「昔からルッキズムはあるし、これからもある」「容姿の良し悪しで友達を選ぶのは、人生、浅い人間」。そう言い切るのは、今、日本で一番人気と言っていいヘア&メイクアップアーティストの小田切ヒロさん(44歳)。
現在、中島健人さんがメインMCを務め、Amazon Prime Videoで独占配信中のメイクアップバトル番組『ビューティバトルロワイヤル』でチェアマンを担う小田切さんに話を聞いた。
これから世界に見つかっていく、卵たちのきっかけに
――『ビューティバトルロワイヤル』は若手メイクアップアーティストが技術を競い合う番組です。チェアマンとしてオファーを受けた時はどんなお気持ちでしたか?
小田切ヒロさん(以下、小田切):
とても光栄でした。微力ながら、この美容業界を盛り上げていく一人になれればという思いもありましたし、今回の番組が、時代を次の新しいステージへ持っていく一つのきっかけになるんじゃないかという予感もしました。キャスティングしていただいたという責任もありますし、私自身にとっても挑戦でした。
――「新しいステージ」というのは。
小田切:
まず内容が日韓バトルというところ。異なる国、異なる文化圏でこうしたバトルをするのは世界初です。しかも出演するのは、何年もキャリアを積んだプロフェッショナルではなく、5年以内の卵たち。彼ら彼女らのこれからの人生のきっかけになる。これから世界に見つかっていく、その転機になるわけですから、責任重大です。同時に、彼らはラッキーでもあります。
――ラッキー。
小田切:
私の生きてきた時代にはこんなチャンスはありませんでしたから。このラッキーをちゃんと拾えるように、本物に変えられるように、私がどうにか盛り上げる役目になれればと思っています。
「ルッキズム」は昔からあるし、これからもある
――ここ数年、「ルッキズム」という言葉が急速に広まりました。整形や韓国メイクなどへの憧れが高まる一方で、容姿に触れてはいけない風潮もあります。矛盾するこの動きをどう見ていますか?
小田切:
たまたま今、議題として持ち上げられているだけで、昔からルッキズムはありますし、これからもあります。人間はコンプレックスや自分に足りないもの、それを持っている人に憧れたりリスペクトしたりする。この感覚はなくなりません。自分がどれだけ美しかろうが、どれだけ称賛されていようが、その人であっても、絶対誰かのことを羨ましいと思っている。
――そういうものかもしれません。
小田切:
昔から変わらない本能なんです。韓国アイドルが人気なのも、その憧れをうまくプロモーションしてくるから。かたや今は多様性の時代でもあるので、個の美しさを尊重する流れもある。その両方がミックスされているから、矛盾に見えるのだと思います。
容姿だけで判断するのは、人生が浅い人間
――表面化してきただけ、ということでしょうか。
小田切:
そうですね。ただ、なりたい姿にメイクアップでいくらでも変えられるということが分かりやすくなった時代でもあります。だから今、コスメがすごく売れていますし、メイクをちゃんとする人も増えている。「個を尊重」と言いながら、やっぱりなりたい像はあるし、憧れを持って、そこに近づくためのスキルを磨く人たちは増えた。
憧れは持っていいと思いますが、同時にご自身の良さにも気づかなければいけません。その両立でいいんじゃないかと思います。
――容姿で友達を選ぶのが当たり前になりつつある、という話も聞きます。
小田切:
それは表層でしか付き合っていない関係性です。それ、おそらく若い方ですよね。経験値が浅い人は、表面的な上澄みで判断する生き物なので。年齢やキャリアを重ねて深みが出てくれば、そこでは見なくなっていく。仮に若くない人も含まれているとしたら、それは「人生が浅い人間です」と言い切れます。
人間は“TPO”メイクの力で「隠す」も「生かす」もできる
――メイクには「隠す」側面と「生かす」側面がありますね。
小田切:
両立させることが大切です。人間は“TPO”なんですよ。調子がいい時、悪い時、コンディションによって異なります。悪い状況の時は、隠すメイクをして、調子がいい時は生かすメイクをする。その場にそぐう顔になることが、メイクの力なんです。
――TPOへの判断は、どうやって身についていくものなのでしょうか?
小田切:
若い頃にたくさん失敗することです。ファンデーションが厚すぎたり、アイラインを引きすぎたり。そういう経験の積み重ねで、メイクのTPOをわきまえられるようになる。まずはそれを覚えることが、大人のエチケットだと思います。
「お顔は名刺」メイクで豊かな人生になる
――「これまでメイクに興味がなかった」という人には。
小田切:
「興味がなかった」ということは、今、興味を持ち始めたわけですよね。じゃあ、今からご自身に向き合う時間を作ってください。アイドルに寄せることが正解でもなければ、女優に寄せることが正解でもありません。自分をよりよく見せることは、人への印象を変えます。私はよく、「お顔は名刺だ」と言うんです。パッと見た第一印象は、名刺交換をするのと同じ。印象を良くするメイクをすることが、より豊かな人生につながっていくんです。
<取材・文・写真/望月ふみ>
『ビューティバトルロワイヤル』はAmazon Prime Videoで独占配信中
【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
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