リカバリーバブルが到来している。専用ウェアにグッズ、メソッドが盛りだくさんで、「休養本」はバカ売れ中。なぜ疲労回復を求める現代人は増え続けているのか?ブームの真相と効果的リカバリー法を探った。
日本で巻き起こる“疲労回復ブーム”
そんなに日本人は疲れているのか?今、日本で“疲労回復ブーム”が巻き起こっている。書店には「疲労回復」や「快眠」をテーマにした書籍が溢れ、デパートの寝具売り場には安眠を促す枕やベッド、マットレスが数多く並ぶ。極めつきが「リカバリーウェア」。血行促進を謳う高機能パジャマが疲れたビジネスマンたちから人気を博している。
コンサル大手マッキンゼーを経て現在はIT企業を経営する男性(49歳)が話す。
「マッキンゼー時代は自動車担当で、深夜にもドイツ側のクライアントとのミーティングがあったので、毎日4〜5時間睡眠。当然、体は疲れが溜まる一方なので、さまざまな健康法を試してきた。
リカバリーウェアは当然のように愛用しているし、枕はスタンフォード式睡眠のメソッドを集約して『限られた睡眠時間でも究極の疲労回復』を謳う高級品をチョイス。どんなに疲れていても、湯船に浸かって寝るようにして睡眠の質を上げました。
昨年からは、インド発祥の『シャクティマット』も愛用しています。ヒノキ系のお香をたきながらマットに20分ほど横たわると、最高にリラックスできて、翌朝の疲労感が解消されるんです」
“快眠ルーティン”を作り上げた
この男性は、「完全に睡眠をコントロールできるようになった」とも話す。
「体調管理や睡眠の質などを数値化できるスマートリングも愛用しているんです。眠りの深さなどが数値化されるので、それを見ながら深い眠りにつけた日の行動を振り返り、“快眠ルーティン”を作り上げた。会食は遅くとも21時までに終え、帰宅後にお風呂に入り、読書時間を挟んでからシャクティマットでリラックスし、24時には床に入る。リカバリーは今や、私にとってゲームの攻略的位置づけです」
少々コアなリカバリーヲタクに見えるが……調べるとSPA!編集部にもリカバリーウェアの愛用者は無数にいた。なぜ、これほどのブームが起こったのか?同ウェアの元祖「VENEX」の開発に携わり、「休養学」を日本に浸透させた日本リカバリー協会代表理事の片野秀樹氏が解説する。
一般医療機器になったウェアが群雄割拠!
「理由の一つは、疲れた人が増えていること。1999年に厚生省の調査では『疲れを感じている人』の割合は6割だったのに、当協会の直近の調査では8割を超えています。背景にあるのはデジタル化や効率化。今はPCやスマホで24時間仕事に接続できる環境のため、精神的な余白が少ない。
コスパ・タイパ向上のためにマルチタスク処理が求められるようになったことも、ストレス増大に繫がった。これは世界的な潮流ですが、日本人は人の目を気にする傾向にあるので休むのがはばかられ、特に疲労が溜まりやすくなっていると考えられます。
そのなかで登場したリカバリーウェアが、'22年に一般医療機器の新カテゴリー『家庭用遠赤外線血行促進用衣』として認められ、血行促進による疲労回復を謳うウェアが数多く登場。こうして大きなブームに発展したと見ています」
疲れた人が増えた背景にはリテラシーの低さもありそう。
「一般に健康維持の3要素は栄養・休養・運動ですが、栄養や運動に関して教えてくれる人はいても、休養については『しっかり睡眠を取ること』以外に教えてくれる人がいなかった。30歳を過ぎた人なら1万回以上の“睡眠経験”があるはずなのに、学んでいないから自分に最適な睡眠時間も睡眠の質を上げる方法も知らない人ばかり」(片野氏)
“攻めの休養”を取ることが大事
では、正しい休養とは?
「休養には、睡眠も含めて心身を沈静化させる休息型、体を動かして新陳代謝を促す運動型、食事や消化機能の活動時間の調整を含む栄養型、人との触れ合いを含む親交型、楽しみで活力を養う娯楽型、何かを作ることによって活力を得る造形・想像型、そして旅行や外食などの転換型という7つの型があります。これらを組み合わせた“攻めの休養”を取ることが大事です」(同)
休息型や運動型は実践できても、仕事人間の多くは娯楽型が抜けがち。そのため、片野氏は「“ライフワーク”バランスを考えるように」と話す。
「ワークライフでなく、“ライフ”を先にマネジメントする。大谷翔平選手は10時間寝ることが知られていますが、プロスポーツ選手にとっては休養も仕事。だから、適切な休養も含めて時間をコントロールしている。一般の人も同様に、まず適切な休養を念頭に仕事の仕方を考えるべき。そのために、休養日誌をつけることをお勧めしています。退社後から、寝て、起きたときの“疲労感”を記録して、自分に合った休養をまず知ることです」
片野氏曰く、「オフへの切り替えを明確にすること」が大事。就寝前はスマホを触らず、ボーッとする“プチ瞑想状態”に入るだけで、リラックス効果から寝つきがよくなるという。休養日誌をつけながら疲労回復力を高めよう!
【日本リカバリー協会 片野秀樹代表理事】
東海大医学部研究員などを経て、日本疲労学会評議員、博慈会老人病研究所客員研究員に。近著に『今さら聞けない休養の超基本』
※2026年8月19日号より
取材・文/週刊SPA!編集部
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