夏休みの終わり、少年時代の記憶と幻のような少女珠玉のバカンスアニメーション「見えない子ども」

アンドレ・ランドン「見えない子ども」(原題:L'enfant invisible)

夏休みの終わり、少年時代の記憶と幻のような少女珠玉のバカンスアニメーション「見えない子ども」

8月29日(土) 9:00

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8月19日から23日まで開催された「ひろしまアニメーションシーズン2026」(HAS2026)に参加した。会期中には40以上のプログラム、300以上の作品が上映された。ここでしか見られない作品に期待し、監督名もタイトルも知らず偶然見た作品が、いつまでも頭から離れない……それが映画祭参加の醍醐味のひとつだろう。

今年は、予備知識を入れずに鑑賞した、知られざるフランスのアニメーション作家のアンドレ・ランドン特集が個人的にとりわけ印象深いプログラムであった。

ランドン監督が1978~83年にかけて個人制作し、84年に発表した約60分のアニメーション「見えない子ども」(原題:L'enfant invisible)は、フランス老舗の独立系出版社、エディション・ド・ミニュイ(Éditions de Minuit)が制作。1941年、ナチス・ドイツ占領下のパリで設立された同社は、映画化されたジャン=ピエール・メルビルの「海の沈黙(1947)」をはじめ、アラン・ロブ=グリエ、マルグリット・デュラス、ジャン=フィリップ・トゥーサンら映画ともかかわりの深い作家の作品も数多く送り出している。

「見えない子ども」は、《immédiatement en moi un enfant se lève qui prend ma place…》(たちまち、私の内から一人の子どもが立ち上がり、私の代わりとなる)という、プルースト「失われた時を求めて」からの引用文の紹介から始まる。夏休みに海辺の別荘を訪れたひとりの少年が、“透明な少女”と出会う。少女は幻なのか、彼の分身なのか。ふたりは次第に親密になり、夏が終わり、冬が来てもその少女は少年のそばにいて……という物語。セリフはなく、鳥のさえずりや波の音、そして心地のよい音楽ともに、海辺の休暇、ボーイミーツガール、そして夏の終わりとその後を詩的に描く。

実写のフランス映画ファンは、エリック・ロメール「夏物語」(1996)、ジャック・タチ「ぼくの伯父さんの休暇」(1953)、ジャック・ロジエ「オルエットの方へ」(1971)、ギョーム・ブラック「女っ気なし」(2011)などを想起するかもしれない。そして本作も、これらバカンス映画の系譜であると言えるだろう。本作では、(孤独でやや退屈な)夏休みを過ごす、子ども時代の夢想の記憶が立ち上がってくるような、アニメーションでなければできない、アナログかつマジカルな表現に引き込まれた。

この日は、本特集をキュレーションし、ランドン監督と親交を持つアニメーション作家の折笠良監督がトークを行い、ランドン監督が約3万枚のセル画を手描きしたことなど制作手法や、ランドン監督の活動について解説。折笠監督は本作とランドン監督との出会いを通し「もし今後誰にも見てもらえなくても、ずっと作品を作り続ける勇気をいただいた」と、感慨深げに話していた。

海外のアニメーションを見る機会があまりないという実写映画ファンにも鑑賞を勧めたい一作であり、いつかまた夏の終わりに、大きなスクリーンで鑑賞できる日を願ってやまない。

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© ANDRÉ LINDON
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