三人いる娘の中で、三女は透明人間。心配性の父親と三姉妹が旅先で様々なトラブルに遭遇する映画「見えない娘 THE INVISIBLES」でしっかり者の長女・風子を演じている近藤華さん。映画監督が夢の風子は、長女でオタク気質なご自身と共通する部分も多かったと語る。見えない妹との共演シーンの裏話など、興味深いエピソードを話してくれた。
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Photo/booro
Styling/中井綾子 crêpe
Hair & Make up/笹本恭平 ilumini.
Text/佐久間裕子
――ファンタジックでかわいいけど、うるっとくる映画だと思いました。脚本を読んでの感想はいかがでした?
近藤:一体どうやってひかりという透明人間を表現するんだろうと、想像がつきませんでした。
現場ではグリーンバックだらけになるのかなと思っていましたが、実際はそうではなくて、テグスとかアナログな手法を使っていました。そうやって撮った映像には人の動きがそのまま伝わって、人間・ひかりを作っている感じがするなと思いました。
――ひかりの姉である長女・風子を演じています。風子という役の印象はどんな感じですか?
近藤:自分と似ている部分が多いなと思っています。私も妹がいる長女で、オタク気質なところもあるので。そして風子は言いたいことを周りに言うタイプではなくて、そこもすごく似ています。撮影中も役作りしてというより、“ほぼ自分”みたいな感じで演じていました。
――風子の役柄やお芝居について、竹林亮監督とはどんなお話をされたのでしょうか。
近藤:竹林監督はこちらに任せてくれる方で、リハーサルをたくさん重ねてくださったのもありがたかったです。「ただ演じてください」と言われても透明人間と家族ってどう表現すればいいのか難しい部分もあったので、目隠しをして、ひかり役の鈴木凜子ちゃんに周りを走ったり動いてもらったりしました。それだけで姿が見えなくても人が動いているのをどう感じるのかがわかりました。
――目に見えない妹がいるのはどんな感覚でしたか?
近藤:目には見えなくてもその場にいて感情もある。見えないということ以外、家族として変わりないと思いました。そして観客の皆さんと同じように、演じている私たちにもひかりは見えていないし、「ここだろうな」って勘で感じているだけで。曖昧だったけど、それが演じていてすごく楽しかったです。
――目に見えないひかりは風子にとってどんな存在だと思いました?
近藤:風子的には当たり前にいる存在なので、妹のひとりとして、ちょっと不思議でいいでしょうぐらいに思っているんじゃないかと思いました。
――ひかりと一緒のシーンで、難しかったことはありましたか?
近藤:タクシーに乗っているシーンは、風子と次女の音々でひかりを挟んで座っているんです。意識しないで音々と話そうすると、ひかりが座っている場所に手が出ちゃったりするんですよね。ここにいると意識して手をキュッと上げたりしないと、ひかりが存在できなくなっちゃう。だから「そこにいる」ということを常に頭の中に置いておくようにしました。でも時々ひかりの方に手が出てしまって「やば……」ってなることもありました。
――撮影中、ひかりとの会話はどうしていたのですか?
近藤:現場に凜子ちゃんも来て、テストのときは実際に一緒に演技をして、本番になったら抜けてトランシーバーでセリフを言ってもうという形でやっていて。本人が現場にいてくれたので背丈はこれくらい、肌はこんな感じってわかってすごくやりやすかったです。
――音々役の矢山花さん、ひかり役の鈴木凜子さん、ふたりの妹と共演した感想は?
近藤:ふたりともすごく元気で、毎熊(克哉)さんも混じった4人で一緒に折り紙を折ったり、手遊びしたり、いろいろ遊んでいました。撮影中ずっと楽しかったです。
――お父さん役の毎熊さんと共演した感想もお聞かせ下さい。
近藤:怖い役を演じている印象があったので、どういう方なんだろうと思っていました。でも、娘たちの遊びに加わって下さったり、待ち時間にちょっとヘンなステップで踊ってみたりと、すごく優しい方で現場の雰囲気を明るくして下さいました。
――三姉妹の父である星野学は、ひかりが透明人間であることを知られないために用心していますが、ちょっと抜けたところもある人だと思いました。風子と学の親子関係についてはどう感じました?
近藤:お母さんが亡くなって、お父さんが苦労しているということは風子も感じていると思いました。なので、お父さんに笑って欲しいって思いがすごくあるんじゃないかと。でも将来について相談したいと思っても、「どうせ私にはあまり興味ないのかな」って、お父さんに対してちょっと諦めている部分もあるのかなって感じました。
――寺島進さん、余 貴美子さん、宇野祥平さんと、個性的な俳優さんがたくさん出演していらっしゃいます。撮影中のエピソードを教えて下さい。
近藤:寺島さんとはタクシーでずっと一緒に行動していて、ひかり役の凜子ちゃんが寺島さんに話し掛けて、話が盛り上がったんです。それがきっかけでいろんな方と話せるようになったので、ひかりちゃん本当にありがとうって思いました。余さんが演じたおばあちゃんとは長く会っていないという設定だったので、あまり親しい感じではなかったけど、ラストシーンのワーッと盛り上がるところは、みんなで話し合いながら展開を一緒に考えていったので、それも良い経験でした。宇野さんは出演している作品をたくさん観ていたので、私としては「宇野さんだ!」って嬉しくなりました。本当に優しい方で、「これで大丈夫?」って聞いて下さったりしてありがたかったです。
――とある島から東京まで、家族4人で旅をするロードムービーでもあります。その道中での撮影の思い出はありますか?
近藤:撮影で行った神津島は前乗りしたので、家族4人で島を散歩しました。長い階段の上に神社があって、みんなで頑張って登って「空気がおいしいね」って話したり。そんな時間がすごく良かったなって思います。
――ロードムービーを初めて経験していかがでした?
近藤:仕事でいろんな場所に行けるのがすごくいいなって思いましたね。そして完成した作品を観て、映画というより自分の思い出の何かを見ているような感覚になりました。こういう楽しいことがあった、みたいな。そんな感じで見ちゃいました。
――では完成した作品の感想は?
近藤:私たちはひかりちゃんが見えているわけではないし、ひかりちゃんがちゃんと存在できているのかわからない状態で撮っていることも多かったんですね。でも作品を観たら、「ちゃんとここにいる。良かった」ってすごく安心したというか、「いる!」って感動しました。
――この作品は、父である学が娘のひかりが見えないということに向き合う物語でもあります。近藤さんご自身は、見ないようにしてきたものに向き合った経験ってあります?
近藤:そうですね……、私は知らないところに行くのは結構好きではありますが、いつも緊張はしちゃうんです。新しい環境もそうですけど、大丈夫かなって不安になる。でも行ってみると、毎回来て良かったと思えるし、今日楽しかったで終えることができるので、毎回ポジティブな気持ちで行ったほうがいいなとは思っています。
――新しい現場には心配しながら行くタイプですか?
近藤:緊張はすごくします。あまり緊張しているように見えないってよく言われますけど(笑)。
――人見知りですか?
近藤:はい、自分から人に話しかけることはあまりできないかもしれません。
――ではこれから俳優としてやってみたい役や作品を教えて下さい。
近藤:今の年代だからこそというジャンルでいうと、学園ドラマですかね。役柄では、あまり現実では会ったことがないような人を演じてみたいと思っています。ほんわりした答えになってしまいましたが、自分の知らない人になってみたいなって。具体的にどういう人かは出て来ないんですけど。
――普段出会わないタイプの人というとサイコパスとか。
近藤:そういう悪役系もいいですし、自分が静かな方なので、すごく明るい役だったり。逆に全然喋らない人とか、極端な役にも興味があります。作品ではコメディーもやってみたいと思います。自分自身がコメディーを見るのが大好きなので。演じてどうなるのかはわからないけど、出たいって気持ちはあります。
――今作でも宇野さん演じる警察官が出るあたりは、コメディーの要素がありました。
近藤:そうですね。今回の作品はコメディー要素も強くて楽しかったです。ただ今回私は反応する側だったので、演技で反応していただけでした。笑わせる方の演技はすごく難しそうだと思いますが挑戦してみたいです。
――『見えない娘 THE INVISIBLES』は韓国の富川(プチョン)国際ファンタスティック映画祭で、ワールドプレミア上映されました。富川に行ってみていかがでした?
近藤:仕事で海外に行くことに憧れがあったので、行くことができてすごく嬉しかったです。そして初のレッドカーペットも歩いたのですが、思ったよりあっという間に終わりました。歩いている間は、現実じゃないみたいな不思議な感覚でした。
――富川市の子供たちが審査員の「Children’s Fantastic Choice Award」も受賞しました。
近藤:すごく嬉しいです。子供が見ても大人が見ても楽しめる映画としての証明になったというか、韓国の子供たちにもおもしろいと思ってもらえてすごく嬉しいです。
――菅田将暉さんの「ギターウサギ」のミュージックビデオではクリエイティブ・ディレクターを務めていらっしゃいます。俳優以外にも才能を発揮されていますが、これから挑戦してみたいことはありますか?
近藤:自分はアニメを描くのがすごく好きで、ストーリーがあるものはまだ作っていないので、ストーリー性のあるアニメを作りたいなと思っています。今はBGMもAIを使って作っています。アニメーションの工程でいう撮影の部分も上手くなっていけたらなって思います。
――Pop’n’Rollはアイドルの方もたくさん登場するサイトですが、近藤さんにとってのアイドル的存在を教えて下さい。
近藤:中村佳穂さんが大好きで、いつも曲を聴いていて、私にとってアイドル的存在です。
――好きになったきっかけは?
近藤:NHKの「シャキーン!」という子供向け番組の中に歌のコーナーがあって、そこで『72億人分のあの人』という歌を歌っていらっしゃったんです。番組を観ていた当時は中村佳穂さんが歌手として活動されていることを知らずに、この歌すごくいいなと思っていました。中学生ぐらいになって「竜とそばかすの姫」の声と歌を担当されていたことをきっかけに歌手だと知って、それから聴くようになりました。
――どんなところが好きですか?
近藤:ものすごく歌がお上手なんです。ライブにもよく行ってますが、本当に体が宙に浮いているような感覚になるぐらい、なんか……すごく神聖なものを私は今見て聴いているなと思わされる存在です。
近藤華
2007年8月6日生まれ、東京都出身。
2021年にCMで芸能界デビュー。近年の出演作に映画『サユリ』(24年)、『未来』(26年)、ドラマ「僕達はまだその星の校則を知らない」(25年)、「小さい頃は、神様がいて」(25年)等。現在放送中の連続テレビ小説「風、薫る」に出演。
『見えない娘 THE INVISIBLES』
8月28日(金)全国公開
出演:毎熊克哉、鈴木凜子、近藤華、矢山花、寺島進、余 貴美子、友近、
濱田祐太郎、宇野祥平、円井わん、浅沼晋太郎、坂口涼太郎、板尾創路、
加藤雅也、映美くらら
監督:竹林亮
企画・脚本:夏生さえり・竹林亮
主題歌:くるり「ばらの花」
配給:PARCO、CHOCOLATE Inc.
©THE INVISIBLES Production Committee
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