(画像/地域価値共創シンポジウム2026)
8月14日(金) 7:00
「空き家を地域最強の資源に」「シングルマザー世帯は家賃3割引き」――そんな常識破りの挑戦で街を変える不動産業者たちがいます。2026年6月に開催された国土交通省主催「地域価値共創シンポジウム2026」の第1部「第4回 地域価値を共創する不動産業アワード」表彰式では、全国28件の応募から選ばれた7組のイノベーターが集結。地域の不動産業者の新しいキャッチフレーズ「地域とくらしのパートナー」のもと、地域課題に挑む実践者たちの熱い本音と、国が仕掛ける最新の地域再生トレンドをレポートします。
不動産業界にパラダイムシフト! 国とプロが挑む「地域とくらし」の新基準2026年6月18日、都内で熱気あふれる「地域価値共創シンポジウム2026」が開催されました。
冒頭、金子恭之国土交通大臣はビデオメッセージで「不動産業はわが国になくてはならない産業」と述べ、地域の不動産業の役割と期待を表す新キャッチフレーズ「地域とくらしのパートナー」を発表。
単に物件を右から左へ流すビジネスはもう終わりを迎える――そんな時代の変化を証明するかのように、中城康彦(なかじょう・やすひこ)選定委員長(明海大学大学院不動産学研究科長)も、今回の受賞者たちを絶賛、地域再生に必要な「5つの高いハードル」(①包括的な取り組み、②役割分担・協働、③だれでも参加できる仕組み、④事業性の確保、⑤複合・広域で考える)のすべてを高い水準でクリアした「怪物ぞろい」の7組であると総評しました。
それでは、大賞・優秀賞を受賞した7組の取り組みをご紹介しましょう。
・【アワード大賞】
一般社団法人アキヤラボ(富山県南砺市)
「空き家を通じて『はじめる』人を、まちが応援する仕組みに。空き家×起業者とのマッチングを定着させるプロセスデザイン」
代表理事の小西正明(こにし・まさあき)さんは「空き家を地域最強の資源に変える」と語り、活動エリアを南砺市の井波地区、半径500m以内に限定・集中。エリア内の情報掌握を徹底し、わずか5年間で55件の事業者と空き家を結びつけました。50~70代の地域住民を対象に、足を使って空き家を発掘するとともに、起業希望者の情報を8割以上把握。それら開業を目指す仲間が月1回集まる「ミライ店主会」の運営など手厚いサポートで安心感を醸成していきました。
同時に、物件の物語や町の歴史を重視した総合案内サイトの運営や、開業に動き出した人の想いをオウンドメディアやSNSで広く発信することで、飲食店、宿泊施設、事務所、美容院など多彩なプレイヤーが自分の生業(なりわい)をスタートできています。物件所有者と起業家、双方の悩みを解決するために「借地権付き建物売買(土地は所有者に残し、建物だけを安価に売る)や、譲渡型賃貸(家賃を支払い続けることで将来的に自己所有になる)、DIY賃貸や 地域住民割引制度など柔軟な契約プランを用意したことも挑戦者の後押しになっています。
・【優秀賞(住宅確保要配慮者等の居住支援)】
株式会社LivEQuality大家さん(愛知県名古屋市)
「住宅困窮者向け住宅の提供」
現在、日本では公営住宅の減少や家賃高騰により、住まいがないために公的支援や就労の機会を絶たれる住まいの困窮者の増加が深刻化しています。この課題に対し、同社は所有物件の3割を相場の3割引でシングルマザー世帯に貸し出すモデルを構築。単価を下げても高いニーズで稼働率を維持し、ビジネスとして成立させました。さらに、共感を集めるインパクト投資での資金調達から始まり、現在では大手金融機関や東京都を巻き込んだ日本初の「アフォーダブルハウジングファンド」の設立へと発展させています。最大の特徴は、専門家やNPO法人と連携した「住まい(ハード)」と「伴走支援(ソフト)」の両立です。結果として家賃滞納0件、就業率80%を達成。「人は住まいとつながりがあれば何度でもやり直せる」という信念のもと、誰もが自分らしく暮らせる社会を目指しています。
・【優秀賞(空き家の活用)】
株式会社Sweets Investment(静岡県藤枝市)
「藤枝市空き家ゼロにサポーター~地域を動かし、空き家を減らす。官民が共創する藤枝モデル~」
「8月2日=空き家ゼロの日」をきっかけに藤枝市と連携し、民間39社を認定してワンストップ支援を行う制度を運用。年間予算100万円という限られたリソースでありながらイベント等で市民を巻き込み、藤枝市の空き家率を約2ポイント低下させました。
・【優秀賞(地域活性化)】
株式会社まつくる(島根県松江市)
「地域価値を共創する不動産プラットフォーム-松江・白潟モデル」
まつくるは、松江市中心市街地、白潟エリア再生のため、地銀・信金・商工会議所などが総額約1.5億円を出資して設立したまちづくり法人。空き家再生や「まちなかテラス」を整備したほか、30年ぶりに復活させた「まつえ土曜夜市」には5回で約18万人超を呼び込むにぎわいを生み出しました。
・【優秀賞(地域活性化)】
株式会社SALT(福岡県福岡市・古賀市)
「生き方・働き方のカルチャー創造-休眠施設再生と二地域居住で地域価値を創造」
代表の須賀大介氏自身の移住体験から生まれた「福岡移住計画」を核に、全国20拠点を展開。廃業旅館や公園、空き店舗などを「人が交じり合える拠点」へと再生し、移住・定住をトータルサポートしています。
・【優秀賞(団地活性化)】
すみれリビング株式会社(岐阜県高山市)
「市営住宅における地域コミュニティの再生「すみれちいき食堂・防災教室」を通じた取組」
岐阜県高山市の市営住宅800戸の指定管理を受託して19年。食事・農業・防災・清掃を同じ日に開催する「複合コミュニティイベント」を導入し、5年間で防災訓練参加者を約4倍に増やし、解散していた町内会の再結成を実現させるなど、地域コミュニティの再生に長く取り組んでいます。
・【優秀賞(デジタルの活用)】
株式会社KLC(大分県中津市、千葉県長南町など)
「不動産マッチングプラットフォーム『フィールドマッチング』を活用した、再現性の高い“負”動産流通の推進と地域コミュニティ創出の取組み」
放置山林や廃消防団詰め所といった使われていない「負」動産のマッチングプラットフォームを運営し、3年間で250件以上の成約(契約率約40%)を達成。ネガティブな不動産を地域の資源へと変える流通モデルを構築しています。行政が抱える公共不動産の活用にもつながっています。
第2部では、国土交通省をはじめ7省庁の担当者が一堂に会し、行政の「縦割りの壁」を打ち破り、国が一丸となって地域共創をバックアップする姿勢が鮮明に打ち出されました。
特筆すべきは、地域に流れる「お金と人」のダイナミックな動きと、省庁の枠を超えたユニークな取り組みの数々です。
これまで「資金や人材の不足」に悩んできた地域のプレイヤーにとって、まさに国の総力をフル活用して事業をスケールさせられる時代が来たといえます。
この潮流の受け皿となるのが、国土交通省の「地域価値共創プラットフォーム」です。全国の知見やネットワークを結集するこのインフラを活用することで、不動産業者が地域の“核”として、より大きなインパクトを生み出していくことが期待されます。
各省庁の熱い政策発表に続き、後半ではすでに地域を変革させている3人のトップランナーで、「地域価値を共創する不動産業アワード」の過去受賞者でもある(三好不動産・樋口朋晃(ひぐち・ともあき)さん、omusubi(おむすび)不動産の殿塚建吾(とのづか・けんご)さん、旧三福不動産の山居是文(やまい・よしふみ)さんによる、生々しくも希望に満ちたディスカッションが行われました。
モデレーターを務めた齊藤広子(さいとう・ひろこ)氏(東京都市大学大学院特任教授)が「いいことをするだけでは続かない。稼ぐ仕組みをつくり、自走させて初めて地域の価値は持続する」と切り込んだとおり、3人の口から飛び出したのは、現場の修羅場をくぐり抜けてきたからこその「原理原則」でした。
「自社だけでできないことは素直に認め、行政や他社に相談して進めることが大切。それが75年続いた原動力。入居者に気持ちよく家賃を支払ってもらうには、不動産だけでなく暮らし全体を支えることが先決」(三好不動産・樋口さん)「お客さんを『お客さん』として接し続けるのはエネルギーを消耗する。だから、巻き込んで『仲間』にしてしまう。入居者が主体的に場を運営すれば次の支援に注力できる。コミュニティはつくるのではなく提供するもの」(omusubi不動産・殿塚さん)「社会課題を悲壮感でやっても広がらない。大事なのは、華やかに楽しむ姿勢と、物件情報より『暮らしが豊かになるか』というワクワク感を伝えること。魅力を発信して続く仲間を増やすことこそが、事業を持続させるカギ」(旧三福不動産・山居さん)彼らに共通するのは、不動産をただの「箱」として売るのではなく、街のプレイヤーを巻き込む「プラットフォーム」として機能させている点です。孤独感や衰退といった地域の課題を、ビジネスの力で「にぎわいと愛着」へと見事に逆転させていました。
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シンポジウムのグランドフィナーレとして、過去の受賞者である吉原勝己(よしはら・かつみ)さん(福岡ビルストック研究会)が登壇。「アワード受賞をきっかけに九州24の町で次々とリーダーが生まれ、行政との協働が始まった」という地殻変動を報告するとともに、「受賞者がその後どうつながり続いているか、共通する原理原則をぜひ研究者の皆さんにまとめてほしい」と呼びかけ、会場は大きな熱気に包まれました。
そして閉会の挨拶に立った国土交通省の大臣官房審議官・藤田昌邦(ふじた・まさくに)さんは、集まった全国の不動産業者に向けて、こう締めくくりました。
「人口減少が進む中で地域を維持していくには、中核となる担い手が必要です。私は、その担い手こそが不動産業の方々だと本気で思っています。地域の価値が上がれば、それは巡り巡って皆さんのビジネスにも必ず貢献するはずです。地域価値の創造と自社の事業を好循環させられること。これこそが、不動産業が持つ最大の強みなのです」
「地域とくらしのパートナー」という新たなキャッチフレーズのもとで開幕したシンポジウム。アワード受賞した7組に共通するのは、不動産を「売る」「貸す」だけではなく、地域課題を解決するプラットフォームとして取り組んでいることです。空き家、団地、中心市街地、居住支援、公共不動産……それぞれのフィールドで、住まいを起点に人がつながり、事業が生まれ、コミュニティが復活していました。
第5回となる地域価値を共創する不動産業アワードは、新しいキャッチフレーズ(“地域と暮らしのパートナー”)を冠した施策パッケージの中の要の1事業としての位置づけや新たに国土交通大臣賞が創設されるなど、地域の不動産業者の役割にさらに大きな期待を込め、秋ごろの募集を予定しています。また同時期には、国交省が地域価値共創に関する知見やノウハウの集積、ネットワークの構築、連携を図る場を全国的に提供する「地域価値共創産官学プラットフォーム」β版をリリース予定です。不動産業者の地域価値共創の取り組みが、データベースやネットワークを得てさらに広がっていくことが期待されます。
●関連リンク・参考資料
国土交通省「地域価値を共創する不動産業アワード」
「地域価値共創シンポジウム 2026」(令和8年6月18日)
(
第1部
)
(
第2部
)
報道発表資料:
“地域とくらしのパートナー”を冠した施策パッケージを始動します! – 国土交通省
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