『カメラを止めるな!』上田慎一郎監督『オブセッション 災愛』を絶賛「考えうる最悪なことばかり起こる」

映画『オブセッション 災愛』トークイベント左から上田慎一郎、あんこ (C)2026 Focus Features LLC.

『カメラを止めるな!』上田慎一郎監督『オブセッション 災愛』を絶賛「考えうる最悪なことばかり起こる」

8月12日(水) 14:45

映画『オブセッション 災愛』の大ヒットを記念してトークイベントが開催。本作と同じく、低予算の長編デビュー作『カメラを止めるな!』で大ヒットを記録した上田慎一郎監督がゲストとして登壇し、MCのあんことともに作品の魅力を語った。

【写真】映画『オブセッション 災愛』の魅力を語る上田慎一郎監督

すでに一度、本作を鑑賞していたという上田監督だが、この日は劇場で観客とともに二度目の鑑賞。改めて本作の感想を尋ねると、「一度目の時は、僕のとなりが若いお姉さんだったんですけど、ずっと指の間から映画を見ていて、まさに『もう見たくないけど、見たい…』という感じで、その気持ちがすごくわかりました。今日は、何が起こるかはわかっているので、ちょっと客観的に見られたけど、考えうる最悪なことばかり起こる映画でした(苦笑)。『最悪、最悪』と思いながら見ていました」と明かした。

特に主人公の青年・ベアに対しては、「『もっと動けよ!』と思うところがたくさんありました(笑)」と、自身が“ワン・ウィッシュ・ウィロー(願いの柳)”を使用したことによって次々と起こる惨事に対し、なすすべもなく立ち尽くす主人公に厳しいツッコミを入れる。「あまり見ないタイプの主人公と言えるかもしれません。動きが脇役ムーブというか、次に死ぬヤツのムーブなんですよね(笑)。でも(実際にこういうことが起きたら)頭が真っ白になってこうなるのかもしれない、思考が停止するんだろうなと思いました」と語る。

そもそも「低予算で大ヒットのホラー」という触れ込みを耳にし、劇場に足を運んだという上田監督。「(同様に低予算で大ヒットした)『ブレアウィッチプロジェクト』や『パラノーマル・アクティビティ』のように、撮り方が斬新であったり、何か“仕掛け”があるのかと思っていたんです。でも見てみると、思いのほかしっかりとした映画で、低予算であることも感じさせないし、物語も『世にも奇妙な物語』みたいで、よくありそうなプロットで、下手な監督が撮ったらチープなものになってしまいそうなものを、ここまで面白くする――“演出の映画”なんだなと驚かされました」と、決して奇抜さを売りにした作品ではなく、確かな演出力が光る映画であると称賛を贈る。

特にカリー・バーカー監督の演出で気になった点について、「“暗い”ということ」と語る上田監督。「全編の8~9割が夜で、ニッキーの表情が読み取れないくらい暗いんですけど、あれは映画の作り手としては根性がいるんです。『ちょっと暗すぎないですか?』『もうちょっと表情を見せたほうが…』となるところをあれだけ真っ暗に落としている。それはすごく勇気があるなと思いました」と、監督の覚悟を称える。

また、勇気という意味では、ところどころに、見ていて演出の意図が読めない「ワケのわからないシーン」が差し込まれている点にも上田監督は注目する。「どういう理屈でやっているのか全く分からないけど、わからないからこそ面白い。作り手としては、どうしても意味や“理”を考えてしまうものなんですよ。『(劇中に出てくるような)カニ歩きをしてください』と監督が俳優に言ったら、俳優は『なんでですか?』『どういう感情でそうなっているんですか?』となると思うけど、この映画は一見意味が読み取れない行動がフラットに差し込まれているのが怖いんだと思います」と分析する。

その一方で、「“わからない”だけだと、チープなコメディになりがちだけど、『愛が行き過ぎてサイコな感じになってしまう』というのは、現実に起こりうることというリアリティもあって、笑っているだけでは済まされない鑑賞感があると思います」と、絶妙なバランス感覚の巧みさを指摘する。

上田監督自身も、若い頃、自分に対して偏執的とも言える好意を示してくれた女性が、バレンタインにバイト先のレストランに現れ、オレンジジュースを10杯おかわりしていったという“ニッキー体験”をしたエピソードを明かし、MCからは「『オブセッション』のスピンオフの話ですか!?」というツッコミが飛んだ。

上田監督は、「(本作で描かれていることは)誰しもが身に覚えのあることだと思いますし、ちょっと情緒不安定なこういうカップルは普通にいると思います。“情緒不安定”というものだけで、ホラーになるんだ!と思いましたし、そこに“社会”を感じました」と、単なるホラーという枠組みを超えたメッセージ性をはらんだ作品であると説いた。

また上田監督は、本作がハリウッドの基準ではかなりの低予算で制作されたという点について、「登場人物も5~6人ですし、お金をかけて、スケールがデカいものを描かなくても、演出とストーリーテリングで、これだけ見せられるし、映画体験をつくれるんだというのは勇気をもらえるんじゃないかと思います。お金をかけてCGを駆使して、大迫力の映像をつくらなくても、固まった笑顔を見せるだけで、これだけ魅せられるんだということを改めて思い知らされました」と、本作が“顔芸”で世界中の観客をとりこにするような作品をつくることが可能だと証明した功績を強調する。

「下手したら、めちゃくちゃチープなものになってしまいかねない危うい綱渡りですし、王様ゲームをやるシーンの口をへの字に曲げるところなんかは、ほとんどコントすれすれなんですけど(笑)、それがめちゃくちゃお金をかけた大スペクタクルに匹敵しうるシーンになっているというのは、作り手としても考え直さないと、と姿勢を正される部分でした」と語った。

上田監督は『カメラを止めるな!』で、冒頭37分におよぶワンカットシーンをつくる上で「お金がなくて、リソースもギリギリでなんとか撮り切ったけど、そのギリギリで撮れたという熱量が映像にも映っていると思う」と自身の経験を振り返りつつ、本作について「人間の顔一発は、どんな大スペクタクルよりも強い!というのを怖がりながら、笑いながら、ちょっと感動もしながら見ていました。圧巻でした」と改めて賛辞を贈った。

バーカー監督はYouTuber出身の26歳。上田監督は、効果音の使い方やシーンごとのトーンの切り替えに「テレビのバラエティ番組やYouTubeらしさを感じた」と語る一方で、「たくさん映画を見ているのを感じさせられた」とも語る。

最後に上田監督は、「これだけヒットしているというのは、(一度、見た人が)誰かを映画館に連れて行きたくなるんだと思います。友だちや親がどんな反応をするのかな?と見たくなるんですよね。いま、これだけ配信があって、スマホで手軽に映画を見られる時代に、こんなに暗闇で映える、一緒に体験できるというのは映画館でしかできないことだと思います。映画館の体験価値というのをYouTuber出身の監督が作り出してくれているというのが、すごく嬉しいですし、希望を感じますので、僕もまだまだいろんな挑戦をしていきたいと思います」と語り、温かい拍手の中、トークイベントは幕を閉じた。

映画『オブセッション 災愛』は公開中。

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