話題作への出演が続く早瀬憩が熱望した朝子という難役【インタビュー】

話題作への出演が続く早瀬憩が熱望した朝子という難役【インタビュー】

話題作への出演が続く早瀬憩が熱望した朝子という難役【インタビュー】

8月26日(水) 11:00

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数々の映画賞を受賞した『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野量太が、10年ぶりに完全オリジナル脚本で挑んだ映画『私はあなたを知らない、』が完成。8月28日に全国公開される。ヒロイン・朝子を演じたのは、映画『違国日記』など、話題作への出演が続く早瀬憩。オーディションを通して「私が演じたい」と熱望した朝子役についてたっぷりと語ってくれた。

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Photo/宮坂浩見
Styling/佐々木翔
Hair&Make up/坂本志穂
Text/佐久間裕子

――オーディションを受けて、朝子役に決まったときの心境はいかがでした?

早瀬:オーディションは数回あり、回数を重ねるごとに「私が朝子を演じたいんだ」という気持ちと朝子への思いが強くなっていったので、決まったときはすごく安心しました。中野監督はオーディションのときから実際の現場にいるように演出をつけて下さったので、監督の熱意を感じていました。監督にとって大切なオリジナル脚本の作品ということも知っていたので、ほっとしたのと同時に、その物語の核となる朝子の人生を自分が背負っていかなければいけない、監督の熱意を知っているからこそ、その期待に絶対に応えたいって責任感とプレッシャーも強く感じました。

――オーディションが進んでいくに連れて、手応えみたいなものは感じていましたか?

早瀬:手応えはそんなに……というかほとんどなくて。監督と何度か会ってお話を重ねるに連れて、この監督の作品に出たい、一緒にお仕事をしたいって気持ちが強くなっていきました。そして、朝子という役にどんどん入り込んで、のめり込んでいって、演じたいと強く思うようになりました。

――朝子への気持ちが強くなっていったとおっしゃっていましたが、具体的にどんなことがあってそうなったのでしょうか?

早瀬:何度か演じている中で、朝子に共感を覚えて、感情移入してしまう時が多かったんです。言葉にするのが難しいのですが、朝子を演じている時間は、大変なシーンばかりだけど楽しくて。監督に「こうしてみて」と言われて、それに朝子として応えようとする時間もすごく有意義だったので、オーディションで朝子を演じて、この監督の下で芝居をしたいって気持ちが強くなりました。

――オーディションで監督に演出を付けていただいたことで、朝子の解像度も上がっていった?

早瀬:はい、オーディションは面会のシーンを抜粋した台本でお芝居をしていたので、ちょっとしか朝子について得られる情報はなくて。その中でも自分なりに朝子の心情や状況を考えて、その上で監督とも話してという作業を繰り返していくうちに、役柄の解像度が上がり、朝子への思いも強くなりました。

――最初に早瀬さんご自身が感じていた朝子の人物像はどんな感じでした?

早瀬:最初に演じたシーンの影響もあると思いますが、すごくまっすぐで素直、でも自分の気持ちをちゃんと持っている子だなと思いました。でも演じていくうちに、朝子に起きたこと、それによって葛藤と苦痛があることを知って、朝子の強い部分や弱い部分、素敵なところやおもしろいところなど、徐々に解像度が上がって理解するようになり、朝子という人物を好きになっていきました。

――朝子役に決まり、撮影に向けて役作りとしてどんな準備をしましたか?

早瀬:台本を読み込んで、わからないところは監督に相談するということを繰り返しました。そして祖母役の原田美枝子さんに朝子としてお手紙を書いたり、夕平の裁判資料を自分で調べてまとめてみたり。あと朝子が初めて「面会に行きます」って夕平に書いた手紙はどんな文面だったのだろうって、自分で考えて書いたりもしました。朝子がしたであろう行動をして、その感情を自分で味わい、徐々に朝子と自分を近づけて、一心同体にしていくという作業をしました。それとこれはインしてからの話になりますが、幼少期の朝子のシーンも観に行きました。

――朝子に近づくための工夫がいっぱいですね。中野監督から「こういうことをしてみて」という提案はありましたか?

早瀬:原田さんに書いた手紙は、監督からやってみたらとアドバイスをいただきました。実際に手紙を書いてみたら、私自身が13年間このお婆ちゃんに育ててもらったって気持ちになることができて。おばあちゃんと朝子の関係性みたいなものをすごく掴むことができたのでありがたかったなって思います。

――倉田瑛茉さん演じる子供時代の朝子の撮影をご覧になっていかがでしたか?

早瀬:黄色い風船と抱っこされている子供を見た朝子が、「あれ、もしかして私も……」って断片的な記憶を思い出すシーンがあるので、そこに活かすことができました。あとは朝子としての自分の人生の話なので、記憶はなくとも一直線で繋がっていると思ったんですね。だから自分の人生として一度、子供時代を見ておきたいという気持ちで現場に行きましたが、見ておいて良かったなって思いました。

――朝子には子供時代についての記憶がないわけですよね。でも早瀬さんは子供時代の撮影を観たことによって知ってしまった。それによって大人になった朝子を演じる上で苦労しませんでした?

早瀬:しました(笑)。私は台本を読んでしまったし、幼少期の幸せだった家族も見てしまった。夕平のやったことや彼の葛藤も全部知ってしまっているので、面会のシーンで初めて夕平に会うのに、彼のことをすごく知っている感情になってしまって。だから監督に「朝子は夕平について自分で裁判資料で調べたことしか知らない、何も知らないんだから」と、軌道修正していただきながら演じていました。

――見なきゃ良かったと思ったりしませんでした?

早瀬:それはないです(笑)。見て良かったけど、ただ見てしまったからこその感情が出てしまったので、そこは「もっと抑えなきゃ。私は夕平を知らない」と思いながらやっていました。

――大学生になった朝子を見た後に、倉田さんが演じる5歳の朝子を見て、子供時代の朝子はこんなに無邪気だったんだと思いました。朝子として5歳の朝子を見ての感想はいかがでした?

早瀬:朝子には記憶がないので、もし5歳の自分を見たら嬉しいと思います。なぜかというと、私は撮影現場に見学に行って、夕平と母親の紗月と朝子が幸せそうで、すごく嬉しかったから。その光景をずっと見ていられるぐらいすごく幸せそうで、大人になった朝子があの光景を見たらすごく誇らしく感じるだろうなって思いました。こんな素敵なお母さんがいて、こんな素敵な時間を過ごせていたんだって幸せを朝子も感じるんじゃないかと思います。

――資料によると小さい頃の朝子からクセを盗もうと思っていらっしゃったそうですね。

早瀬:今まで逆に私が誰かの中高生時代を演じることが多くて、自分の役の幼少期がいるという経験がなくて、どうしたらいいのかわからなかったんですね(笑)。だから何かヒントになるようなことがあればいいなと思って、瑛茉ちゃんの現場に行ったんですが、本当に行って良かったと思いました。動きやクセもそうですが、それ以上に3人の幸せな光景を見られたことが撮影中の自分にとって大きな財産のようなものになったと思います。

――夕平を演じた坂口健太郎さんとの共演はいかがでしたか?

早瀬:坂口さんとご一緒したのは、面会室のシーンだけでした。台本を読んで私が想像できることには限界があって、面会室のシーンに関しては実際にやってみないとわからない部分が多い状態で撮影に臨んだんです。でも夕平が面会室に入ってきたときに、本当に朝子になれました。朝子が13年ぶりに夕平に会いに来た気持ちってこんなだったのかなって。すごく緊張するな、心臓がバクバクいってるな、八木夕平って今こんな顔しているんだ……そういう気持ちになれたんです。面会は5回あって、重ねていく中で夕平の言葉や表情から愛してくれていたんだ、今もすごく愛してくれているんだって、ひしひしと伝わって、そこから私自身も思いもよらなかった感情になったり、思わず泣きそうになったり。それは坂口さんに引き出してもらったものなので、すごく感謝しています。

――現場での佇まいなども含めて、坂口さんの俳優としてすごいと思ったところはありましたか?

早瀬:夕平という役柄も撮影も本当に大変だったと思いますが、共演者の前や現場で、その大変な顔を一切見せないんです。幼少期の朝子のシーンを見学に行ったときも、坂口さんの周りに自然と人が集まって、皆さんを笑顔にする力がある、すごく穏やかな方でした。坂口さんのお人柄のおかげで現場の風通しもすごく良かったと思いますし、みんながここにいたい、楽しいなと思える現場にしてくださっていたのかなって。そういう部分がすごく素敵で、私もそんな俳優さんになりたいなと思いました。

――夕平との面会のシーンはふたりの気持ちがどんどん変わっていくところが見どころになっていると思いますが、その細かい変化は坂口さんと監督と話し合いながら作り上げていったのですか?

早瀬:監督、坂口さん、プロデューサーも含めて、たくさん相談しながら撮りました。5回ある面会を2日間で撮り切らなきゃいけなかったので、心身共にすごく大変な撮影ではありましたが、おそらく編集段階でも考え尽くされた場面になっていて、監督は現場でも考えていました。例えば、面会に来る前に弁護士の町村さんのところでこういうことをしたから、朝子はこのテンションだった、夕平の発言で朝子は愛を感じたから夕平の警戒心がほどけたとか、いろいろ話し合いました。ヘアメイクや衣装にもこだわって下さって、朝子の服装がワンピースになったり、前髪を徐々に分けて、心の開き具合を表現したり。演じていて、そういう細かいこだわりに助けられた部分はたくさんあったと思います。

――朝子を演じて一番難しかったところを教えて下さい。

早瀬:やはり……面会室です。面会室のシーンは全部ですけど、特にラストに向かっていくに連れて難しくなっていきました。夕平の気持ちが変化していって、朝子がその変化に希望を持ってしまう様子を見せたかったので。話は少し反れちゃいますが、朝子はまっすぐで純粋だから、夕平と自分の母親の事件を調べて、夕平に面会に行き、のめり込んでいきます。無意識ではあるけれど朝子はすごく熱中している。その様子から町村弁護士や、周りの大人たちは純粋さ故の危なっかしさを感じているんです。その恐ろしさや儚さみたいなものが伝わったらいいなと考えて演じました。

――この映画を通して一番成長できたと思うのも、その細やかな感情表現でしょうか。

早瀬:そうですね。撮影を通して、全部がチャレンジの日々で、すごく成長させてもらったと思っています。監督から受けた演出もそうだし、大前提としてこの作品に出合えて、朝子として生きられたこと、撮影した1か月の日々……本当に毎日が濃くて、全部が自分の糧になりました。貴重な時間を過ごすことができて、全部が学びになったと思っています。

――オーディション中から中野監督の熱意を感じていたとおっしゃっていましたが、現場で実際に演出を受けてみてどうでした?

早瀬:想像以上です。作品に対しても、演出も熱量が高くて愛に溢れた方でした。

――どんなときに愛を感じました?

早瀬:ずっとです。妥協がなくて、それが本当にありがたくて。演出中も「もっといける、もっとやれるよ」って励ましていただくことが多くて、監督が私の120%の力を引き出そうとして下さったので、そのおかげで私はもっと頑張ろう、もっと頑張れると思えました。その結果として監督の求める芝居に少しでも近づけていたらいいなって気持ちでいます。自分としてもハングリー精神で、「がんばるぞ!」って気持ちで臨むことができたので、監督の熱量を私にも分けていただいて頑張ることができました。

――私が演じたいと熱望した作品、完成したものを観たときの感想は?

早瀬:脚本を読んだとき以上の衝撃がありましたし、感動しました。自分が出演している作品は、自分の芝居に目がいってしまうことがよくあるんですけど、今回は一観客として映画を観ることができたので、それは監督の技によるものだと思いました。家族や愛の形について考えさせられたし、すごく素敵な映画になったと思います。

――ラストは映画を観る人々の想像に委ねられる終わり方だなと思いました。この物語に続きがあるとしたら、早瀬さんはどんな風に続いて欲しいと思いますか?

早瀬:タイトルにもなっている「私はあなたを知らない、」という言葉は劇中に2回出てきます。それぞれ違う意味で投げかけられていて、朝子が言った言葉は、朝子なりの夕平への最大限の愛情が込められていると私は思いました。ラストの後、二人がどうなったか私にはわからないけれど、朝子を演じた身としては二人の将来は、きっと良いものになるだろうなと思うし、良いものであって欲しいと信じたい気持ちがあります。

――Pop’n’Rollはアイドルの方もたくさん登場するサイトですが、早瀬さんにとってのアイドル的存在を教えて下さい。

早瀬:私が芸能界に入ったきっかけが欅坂46さんだったので、今でも欅坂さんが推しです。あとアイドルではないですがSUPER BEAVERさんも好きですし、先日、DISH//さんのライブに行かせていただいて、ハマってよく聞いています。

――音楽が好きそうですね。

早瀬:はい、音楽は好きです。

――欅坂を好きになったきっかけはなんですか?

早瀬:初めて聞いたときに、「なんだこのカッコイイ曲は!」と思って、それから調べて徐々に沼にハマっていきました。初めてライブに行ったときに、すごく勇気を与えてもらって、皆さんがキラキラして見えました。私もこんな風に人に勇気を与える存在になりたいと思ったのが、芸能界に入るきっかけになりました。最初は俳優一本だったわけではなく、いろいろやっていくうちに演技をしているときが私は生き生きしているかも、楽しいなと思うようになって俳優になりたいと思いました。

――ちなみに欅坂46の推しは?

早瀬:てち(平手友梨奈)が好きでした。「うちの弁護士は手がかかる」というドラマで、平手さんの中学生時代を演じたんです。これもオーディションで、「絶対受かってやる!」って思いました(笑)。

――受かったときはどんな心境でした?

早瀬:すごく嬉しかったです。

早瀬憩
2007年6月6日生まれ、千葉県出身。
映画『違国日記』、『あのコはだぁれ?』での熱演により、第67回ブルーリボン賞新人賞や第16回TAMA映画賞最優秀新進女優賞に輝いた、若手実力派として注目を集める。近年の主な出演作にドラマ「サバ缶、宇宙へ行く」(26年)、映画『モブ子の恋』(26年)、『マジカル・シークレット・ツアー』(26年)、『だぁれかさんとアソぼ?』(26年)等。待機作に映画『見上げてごらん』(10月30日公開)、映画『呪いのスマホ』(11月13日公開)を控えている。

映画『私はあなたを知らない、』
8月28日(金)新宿ピカデリーほか全国公開

出演:坂口健太郎
早瀬憩堀田真由倉田瑛茉
稲垣来泉和田光沙片山友希畦田ひとみ田牧そら
渡辺真起子足立智充黒田大輔
滝藤賢一/原田美枝子
原案・脚本・監督:中野量太
配給:クロックワークス
(c)IDKYPs./Pyramide Productions

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