宇垣美里「おかしいのは赤ちゃんなのか、母親なのか」理想の家族の裏に潜む“狂気”に震撼したワケ

撮影/中村和孝

宇垣美里「おかしいのは赤ちゃんなのか、母親なのか」理想の家族の裏に潜む“狂気”に震撼したワケ

8月31日(月) 15:46

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元TBSアナウンサーの宇垣美里さん。大のアニメ好きで知られていますが、映画愛が深い一面も。

そんな宇垣さんが映画『ナイトボーン -夜哭-』についての思いを綴ります。

●作品あらすじ:理想の子育てを夢見てフィンランドの田舎町に移住してきた新婚夫婦、サーガとジョン。北欧神話の気配が息づく神秘的な森で結ばれた2人は待望の子どもを授かる。しかし、生まれた我が子に拭いきれない違和感を覚えるサーガ。不安は次第に恐怖へと姿を変え、やがて狂気へと暴走していく。

理想の家族の幸福の裏に潜む恐怖を描く北欧発チャイルド・スリラーを宇垣さんはどのように見たのでしょうか?(以下、宇垣美里さんの寄稿です)

赤子が叫んだら一応叫び返すことにしている



私の友達の中で最も気合の入った女が「赤子が叫んだら一応叫び返すことにしている。世の中には自分よりアンコントロールな人間がいるってこと知っといてもらいたいからね。狂い負けするわけにはいかないのよ」と言っていた。

その時はさすがだなあ、とよく咀嚼もしないままにその謎の迫力に圧倒されていたが、今ならわかる。わかる気がする。私の友人は、こうならないために、真顔で叫び返していたのだと。

子どもを産み育てることの理想と現実のギャップ



理想の子育てを夢見て、故郷のフィンランドの森深い田舎町に移り住んだ新婚夫婦のサーガとジョン。待望の子を授かり、子と共に我が家に帰ったものの、どうも様子がおかしい。母のサーガはこの子は本当に私の、人間の、子どもなのだろうかと疑問を抱くようになる。

出産に悪露(おろ)、戻らない体型、ぼろぼろの爪……産後の肉体の変化をリアルに追うと、ここまで身に迫るボディホラーになるだなんて。

青々と神秘的なフィンランドの森やかわいらしい装飾の子ども部屋の絵画のような背景の美しさとは裏腹に、子どもを産み育てることの理想と現実のギャップを生々しく描いている。

耳をふさぎたくなるほど不快に演出された赤子の泣き声



愛して当然のはずのわが子に本能的な違和感を覚え、環境の変化に孤独を極めて精神的に追い詰められていく母親の姿を、サーガ役のセイディ・ハーラが鬼気迫る表情で怪演。

果たしておかしいのは赤ちゃんなのか、それとも母親なのか。

ラストまで赤ちゃんの顔は映らないからずっと不穏なうえに、思わず耳をふさぎたくなるほど不快に演出された赤子の泣き声は、鑑賞後の今も脳裏にこびりついている。

あの少年が父親役を演じるようになったという感慨



夫・ジョンを演じるハリーポッターのロン役でおなじみのルパート・グリントの姿に、あの少年が父親役を演じるようになるだなんて……と自分と同世代なので当たり前のことではありながら、なにか感慨深いものを感じた。

しかし、勝手に義両親を家によんだり、できるわけもなくプロでもないのに授乳のアドバイスをしてみたりと、かなりありがた迷惑な存在に感じてしまった。

ラストの展開含め、性別や妊娠・出産、子育ての経験の有無で印象がずいぶん変わりそう。立場の違う人の感想をぜひ聞きたい。

『ナイトボーン -夜哭-』
配給/NOROSHI、ギャガヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開中© 2025 Elokuvayh/ö Komee4a Oy, Filmai LT, Bluelight, Getaway

<文/宇垣美里>

【宇垣美里】
’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、テレビやCM出演のほか、執筆業も行うなど幅広く活躍している。

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