリー~現役世代が多く暮らす鵠沼。住民は地元のどんなところに魅力を感じているのでしょうか。
今回調査した「街の魅力項目」では、「外国人、他地域からの出身者など多様な人がなじみやすい」が1位ですが、2位が「この街には自分のお気に入りの場所や風景がある」、5位が「この街らしさに愛着を持てる」となっており、住民の鵠沼愛がうかがえます。
さらに6位には、「この街で暮らしていると、生きがいを感じる」、7位には「地域に顔見知りや知り合いができやすい」がランクイン。「住む魅力」として、利便性や物理的な豊かさだけでなく、街の自然環境や地域コミュニティによる精神的な豊かさが上位にランクインしています。まさに“ウェルビーイングな街”ともいえる鵠沼エリアでは、実際にどんな暮らしができるのでしょうか。
住民ご用達の地産地消マルシェやマーケットが増加中鵠沼の生活圏である藤沢駅周辺では、地元住民が集まるイベントが多数開催されています。例えば、藤沢市は市役所本庁舎サンセット広場で週2回も「藤沢産サンセットマルシェ」を開催。新鮮な農水産物が購入できると好評で、生産者と消費者の交流の場としても定着しているそう。近年は複数のプレイヤーが地元生産者の支援や地域活性化のためにマーケットを開催しており、住民同士が顔を合わせる機会が増えています。こうした他地域からの住み替えでも顔見知りや知り合いができやすい環境が、街への愛着につながっているようです。
住民が回答した「街での行動」を見てみると、1位は「街の自然(海・山・川など)を使ったレクリエーション」、4位に「街の地域活動(町内会や自治会、ボランティア、PTAなど)」が入っています。
鵠沼の「街の自然」といえば、最大の魅力のひとつは、やはり「海」。オーシャンビューのおしゃれなカフェやレストランがあり、サーフィンやヨットなどマリンアクティビティが盛ん。夏には海の家が立ち並び、浜辺で行われるイベントも豊富です。
そんなイメージがある一方で、鵠沼の住民は海を大切な財産と捉え、ビーチクリーン活動に積極的に参加しています。
例えば藤沢市では1977年から「ゴミゼロクリーンキャンペーン」を展開しており、2026年5月の開催で50回目を数えました。また、新江ノ島水族館でも各種エコ活動を継続中。原則、毎月第3日曜日に行われる「えのすいecoデー」で、ビーチクリーンやビーチコーミングを実施しています。
子ども達にマリンスポーツの普及を行う湘南海洋教育スポーツ振興協会では、ビーチクリーンを軸とする海洋環境教育を展開。決して自然に還ることのない、バーベキュー後に放置された「炭」を中心としたゴミ集めや、偏ってしまった砂をならす「すなおし」活動などをしています。
2024年には、2022年に辻堂海浜公園で開始された環境アクションイベント「カーニバル湘南」が、鵠沼の県立湘南海岸公園に場所を移して新たにスタートしました。来場者にマイ食器やエコバッグの持参を推奨し、ゴミ箱を設けない「ゴミゼロイベント」として開催。マイ食器やエコバッグで、どれだけゴミを削減できるかを実体験し、環境保全を自分事にしてもらう仕組みを作っています。
定着しているビーチクリーン活動に加え、鵠沼では子どものころから、地域社会に触れ、自らが鵠沼という街の一員であることを知る機会も豊富です。
例えば、湘南地域の持続可能なまちづくりをめざし、海の環境活動を行う市民団体・湘南ビジョン研究所では、鵠沼海岸で地引網漁を体験し、地場産の魚について学ぶイベントを他の市民団体と連携して開催。獲れた魚は持ち帰ることができるため、地元の海の恵みをいただくことで、地域への愛着を高めることもできます。
また、鵠沼海岸の最寄駅である小田急線江ノ島線・鵠沼海岸駅前から周囲に広がる「鵠沼海岸商店街」では、2025年8月に「子ども おしごと体験チャレンジ」を初めて開催。子ども達は、普段は保護者と一緒に見ていた歯科医院での受付、魚屋での包丁さばき、カフェでの接客、米屋の仕事など、リアルな職業を体験しました。さらにこの企画がユニークだったのは、仕事をした子ども達に、商店街で使える商品券が“給料”として支払われ、体験終了後に商店街で買い物したという“地域循環型”の取り組みだったことです。子ども達はわが街の商店街との距離感を縮め、無意識のうちに地域の一員としての自覚を持ったかもしれません。
他にも、鵠沼エリアで夏休みに行われる「Yワイフェスタ」では、地域の小中高校生が主体的にイベントを実施し、地域住民と児童生徒の交流を図ります。2025年の例では、鵠沼中学校の美術工芸部、家庭部の作品展示、演劇部による公演や、子ども達による店舗運営が行われました。子どもの自律心や地域への愛着が育まれる格好の場所となっています。
鵠沼ではこうした、「子どもが主役、おとなはサポーター、地域の子どもは地域で育む。」といった活動が多く、地域の大人は有志による登下校の見守りや、学校と協働したミシン実習や調理実習等の支援などを行っています。
“鵠沼愛”あふれるボランティア組織「鵠沼地区郷土づくり推進会議」多様な世代が地元・鵠沼を好きになる取り組みや機会があり、それらを継続することで「鵠沼愛」を持つ住民がさらに増えていく――この素敵なサイクルの一翼を担っているのが、鵠沼住民で構成されるボランティア組織「鵠沼地区郷土づくり推進会議」です。
設立は2013年。鵠沼の特性を活かしながら、郷土愛にあふれるまちづくりを目標に、地域の課題解決や活性化、魅力向上に取り組んでいます。目的別に、次の4つの委員会で構成されています。
鵠沼地区郷土づくり推進会議議長の大田哲夫(おおた てつお)さんは、次のように語ります。
「会議の中心メンバーは地域団体や商店街などから推薦された委員や地域在住、在勤の市民による公募委員をあわせ25名ほどですが、各委員会が企画、支援するイベント、取り組みに 多くの地元住民がボランティアとして活躍されています。何十年と長く住んでいる方もいれば、引っ越されてきたばかりの方もいて年代も多様ですが、共通しているのは、皆さん、この鵠沼という緑と太陽と潮風の街に深い愛着をもっていらっしゃること。ボランティアに参加することで生きがいを感じ、地元の知人、友人が増えて、より一層この街での生活が豊かになっているのではないかと感じます。この循環を次の世代につなげていきたいですね」
明治時代、日本初の別荘分譲地として開発された歴史を持つ、鵠沼の松が岡地区。かつてお屋敷が立ち並んでいた住宅地の面影を、令和の今に伝えているのが「松の杜くげぬま」です。そしてここもまた、地元住民ボランティアの活躍の場でもあります。
松の杜くげぬまは、2018年に国の登録有形文化財となった1928年築の「尾日向(おびなた)家住宅」を活用した施設。戦前、この一帯に集積していた別荘建築のたたずまいを体感することができます。歴史的価値のある家屋と庭園を貸しスペースとして利用してもらうことで維持管理の資金を創出し、未来へ残す取り組みを行っています。
この施設の維持管理に大きく貢献しているのが、地元住民ボランティアと家主が連携して20年以上続けている月1回の清掃活動です。時には松の杜くげぬまの利用会員も参加して、枯葉掃きや庭の手入れなどを実施。終了後には和気あいあいとランチを取るのが恒例で、地域住民、利用者の穏やかな交流の場になっています。
松の杜くげぬまの清掃活動に参加しているボランティアのひとり、栗原恵介(くりはら けいすけ)さんにお話をうかがいました。生まれ、育ちともに鵠沼で、東京の大学入学後も自宅から通学。IT企業に就職し、社会人になって初めて鵠沼を離れましたが、転職、独立を経てフルリモートワーカーになり、鵠沼に戻って暮らしています。なぜUターンすることに?
「ひとことで言えば“鵠沼の居心地の良さ”が理由です。地元を知るようになったきっかけは、5年前、海岸を散歩している時に砂浜で『フレスコボール』を楽しんでいる人達を偶然見かけたことでした。フレスコボールは一見テニスのようなんですが、テニスと違って敵がいません。2人1組でラリーを続け、いかにその回数を伸ばすかを競います。相手が打ち返しやすいボールを返し合う、思いやりのスポーツなんです」
フレスコボールに出会ってから週末の仲間との練習が習慣になり、自宅以外の居場所ができたことで「人生が豊かになった」と栗原さんは実感しているそうです。
「続けるうちにどんどん楽しくなって、フレスコボールというスポーツの魅力をもっと広めたいと思いましたし、仕事と無関係の地元の仲間が一気に増えたこともうれしく感じました。そこで『湘南鵠沼フレスコボールクラブ』の代表に就任。さらに、僕のように地元・鵠沼、ひいては湘南地域の良さに気が付いていない人って実は多いのではないかと思い、イベント情報やおすすめスポット、地元の人々のインタビュー記事などを載せたメディア『Locomo』を2022年にリリースしました」
鵠沼でこうしたチャレンジをしているのは僕だけではないですよ、と栗原さん。振り返ると、コロナ禍での外出制限をきっかけに地元で過ごす人が増え、同時に地域の魅力発見や、住民と住民がつながるイベント、例えばカーニバル湘南のような環境保全を目的とする人々を集める取り組みなども顕著になってきたと思います、とのこと。
「そうした試みは地元に受け入れられていて、どこも多数のお客さんが集まっています。僕個人的には、鵠沼って普段は静かで、それほど人通りがない街だと思っているんですが、いざイベントだ、おまつりだとなると、『どこにこれだけの人がいたの!?』と驚くくらい人が出てきて(笑)、皆さん楽しそうに過ごしています」
鵠沼で、さまざまなチャレンジが受け入れられる要因は何なのでしょう。
「この街の“懐の深さ”だと思います。僕のような長期在住者だけでなく、転入したばかりの人が何か始めようとしてもウェルカムでとても協力的なので、この先、また新たなカルチャーが生まれ、この街に定着していくかもしれません。僕も、フレスコボールクラブやLocomoをもっと拡充させながら、これからも鵠沼暮らしを楽しんでいきたいと思います」
栗原さんのように生粋の地元住民が街の魅力を再発見したり、転入者が今までになかった視点から新たな魅力を生み出したりできるサイクルがある「鵠沼」。オープンでフレンドリーな風土と住民の人柄が精神的な豊かさをもたらす“ウェルビーイングな街”を育み、鵠沼を「住み続けたい街1位」にした原動力といえそうです。
●取材協力
藤沢市ゴミゼロクリーンキャンペーン
藤沢産サンセットマルシェ
湘南ビジョン研究所
新江ノ島水族館
うみべのFARMERS MARKET
MARKET251
藤沢夜市
カーニバル湘南
鵠沼海岸商店街振興組合
鵠沼地区郷土づくり推進会議
松の杜くげぬま
湘南鵠沼フレスコボールクラブ
Locomo
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