広島市で開催中のアニメーション芸術の祭典「ひろしまアニメーションシーズン2026」(HAS2026)で8月21日、イン・フォーカス・映画祭部門「ヤバいアニメーション映画祭+HASヤバいセレクション」が横川シネマで上映され、「ヤバいアニメーション映画祭」主催の上善若水氏と「ひろしまアニメーションシーズン2026」アーティスティック・ディレクターの山村浩二氏がトークを行った。
2025年年末から始まった「ヤバいアニメーション映画祭」は、2026年中国各都市・日本・アメリカ・タイ・エストニアなどすでに28回以上の上映を重ねている人気のプログラム。「ヤバいアニメーション映画祭」の傑作選に加え、ひろしまアニメーションシーズン側からもその価値観に共鳴する作品をセレクションし、「ヤバいアニメーション」からアニメーションの価値を見直す企画だ。
拙い3DCG映像で「ひどすぎる」とネットで大酷評されたことで、逆に大ヒットを記録中のインディーズ作品「牛来(Niulai)」が、現在中国での社会現象となっているが、「ヤバいアニメーション映画祭」(英題:MOST TRASH ANIMATION FESTIVAL)も低予算で制作され、技術的に“高くも上手くもない”が、味のある表現でいわゆるB級、脱力系、バッドテイストな作品を集め、人気を博している。
上善氏は、上映作のいくつかを紹介。「ヤバいアニメーション映画祭」における最高賞を受賞した「CharlieKillers」は、11分の線画アニメで「作者が中学生の頃嫌っていた英語の先生チャーリーの声を授業中にこっそり録音したものを使っている。中学2年から高校1年までコツコツと書き溜めて作られた作品で、色々なところで上映されたら、みんなチャ―リーのことが好きになってしまった」と驚きのエピソードを明かし、会場を沸かせた。
応募者のバックグラウンドはプロからアマチュアまで様々で、受賞を知らせるも連絡がつかなくなってしまった作者や、メジャーな国際アニメーション映画祭で受賞経験を持つような、ベテラン作家も参加しているという。現在、第2回「ヤバいアニメーション映画祭」応募作品を募集中だ。
本企画で、「ひろしまアニメーションシーズン2026」としてセレクションを担当した山村氏は「自分もアニメーションを作っているし、芸術大学でも教えているので、どういうアニメーションが良いアニメーションなのか?どうしたら良い作品を作れるのか?ということをずっと考えています。選考時に、3,000本以上も観ていると脳が麻痺してきて、自分の価値観が分からなくなることも。一次選考で落とした作品が、後から忘れられなくなって、あれは何だったんだろう?と思うことがある。瞬間的な価値観で判断してしまい、とても大切なものを見逃しているような感覚が毎回ありました」と振り返り、「でも、アニメーションって逆に『枠にはまらないもの』の方が面白いのかもしれない、と段々思えてきたんです。これはないでしょう…というような作品も多く、今回はすごく良質で『やばい』作品をセレクションした」と自信を見せる。
中国語での映画祭名は、日本語の「ヤバい」とは、若干意味が異なるそうで、「ちょうど良いところから少しズレている状態を指す漢字で、その「ズレ」こそが、私たちの考える『ヤバさ』です」と上善氏は解説。その「ヤバい」は、作者の意図と最終的な作品の出来上がりの間のギャップが大きくなった時に生まれるものではないか、と考え「みんな良い作品のジャンルやスタイルは知っていますが、悪い作品には分類もスタイルもなく、ただ悪い作品と一括りにされる。でも、悪い作品の中にも良いところはあります」と持論を述べる。
上善氏ひとりで立ち上げ、最初はただ「ルールのない映画祭をやりたい」という思いから始めた「ヤバいアニメーション映画祭」も、規模が大きくなると、楽曲使用など著作権問題の壁にぶち当たるという話題にも及んだ。現在のメインは2人体制、イベントの都度などでサポートメンバーが入る規模で運営しているそうで、「私たちが大きな組織や大規模な映画祭になってしまったら、ルールをたくさん作らなければいけなくなります。だから、なるべく小さい規模のままでいいと思っています」とそのポリシーは貫く姿勢だ。今回、映画祭や取り組みを紹介する新聞も配布された。
山村氏は「作者が『これを表現したい』という強い思いで作ったカット割りや表現は、たとえ技術的に稚拙であっても深く伝わってきます。一般的に上手く描けている絵でも全く面白くないものはたくさんありますから、『やばいアニメーション』は、そうした既存の価値観を解放していく良いきっかけになっているのでは」と、「ヤバいアニメーション映画祭」の今後への期待も語った。
「ひろしまアニメーションシーズン 2026」は、8月23日までJMSアステールプラザ(広島市中区加古町4番17号)、横川シネマにて開催。上映など各種チケットはオンライン(Peatix)およびJMSアステールプラザ情報交流ラウンジ窓口にて販売中。各プログラム・ワークショップの詳細は公式WEBサイト(https://animation.hiroshimafest.org)で告知している。
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