「あんみつ姫」や自主制作作品上映、南家こうじの功績と魅力に迫る濃密トーク【ひろしまアニメーションシーズン2026】

スタジオぴえろ・NUNOANI塾の原田麻衣子氏(右)とアニメーション研究者の田中大裕氏

「あんみつ姫」や自主制作作品上映、南家こうじの功績と魅力に迫る濃密トーク【ひろしまアニメーションシーズン2026】

8月22日(土) 21:00

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広島市で開催中のアニメーション芸術の祭典「ひろしまアニメーションシーズン2026」(HAS2026)で8月21日、「南家こうじ特集2」が上映され、スタジオぴえろ・NUNOANI塾の原田麻衣子氏とアニメーション研究者の田中大裕氏が南家氏の功績、作品の魅力について語り合った。

南家こうじ氏は、「科学忍者隊ガッチャマン」で作画監督補佐などを務めた後、1974年にタツノコプロを退社。以降はフリーランスとして、TVアニメ「うる星やつら」や「らんま1/2 熱闘編」などのオープニング・エンディングアニメーションを担当。アニメーションと音楽の緊密なシンクロや、洗練された抽象的パターン、多彩な技法や画材の導入といった意欲的な試みの数々で、日本のアニメーション界を牽引。また、NHKの「みんなのうた」では最も多くの楽曲を手がけ、その他広告映像や挿絵、絵本など、クリエイターとしての活躍は多岐にわたる。

この日は、「御先祖様万々歳!」オープニング、OP・EDディレクター/キャラクターデザインを担当した「あんみつ姫」の第1話、オリジナル短編の「とロット」「めがね」が上映された。

まずは田中氏が「前回、ひろしまアニメーションシーズン2024で、NHK『みんなのうた』における南家さんのお仕事にフォーカスし、いくつかの作品をセレクトして上映しました。今回は、クレジットタイトル、本編のキャラクターデザイナーとしてのお仕事、そして自主制作といったオリジナルのプライベートワークという3つの軸で構成しています。前回とはまた違う角度から南家さんのお仕事を紹介したいと考え、原田さんにご協力いただいた」と、第2弾開催の経緯や意図を説明した。

今回、初めてスクリーンの大画面で上映を見た原田氏は、「セル画時代の昔の作品なので、大画面に映すと画像が荒くなってしまうのかなと少し心配していたのですが、意外と大丈夫でしたね」と感想を述べ、「『あんみつ姫』や『御先祖様万々歳!』のOPを、こうして皆さんに見ていただく機会ができたことがとても嬉しかったです。また、南家さんの自主制作作品も、一人でも多くの方に観ていただきたいと思っていました」と話す。

スタジオぴえろの創業者、布川ゆうじ氏の娘である原田氏は、「南家さんのお名前は、『あんみつ姫』のキャラクターデザインや『うる星やつら』のクレジットタイトルを手がけられた方として存じ上げていましたが、強く意識するようになったのは3年前です。父が亡くなった際、遺品を整理していたところ、自宅の部屋から南家さんの絵が出てきたんです。父が南家さんのお仕事を高く評価していたことはもちろんですが、それ以上に南家さんの絵をとても愛していたんだなと実感しました」と振り返る。そして、遺品から発見した南家氏の絵を多くの人に見てほしいという思いから、南家氏に連絡を取り、今回の上映につながったと明かす。

生前の布川氏と南家氏とのエピソードを尋ねられると、「直接南家さんについての話を聞いたことはなかったのですが、父が『うる星やつら』のオープニングに南家さんを起用し、その流れでオリジナル作品『魔法の天使クリィミーマミ』のオープニング演出も任せていたことからも、お仕事を非常に高く評価していたのだと思います」と語り、さらに「また、南家さんから、ぴえろを題材にした絵を見せて頂き、「これ何ですか?」と聞いてみたところ、昔YouTubeなどがない時代に、ぴえろが子ども向けの『ぴえろキッズ』というインターネット番組を配信していたようで、その世界観やキャラクターを描いてくださっていたそうなんです。その素材を見せていただいたのですが、キャラクターの表情が一つひとつとても愛くるしくて。いつか機会があれば、皆様にもお見せできたらと思っています」とファンにはうれしい情報も明かした。

幼少期の原田氏がスタジオぴえろの南家氏の仕事で特に好きだったのが、萩本欽一のバラエティ番組内で制作されたわらべの楽曲『もしも明日が…。』のアニメーションだそう。「あの絵が昔からすごく好きでした。家の中からその資料が見つかった時は本当に嬉しかったです。キャラクターがとにかく可愛らしいことと、動きや感情表現の豊かさですね。太った男の子の猫と女の子の猫が登場するのですが、2匹が愛を深めるシーンの描き方がすごくキュンとするんです。セリフが一切ないのに感情がストレートに伝わってくる表現力が、本当に素晴らしいなと感じました」と述懐。

1993年生まれの田中氏は、「『うる星やつら』などをリアルタイムで観ていない私にとって印象深かったのは、『キョロちゃん』のオープニングです。実物の消しゴムが登場するなど身の回りにある素材とアニメーションを組み合わせていて、今まで見てきたテレビアニメとは全く異なる表現に衝撃を受けました。親しみやすさがありつつ、愛らしく洗練されていたのが記憶に残っています」と思い出を語る。

そして、この日の上映作品の話題に。

「御先祖様万々歳!」のオープニングについて田中氏は「現在のTVアニメや映画ではモーショングラフィックスなどの表現は一般的ですが、当時はアナログの手法で先進的な実験を行っていた」といい、「南家さんは優れたキャラクター描画力を持つと同時に前衛的で実験的なアプローチも好まれていた。ノーマン・マクラレンのような海外の実験アニメーションからも刺激を受けていたのではないか」と分析した。

南家氏がキャラクターデザインとOP・EDアニメーションを手がけたTVシリーズ「あんみつ姫」は、「私も父も大好きな作品です。オープニングでタイトル文字が浮かび上がってくる演出も、とても南家さんらしい字体で。登場する全てのキャラクターが魅力的で可愛らしく、ストーリーにマッチしていると感じます」と原田氏。田中氏は「南家さんのデザインからは、アメリカン・カートゥーンの影響も感じられる」と指摘し、「当時の日本の商業アニメとしては非常に異質な、研ぎ澄まされた魅力がある」と評した。

今回初公開となったオリジナル作品「とロット」に田中氏が「非常に繊細なタッチと心温まる物語が凝縮された、南家さんらしい素晴らしい作品」と感想を述べると、「本当に同感です。ちょっととぼけたロボットが、心を和ませてくれるよう。こんなおもちゃが実際にあったらいいな、と思いました」と原田氏も同意。

最新の自主制作作品「めがね」は、ややブラックなユーモアを感じさせる作品だ。原田氏は「かなり衝撃的でした。南家さんの中にある表現の引き出しの多さを実感しましたし、これを全てお一人で作られているという凄さに改めて感銘を受けた」そうで、「何年もかけて少しずつ作り進め、今年ようやく完成したそうです。南家さんが『自分も最後は何年か後に、あっけなく道の下に消えるかもしれない』 と切ないことをおっしゃっていたのが印象に残っています」というエピソードを明かした。

田中氏はダークさや不条理さ、観客の想像力を掻き立てる作風が「ポーランドのアニメーションなどを彿とさせる」といい、普段のお仕事では優しく可愛らしい作風を求められることが多かったからこそ、自主制作では内に秘めた世界を表現されたのでは」と持論を述べた。

最後に南家氏の作品の魅力を問われた原田氏は、「技術的な専門用語は分かりませんが、とにかく絵が可愛らしく、作品の世界観に合わせてキャラクターを生き生きと描き出してくれるところが最大の魅力。南家さんの絵を見ると自然と笑顔がこぼれてしまうんです。だからこそ、もっともっと多くの方に南家さんの作品を知って、観ていただきたいと願っています」と会場の観客に呼びかけていた。

「ひろしまアニメーションシーズン 2026」は、8月23日までJMSアステールプラザ(広島市中区加古町4番17号)、横川シネマにて開催。上映など各種チケットはオンライン(Peatix)およびJMSアステールプラザ情報交流ラウンジ窓口にて販売中。各プログラム・ワークショップの詳細は公式WEBサイト(https://animation.hiroshimafest.org)で告知している。

【作品情報】
めがね

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