海外視察3.6億円、質問は役所が代筆…福岡県議会の“ガラパゴスな腐敗”を元朝日新聞記者が暴く

現金授受疑惑において金銭を要求した人物と名指しされた中尾正幸・福岡県議会副議長は突如、議員辞職届を提出(写真/産経新聞社)

海外視察3.6億円、質問は役所が代筆…福岡県議会の“ガラパゴスな腐敗”を元朝日新聞記者が暴く

8月31日(月) 8:52

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朝日新聞で20年以上、政治取材に携わってきた今野忍氏が、永田町の表舞台だけでは見えない「政治のリアル」に迫る。今回は、海外視察や現金授受疑惑に揺れる福岡県議会から、地方政治に巣食う“腐敗の構造”を読み解く。

福岡県議会「ガラパゴス」の実態

今年1月に朝日新聞を辞めた。政治部で20年以上働き、政治のことはひと通りわかっているつもりでいた。でも、フリーになって、勘違いだったと思い知った。私が「政治」だと思って書いてきたものは氷山の一角でしかなかった。

だから本連載では、より政治の実態を深掘りしたい。まず、取り上げるテーマは「政治とカネ」。永田町にフォーカスを当てる前に、福岡に触れたい。

西日本新聞が全国の県議会にアンケートをかけた。公費による海外視察は福岡県議会が4年間で31回、総額3.6億円。回数も金額も、回答した議会のなかで最多だ。東京と大阪は4年間でゼロ。財政難だから自粛したそうだ。

人口も予算も桁違いの東京がゼロで、福岡が3億円超。明らかにおかしい。しかも、ハワイの常連である。昨年1月は県議4人・3泊5日の視察で1人あたり約300万円。会見でこれを問われた蔵内勇夫議長は、「海外“旅行”は続けます」と言い間違えた。

そこに議長・副議長ポストを巡るカネの話が乗っかった。議長になる前、自民会派の幹部から約2000万円を要求されて払った——そう告発したのが吉松源昭県議だ。幹部側は全否定し、言い分は真っ向から衝突したが、7月24日に突如、当事者の一人である中尾正幸副議長が議員辞職した。辞職を伝えた中尾氏が「トカゲの尻尾切りと言われるかも」と口にすると、蔵内議長はこう返したという。

「君は並のトカゲじゃないよ。ガラパゴスに生存する、進化しないオオトカゲだ」

言わせてほしい。進化していないのは中尾氏だけじゃない。福岡県議会がガラパゴスだ。なぜか?私がゾッとしたのはハワイでもカネでもない。県の執行部が県議に代わって議会の質問を作っていた、という話のほうだ。

議会は行政をチェックするためにある。だから、知事も議員も別々に選挙で選ばれる。これを二元代表制という。だが、県議の質問を監視される側の役所が書いていた。答える人が問題まで作っていたなら、あの議場で行われていたのは台本の読み合わせだ。

腐敗を生む「選挙で落ちない」構造

私は‘06年から2年間、朝日新聞の秋田総局にいた。その秋田には、今も語り継がれる事件がある。1994年度からの3年間で、不適正な公金支出が約43億6600万円にも上ったのだ。食糧費や旅費の名目で飲み食いやカラ出張に消えていた。職員514人が処分され、返還額は約28億9900万円にも達した。

最終的に知事が辞職に追い込まれたが、居酒屋チェーンで割り勘で飲むと、「10年前なら君を料亭で接待できたのに」と懐かしむ幹部もいた。反省、してないでしょ。

富山もある。‘16年に地元のチューリップテレビが自民重鎮の政務活動費の不正をスクープし、半年で14人の市議が辞めた。その一部始終を追った映画『はりぼて』は、騙されたと思って観てほしい。ゲラゲラ笑える。そして最後に、自分の街の議員の顔を思い出して、笑えなくなる。

福岡も秋田も富山も、共通するのは、腐敗を生む要因だ。要するに、選挙で落ちない。蔵内議長の地元・筑後市選挙区は定数1。‘07~’19年まで、4期連続で無投票だった。候補が蔵内氏だけだったからだ。筑後市の有権者は県議を「選ぶ」機会がなかったわけだ。

‘23年、20年ぶりの選挙戦が繰り広げられた。相手は無所属新人の前副市長。蔵内氏は勝った。ただし、差は1652票。自民党公認、県連会長も務めた10期の重鎮、党本部の選対委員長まで応援に入って、これだけの票差である。

本音はたいてい、言い間違いに表れる。蔵内議長が「海外旅行は続けます」と間違うなら、こちらも言おう。来年の統一地方選で落とします——失礼、選び直します。

文/今野忍

「壁耳」とは?
政治記者が稀に行う、壁に耳を押し当てて非公開の会議・会合の内容を探る取材手法。「聴診器を使う先輩もいた」(今野氏)という

【今野忍】
1975年生まれ。アクセンチュアを経て、朝日新聞記者に。'09年に政治部配属となり、菅義偉氏や岸田文雄氏の番記者などを経験。’26年に独立

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