ろう者監督と聴者監督が協働し、ろう者や聴者、難聴者の俳優たちが対等に出演する映画製作プロジェクトとして、短編映画「水に燃えたつ」の製作が決定した。
本作の共同監督を務めるのは、日本手話を第一言語とする今井ミカ(「虹色の朝が来るまで」「ジンジャーミルク」「黄色い子」)と、日本語を第一言語とする深田晃司(「LOVE LIFE」「恋愛裁判」)。聴者の夫婦とろう者のカップル、それぞれの恋愛の矢印が絡み合い、日本手話と日本語の飛び交う修羅場へと発展していく物語で、将来的には第2弾短編、劇場用長編映画も見据えるプロジェクトだ。
また、今回の製作発表に併せて、特設サイトで本作出演者オーディションの応募を受け付けることが発表された。募集対象は本作の全キャストとなり20代~50代の男女で、応募は8月31日まで。詳細は特設サイト(https://mountaingate.jp/mizunimoetatsu)で確認できる。今秋の撮影を予定しており、2027年の完成、映画祭などでの上映を目指すという。
■「水に燃えたつ」ストーリー
ろう者の大学生・アイコは、日本手話を通じて出会った手話通訳士・ソウジと恋に落ちる。ソウジは「独身」と語っていたが、実は妻・エミを持つ既婚者だった。一方、アイコの恋人とも友人とも言い切れない曖昧な関係にあるろう者の女性・ホタルは、その事実を知らないままアイコと日常を共にしている。
ある日、夫の浮気を疑ったエミがアイコの部屋を訪れたことをきっかけに、四人の関係は思いがけない形で交錯していく。日本語と日本手話、 そして通訳を介した会話が飛び交う中、それぞれの「伝えたいこと」と「伝わらないこと」が幾重にもすれ違い、嘘と誤解、嫉妬と愛情が複雑に絡み合っていく。
やがてホタルは、自身の離婚協議の場で通訳を務めるソウジと再会する。誰かの言葉を他者へ届ける仕事をしながら、自らは最も大切な人に誠実ではなかったソウジ。その姿を前に、ホタルは胸に積もっていた想いをぶつける。傷つきながらも、それぞれが自分自身の本当の気持ちと向き合った先に見えるものとは…。
今井監督、深田監督のコメントは以下のとおり。
■今井ミカ監督
私は、日本語とは異なる言語である日本手話を第一言語として生きているろう者である。日本手話には文字がなく、「危機言語」とも言われている。だからこそ、手話で生きる人々の身体や視線、行動、時間の流れ、そこに生きる人の存在そのものを、映画というかたちで未来に残したいと思い、映画を作り続けている。
私自身、言語的少数者であると同時に、LGBTQ+というアイデンティティを持ち、マイノリティが交差する場所から世界を見てきた。その経験は、これまでの作品にも影響している。マジョリティから見た世界とは異なる、さまざまな視点から生まれる、言葉にできないものを映画にしていく。それが、私にとって映画を撮るということである。
今回は、映画美学校などで縁のあった深田監督と作品をつくることになった。異なる言語、文化、経験を持つ二人が出会うことで、互いの「違い」が未知の表現を生み出すことを楽しみにしている。単純に「聴者とろう者」という二つの立場を撮るのではなく、カメラの後ろにいる、異なる世界を生きてきた二人が、ともに映画をつくる。その過程そのものを作品に刻み込み、新しい映画の可能性を切り拓きたいと考えている。
■深田晃司監督
表現とはなんだろう。多様性とはなんだろう。ずっと考え続けています。
2022年に私は「LOVE LIFE」という映画を作り、日本ろう者劇団で活躍されていた俳優砂田アトムさんに映画に出て頂きました。制作現場での砂田さんの明るく誠実な人柄と演技への真摯な向き合い方に何度も感銘を受け、一緒に映画を作れたことを今でも誇りに思っています。
そして、もっとろう者と聴者が対等に関わり合いながら映画が作れないだろうか、そう考えるようになりました。そんなときに、今井ミカさんの作品に触れ、今井ミカさんと共同で、ろう者と聴者が入り乱れるような映画を作ってみたい、と夢想し始めました。
今井さん、どうぞよろしくお願いします。
この小さな一歩が、私たちにとっても観客にとっても、何か新しい表現に触れられる時間になればと願っています。
【作品情報】
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水に燃えたつ
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